第2話『爆破魔女、連行される』
第2話『爆破魔女、連行される』
【翌日】
隠れた城壁の影、鳥のさえずりで目が覚めた。
体を起こそうとするが、硬い石タイルだったから痛くてなかなか起こせない。
「うぅ、地面ってこんなに冷たかったっけ……」
私はリリス・ハルカ。
昨日の《エスケープ・ブラスト》で、愛しのマイホームが爆散した結果、今は野宿生活中。
「くぅ、昨日の反動で身体がバッキバキ……」
硬い体を無理矢理伸ばして、日の光を全身で浴びる。
すると背後から声をかけられる。
「あら、こんなところに女の子が一人で何をされてるの?」
「……だれ?」
振り返ると、黒い髪に反射する太陽で一瞬目が眩む。
目が慣れて、もう一度顔をよく見る。やたら整った顔立ちと、白銀のローブ。腰には魔導書を抱えている。
(お、この人魔法使いだ〜!)
「私はエレナ・ルーシーよ。王都付近を巡回しているの」
エレナの表情に一瞬闇を感じる。
おそらく私を捕獲するために派遣された魔法使いなのだろうと。
「……べ、別に? 野宿だよ、野宿!旅の途中的な? 超健全!」
「ふーん? でもこのあたり、最近何度も爆破音がしてるって通報が来てるのよね〜?」
エレナの眉がピクリと動く。明らかに怪しんでいる。
「そ、それは魔物の泣き声じゃないかな〜? この辺、ドラゴンが出るとか言ってたよ〜!」
自分でも怪しいと思う白々しい演技。エレナが見逃すはずもなく、エレナが鋭い目つきで睨んでくる。
「じゃあ王都で少し話を聞かせてもらえる?ドラゴンが出たら大変だもの」
(まずい、確実に疑われている……!こうなったら"アレ"をするしか)
「え、遠慮しとく〜!!」
軽くあしらうと、勢いよく振り返り、地面を蹴り上げて真反対の方向へ走り出す。
「うぉ〜、逃げろ〜!!」
「やっぱりね、拘束魔法!」
何か魔法を撃たれたが、振り返る暇もないので全力で逃げる。
が、突然足元に何かがまとわりつき、私はバランスを崩して転ぶ。
「うわあっ!? 痛ッ、てか動けない!?」
「やっぱり、あんたが例の"爆破魔女”だったのね!」
エレナは転んだ私の体を仰向けにすると、私の顔を確認してからドヤ顔で見つめる。
「ちょ、ちょっと待って! 昨日、兵士に追われたばっかなんだけど!? さすがに2日連続はキツいって!」
必死に言い訳をするが、エレナは聞く耳を持たない。
「王都からの通報で、私がここに来たの。ということで――連行します!」
「いぃぃ〜やぁぁ〜だぁぁあぁああ!!」
――
拘束魔法で拘束されたまま、王都に連行されて、気づいたら尋問室というところに入れられた。
「ふむ、貴様が“爆破魔女”リリスか」
椅子に縛られた状態で、イカつい顔の男が私を睨んでいる。
「いや“爆破研究家”って呼んでほしいな〜」
「さて、話を聞かせてもらおうか」
その男は私の話を無視して、私に問い詰める。
「は、話って……別に私は何もしてませんよ〜!」
「うるさい、貴様の爆破によって王都は震度3の揺れを観測したのだぞ!」
「それで済んでよかったね!」
「黙れ!」
怒鳴られるたびに、椅子がギシギシ揺れる。
怒号と椅子の揺れで精神ダメージを受けていると、突然部屋の扉が開いた。
「おやめなさい」
首を頑張って捻り、扉を見るとローブを着た白髪の老人がゆっくりと部屋に入って来た。
それに気づいた兵士と私に怒鳴ってた男が態度を変えて、老人の元へ駆け寄る。
「学長さま、なぜこちらに!?」
すると、学長と呼ばれる老人はゆっくりと口を開く。
「彼女の魔力、とても研究のしがいがあります。よかったら私の魔法学校に"推薦"という形で入学させたいと思いまして」
「……へ?」
学長の言葉に聞いた者全員が口を開いて固まっている。私も例外ではない。
「リリス・ハルカくん。王都魔法学校で研究をしてみないかい?もちろん責任は私がとりますよ」
「……なるほど〜」
(え〜っとつまりだよ……)
「爆破してたら、出世した……?」
―― 第3話へ続く。




