第2話『爆破魔女、連行される』
朝。
森の外れ、旧城跡地で――
「うぅ……地面ってこんなに冷たかったっけ……」
私はリリス・ハルカ。
昨日の《エスケープ・ブラスト》で、愛しのマイホームが爆散した結果、今は野宿生活中。
「くぅ……昨日の反動で身体がバッキバキ……」
寝起きでストレッチしてると、どこからか軽やかな足音が聞こえてきた。
「おや? こんなところに女の子が一人で?」
パチン、と風を切る音と共に現れたのは――
「……だれ?」
「私はエレナ・ルーシー。王都付近の巡回係よ。こんな所で何をしてるの?」
やたら整った顔立ちと、白銀のローブ。そして無駄にキラッキラした笑顔。
魔法使いっぽい。しかも階級高そうなやつだ!
「……べ、別に? 野宿だよ、野宿。旅の途中的な? 超健全!」
「ふーん? でもこのあたり、最近何度も爆破音がしてるって通報が来てるのよね〜?」
ピクリと眉が動いた。
やば。バレた?
「そ、それは風の音じゃないかなー? この辺、竜巻も起きるし!」
我ながら怪し過ぎる。
エレナが鋭い目つきで睨んでくる。
「じゃあ王都で少し話を聞かせて。ね?」
しってた。
ま、まずい…
こいつに捕まったら…
考えるだけで身の毛がよ立つ。
「遠慮しとく〜!!」
ダッシュ!
捕まったら終わりだ〜
逃げよう
……しようとしたけど。
「拘束魔法」
バシュッと何かが飛び、私の足元に魔法陣が広がったかと思えば――
「うわあっ!? な、なにこれ、動けない!?」
「やっぱりね……あんたが“例の爆破魔女”だったのね!」
キリッと目を細めるエレナ。
あー……完全にバレた。
「ちょ、ちょっと待って! 昨日も王国軍に追われたばっかなんだけど!? さすがに2日連続はキツいって!」
「その王国軍からの通報で、私がここに来たの。ということで――連行します!」
「いぃぃ〜やぁぁ〜だぁぁあぁああ!!」
*
王都・尋問室。
椅子に縛られた私は、なんとも言えない居心地の悪さを感じていた。
「ふむ。貴様が“爆破魔女”リリスか」
「いや“爆破研究家”って呼んでほしいな〜。ね?」
「うるさい! 貴様の爆破によって、王都の騎士寮は震度3の揺れを記録したのだぞ!」
「それで済んでよかったね!」
「黙れ!」
怒鳴られるたびに、椅子がギシギシ揺れる。
もうこれ、精神的ダメージのほうが大きいんじゃない?
――と、そこに。
「おやめなさい」
部屋に入ってきたのは、ローブを着た白髪の老紳士。
周囲の兵士たちが、慌てて直立不動になる。
「学長さま!? なぜこちらに?」
「彼女の魔力波形を解析した。……面白い。実に面白い。
この娘、並の魔術師とは違う。推薦する」
「は?」
……推薦?
「王都魔法学校、特別研究員枠での入学を認めよう。
リリス・ハルカ。君には、“爆破魔法”の未来を託す価値がある」
「……」
……えっと。
これってもしかして――
「爆破してたら、出世した……?」