第28話『不穏な形?』
「サル、ゴリラ、チンパンジー」
「誰がゴリラだァァァァ!!?」
エレナに着いて行き、争いが勃発している正門に着く。
「もう一回言ってあげる、ゴリラ」
「ムキィィィィ!!?」
案の定クロエとルインが言い争っていた。会話の内容は誰がどう聞いても子供すぎる。
「よーしわかった!どっちの方が強いか勝負だ!」
ルインがそう言うと、魔導書を構えてクロエに飛びかかる。
「喰らえッ、超魔導書殴りィィィィ!」
「そう言うところがサルなんだよ」
クロエがルインの攻撃を難なく交わし、ルインの首元に手刀を決め込む。
「サルかゴリラなのか……どっちなんだよ……」パサッ
「ちょ、クロエ……なにやってんのよ!」
エレナは心配そうにルインに駆け寄る。
「ルインは気絶してるよ。まあまあ力込めたからね」
「アンタねぇ……」
エレナはクロエに呆れつつも、何か周りを気にしているように見える。
「そういえばさ、警備員に『最近、人に化ける魔物がアクアリウム付近をうろついてるんだ』って言われてたわよね?」
「そんなこと言ってたね」
すると、クロエが目を閉じて辺りを探るように顔を動かす。
「居ない、ここら辺には居ないっぽい」
「なんでわかるの〜?」
「魔力の量。おそらくその化ける魔物は魔力を使って変身してると思う」
私も目を閉じて周りを見渡すように顔を動かす。すると、警備員の1人が他の人とは違う量の魔力を出していることに気づく。
「あの人は〜?」
その警備員に指を差す。エレナとクロエは目を閉じてじっと見つめているが、何事もなかったかのように私に問い始める。
「他の人と変わらないわよ?」
「うん、私結構魔力見聞は得意な方」
「え〜……でも……」
確かにその警備員は他の人とは違う魔力を放っている。
「……爆破すればいいんじゃない?」
「いやいや、絶対ダメっ!」
――
「他に確かめる方法はないの?」
「あるにはあるんだけどね……」
「エレナは魔力奪取は使えないの?」
魔力奪取――
魔力を持つ物に近づき、触れることでその物体に宿る魔力を吸収することができる。
「だってさ〜私はよくわからなかったけど〜」
「この魔法、一応特化型でしょ?私が覚えられる魔法は一般型だけ。覚えられなくはないけど、かなり時間かかるし……」
クロエは魔導書を閉じて、腰に抱える。
「そう、じゃあやっぱり爆破した方が――」
「アンタまでリリスの思考に汚されるな!」
ふと周りを見渡すと、さっきまで居た魔力量が多い警備員が居なくなっている。
「あれ、さっきまで居たのに〜」
「ん、どうしたのリリス?」
「いやさ、さっき居た怪しい警備員が――」
『キャァァァァ――』
突然人混みの中から女性の悲鳴が聞こえてくる。目を凝らしてよく見ると、怪しい警備員が女性の肩を掴み、鋭い爪で脅している。
「な、本当にあの警備員が……」
「だから言ったじゃん!爆破した方がいいって」
「ここは私に任せて」
クロエが魔導書を開き、前に出る。
「本当は魔法祭典の時に使おうと思ってたんだけど。しょうがないよね」
クロエの前に魔法陣が召喚される。
中からクロエがもう1人現れた。
「幻影魔法!?いつのまに覚えて……」
「違う、これは幻影じゃない」
クロエがそう言うと、魔法陣で召喚されたクロエが魔物に飛びかかる。
「行け、矛魔法」
警備員に扮した魔物に飛びかかるクロエの手に刃が現れる。
グルァァァァッ
刃が魔物にクリーンヒットする。
しかしダメージはなく、警備員の化けの皮が剥がれ、中から本体が現れた。
「キモ、あんな生物がいて良いのか」
「クロエ!魔物相手にもそんなこと言わないで……と言いたいけど、本当に気持ち悪いわ……オエッ」
泥のような液体上の体で、所々からガスを噴き出している。
「え〜そう?可愛いじゃん」
「やっぱアンタは常人じゃないわね……」
「……ここは確実にトドメを」
クロエが地面に手を当てる。すると魔法陣が複数個展開されて、中からクロエが召喚される。
「現影魔法、存在する影を創り出す魔法よ」
するとクロエの影がドロドロの魔物の背後に飛び、刃を構えて振り翳す。
グラァァァァ
その刃は魔物の体を捉えて、確実に切り落とす。人質にされてた女性は勢いでクロエの元にもたれかかる。
「大丈夫、怪我は」
「……」
「だいじょ……」
「大丈夫なわけないでしょォォォォ!あんな汚い化け物に触られて私の綺麗な体が台無しよ!」
捕まっていた女性は怒り狂いながら、魔物の愚痴をクロエに吐き散らしていた。
「ひとまず安心だね!」
「そうだね、久々に魔力探知使ったから疲れちゃった〜」
「そう言えばリリスの魔力探知って特殊よね?」
「えぇ、そう〜?」
確かに私の魔力探知は他の魔力探知とは違って、魔力そのものを探知するのではなく、魔力によって現れる空間の乱れを探知してるんだよね。
「ねえリリス、エレナ」
クロエが人質の女性をなんとか振り撒き、私たちの所に戻って来た。
「明日、魔法祭典の参加受付してこない。私が推薦しておくからさ」
「お、それサンセ〜!」
「魔法祭典……良いじゃない、出ましょ!」
「了解、じゃあ先に宿行ってて。もう取ってるでしょ?」
クロエがそう言い、去っていくとエレナの顔が少し強張る。
「あの……リリス」
「ん、どうしたの〜」
「今日は野宿でいいかしら?」




