第1話『森の中の魔法使い』
ガタンッ。
大きな物音と共に、静かな森が朝日で照らされる。
森の奥深く――そこにポツンと建っている小さな家。
「いたた〜……」
私の名前は、リリス・ハルカ。
この森で“爆破魔法”を集めて暮らしている魔法使いだ。
ちなみにこの世界では、爆破魔法は禁忌とされている……らしい。
「今日も今日とて寝起き爆破、やりますか!」
私はね、ルールって破るためにあると思ってるタイプだから、そんなの気にしてない!
そしてこれが、私が開発した爆破魔法!
この魔法で、毎朝ご近所――というか、王国の皆さんを元気に起こしてあげてるのだ。
それにしても、今日は寒い!
あたりは平らに整地された土地が広がってるけど、もともと森だったんだよ?
毎朝爆破してたら、なんか気づいたらこうなってた。
「さーてと!」
「爆破魔法!」
詠唱と同時に、足元に魔法陣が展開された。
赤と橙が渦を巻き、中心に青い光点がきらめく。
その瞬間。
――ドガァァァァン!!
すさまじい音と閃光が森を包み、空が一瞬だけ白く染まった。
地面が揺れ、鳥たちが慌てて飛び立つ。
「あ……あれ?」
なんか今日の火力、高くない?
……まずいかも。いや、かなりまずいかも。
ただでさえ、王国から“危険人物”扱いされてるのに……。
「ま、いっか!」
こういう面倒ごとは忘れるに限る!
……まあ、自分で招いた事態なんだけど!
「よーし! デイリー爆破終了っと!」
「さあ次は、爆破魔法の研究タイムだ〜!」
ガサガサッ。
棚を荒らして、一冊の分厚い本を引っ張り出す。
「えーっと……」
この本には、爆破魔法の派生や構造がまとめられている。
いわば爆破魔法使いのバイブル。
「ブラストは〜っと……あったあった!」
と、読み込んでいると――
「って、なんか寒いなぁ?」
冷たい風が、背中にびゅうっと吹きつけてくる。
ふと上を向くと――天井がない。
よりによって、今日は竜巻が発生するって天気予報だったんだけどな〜。
「あ〜、またやっちゃった!」
……まあ、今から直すのもめんどくさいし、あとでいっか。
そんなことを考えていたその時――
ガシャ……ガシャ……。
外から、金属がこすれ合うような低い音が聞こえてきた。
――嫌な予感がする。
そっと窓から外を覗くと、そこには鉄の塊のような鎧をまとった兵士たち。
王国の軍隊。それも、何百人もいる。
「……あれ? もしかしてやばい?」
さすがの私でも、これはやばさレベルMAX。
すると、軍勢の中から一際ピカピカした金の鎧――
たぶん隊長っぽい人――が、私に向かって叫んだ。
「爆破魔女リリス・ハルカ! 本日こそ貴様を王国牢へ幽閉する!」
「そーだそーだ〜!」
……なんだ、そのテンションの低い合いの手。
あー、やっぱり本気っぽい。完全に包囲されてるし。
でも、こういう時のために――私は、ちゃんと逃げ魔法を開発してるのだ!
「へっ! お前らに捕まるもんか〜!」
「爆破魔法!」
――ドガァァン!!
森に再び響き渡る大爆発。
地面が吹き飛び、煙が立ち込め、兵士たちは視界を奪われる。
そして――
リリスの家は、今日もきれいさっぱり吹き飛んだ。
その煙の向こうで、リリスは満面の笑みを浮かべていた。
「ば〜いば〜い!」
笑顔で鉄塊たちに手を振る。
あの金塊――隊長の歯ぎしりが、遠目でもわかるくらい伝わってきたよ〜!
実にいい気味だよ〜!
……さて。
「今日は、野宿だな……」
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