第1話『森の中の魔法使い』
――ガタンッ。
大きな音を立て、頭に衝撃が走る。静かな森が騒がしくなり、鳥が鳴き、小動物が森を駆け回る音が耳の中に吸い込まれていく。
そして木々の隙間から朝日が差し込み、ベッドから落ちた体を照らす。
「いたた〜……」
私の名前は、リリス・ハルカ。
この森で“爆破魔法”を集めて暮らしている魔法使いだ。
ちなみにこの世界では、爆破魔法は禁忌とされているらしい。
「今日も今日とて寝起き爆破、やりますか!」
が、私はルールを気にしないタイプなので魔導書を腰に抱えながら扉を開き、外に出る。
外に出ると勢いよく冷たい風が肌を刺激する。本来あるはずの木々はすべて消し去られ、無惨な荒地へと変貌している。
「う〜……寒ッ」
「こうなるんだったら森を破壊しなければよかった〜」
震えながらも、魔導書を広げて準備を行う。
「さ〜てと……」
「爆破魔法!」
詠唱と同時に、足元に魔法陣が展開される。
赤と橙が渦を巻き、中心に青い光点が煌めき、魔導書の前の小さな魔法陣へと集中していく。
その瞬間。
――ドガァァァァン!!
とんでもない轟音と凄まじい爆風が大地を揺らし、鳥たちが慌てて飛び立つ。
「あ……あれ?」
普段とは明らかに違う感覚が残っていた。
普段よりも数段と音が大きく、爆風も強くて窓ガラスが割れてしまっている。
「……ま、いっか!」
結局普段との違いを気にせずに再び小屋に戻る。
「よーし、デイリー爆破終了っと!」
「さあ次は、爆破魔法の研究タイムだ〜!」
棚を荒らして、一冊の分厚い本を引っ張り出す。
「ブラストは〜っと……あったあった!」
さっきまでの喧騒とは打って変わり、静寂が早朝の森を埋め尽くす――
「って、なんか寒いなぁ?」
冷たい風が、背中にびゅうっと吹きつけてくる。
ふと上を向くと――天井がない。
「あ〜、またやっちゃった……」
「でもめんどくさいし、別にいっか!」
そんなことを考えていたその時――
外から、金属がこすれ合うような低い音が耳をつんざいた。
(なんだろう……何かいやな予感が〜)
そっと窓から外を覗くと、そこには鉄の塊のような鎧をまとった兵士たちが、私の小屋を取り囲んでいた。
「……あれ、もしかしてやばい?」
兵士たちは一斉に広がり、道を開くと軍勢の中から一際輝く黄金の鎧を纏った兵士が小屋の前に立つ。
その兵士は勢いよく口を開ける。
「"爆破魔女リリス・ハルカ"!今日こそ貴様を王都危険人物房へ収監するッ!」
兵士の声は森に響き渡り、戻って来たばかりの動物たちが再び逃走していく。
(……本当にまずいかも〜、でも……!)
「へっ、お前らに捕まるもんか〜!」
頭の奥底でずっと考えていた魔法が脳裏をよぎる。
「爆破魔法!」
足元に魔力が集約すると、空気が揺れ、辺り一帯を覆い尽くすほど発光する。
――ドガァァン!!
森に再び爆音が響き渡る。
地面が吹き飛び、煙が立ち込め、兵士たちは視界を奪われる。
そして――
リリスの家は、きれいさっぱり吹き飛んだ。
煙の向こうで誰かが怒鳴っている気がして、自然と口角が上がった。
「ば〜いば〜い!」
笑顔で見えない兵士たちに手を振る。そのまま体は遥か上空を移動していった。
「実にいい気味だよ〜!」
手を振り終え、体を丸めて空気抵抗を抑える。
「さて……」
「今日は、野宿だな……」
――第2話へ続く。




