第11話『魔法が使えない魔法使い』
「コラーーーー!」
怒号が王都中に響き渡る。
「すみませんすみませんすみませんすみません」
エレナはギルド長の前で土下座をして、謝罪を連呼している。
「リリスも謝れっ!」
「あ〜すみませ〜ん」
「ふざけるなリリスー!」
ギルド長は大きく息を吸い込むと、静かに口を開く。
「まあ、今回に関しては対象が対象だったからな……だが、今回の出来事でロスカ村の一部にも影響が出たらしいからな」
すると、ギルド長の言葉を遮るように部屋の扉が叩かれる。
――コンコン
「入れ」
ゆっくりと扉が開くと、ギルド長の秘書が入ってくる。
「ギルド長……また暴行事件が……」
秘書の言葉を聞くと、ギルド長は大きくため息を吐く。
「またかよ……なんで兵士は動かないんだ」
「最近なんか起きてるの〜?」
私がギルドの人に尋ねると、渋々答える。
「……最近、王都内で暴行事件が多発しているんだ……それなのに兵士は動かなくてギルドにたくさん事案が来るんだ……」
「そっか〜大変そうだね〜」
ギルド長は少し考えると、私たちを見つめる。
「君たちさ……今回の事は許すから暴行事件の犯人をとっ捕まえてくれないか?」
ギルドの人から衝撃の言葉が飛び出す。
「おおぉ!今度は犯人逮捕のお時間ですか!」
「なに呑気に話してんだよ!もう……本当にすみません」
エレナは困惑の表情で私を睨みつける。
「ほら、顔を上げて」
すると、秘書が一枚の紙を出す。
「この方です……最近ずっと暴行事案を起こしていて……」
――
「ということで!今はその犯人を探しているんですよ〜」
「で、それで私を呼んだんだね」
「ごめんね、クロエ……私たちの問題に巻き込んで」
二人と共に王都内を歩き回る。
すると、裏路地から声が聞こえてくる。
『あ〜ん?なんだと、このルイン様の命令が聞こえないのか?』
『す、すみません……』
その声を聞いて、エレナが裏路地に飛び出す。
「待ちなさい、暴行は犯罪ですよ!」
エレナの声が響き渡る。
「あ?誰だお前」
クロエと一緒に遅れて裏路地に顔を覗かせる。
「私は王都魔法学校の生徒会長、エレナ・ルーシーよ!」
エレナの視線の先には、銀髪のポニーテールの女が男の胸ぐらを掴みながら、鋭い目つきで私たちを睨みつけていた。
「あなたを暴行罪で王都に引き渡すわ!」
エレナがそう言うとその女が飛び上がる。
「うおぉぉぉ、うるせぇぇぇぇ!」
「いきなり……防御魔法!」
エレナの前方に魔力の壁が現れる。
「おらぁぁぁぁッ!」
女は魔導書を構えると、防御魔法に叩きつける。
「え……!?」
すると、防御魔法は粉々に砕け散った。
「所詮はただの魔法!」
「ちょッ……拘束魔法!」
今度は拘束魔法を使う。
拘束魔法は女の体をガシッと捉える。
「……ッち!離せッ」
女は暴れながら、大声を出す。
「ふう……一時はどうなるかと思った……」
「私に見せつけるなァァァァ!」
女はそう叫ぶと、拘束魔法を引っ張り始めた。
「ちょ、なにやって!」
――バキッ
大きな音と共に、拘束魔法が砕ける。
「は、はぁ!?なんで破壊できるのよっ!?」
エレナは口を開きながら、その場で立ち尽くす。
「どいて、エレナ」
横にいたクロエがエレナを軽く突き飛ばすと、女の正面に立つ。
「矛盾魔法」
巨大な盾が女の前に立ちはだかる。
「うおぉぉぉ!」
女は魔導書を振りかざすが傷一つつかない。
「矛盾魔法は物理耐性が高いんだよ」
そういうと盾を払って、女を吹き飛ばす。
「グハッ」
ルインは城壁に叩きつけられた。
「これで一件落着」
「さっすがクロエ〜!」
クロエとエレナと共に、吹き飛ばした女の元へ向かう。
「クソ……やっぱ魔法はくだらねえ……」
女が悔しげに吐き捨てる。
「はい、現行犯逮捕。ところで名前は?」
「ッ……ルイン、ルイン・シーザーだ」
ルインは小さく名乗る。
「はい、ルインね。それじゃあ王都に……」
「ねえルイン〜?」
エレナの話を遮るように、ルインの名前を呼ぶ。
「……なんだ」
「強そうだから、私たちのパーティメンバーになってよ!」
「……は?」
エレナとルインの間の抜けた声が響く。
「ちょ、なんでコイツを……!」
「そ、そうだ……アタシは暴行犯だし」
「別にいいんじゃない」
クロエが口を開く。
「リリスがそうしたいのなら」
クロエが小さく笑みを浮かべる。
「いいのか……アタシを仲間に」
ルインの手を取って握る。
「もちろん!私たちは強い仲間大歓迎だからね〜!」
「……強い」
ルインは私の言葉を聞くと、少し笑みを浮かべる。
「アタシさ、魔法が使えないんだ……だけど、それでもいいのか?」
「もちろん!だってルインは強いじゃん!」
ルインは力強く笑うと、何事もなかったかのように飛び上がる。
「よっしゃぁ!」
「これでよかったのかな」
エレナも笑みを浮かべながら、小さい声で語る。
「あ、でもギルド長に教えなきゃね〜」
「……あ」
騒ぎも一瞬にして、静かに過ぎ去った。
――第12話へ続く。




