第二十九話 「 仮面 」
第二十九話 「 仮面 」
バラクから放たれた雷撃。
「レモーマ!!」
瞬時にリンが反応し、俺達は木の下敷きにならずにすんだ。危機一髪だ。
「一発じゃぁ仕留められなかったかぁ。
ほんじゃぁ、もう一発だじょい!
ドンドンドン!ドンヒャラピー!」
ピカッ!!
ドドーーーーンッッッ!
まばゆい閃光の後、再び雷が落ちてきた!
轟音とともに強い衝撃が走る。
「キャーッ!」
「ウワッ!」
「ヌオッ!」
凄まじい雷の威力で、リンの防御膜が破壊され、俺達三人は七〜八メートル吹っ飛ばされた。
「痛たたたた‥ 」
思いっきり背中を大木の幹に叩きつけられ、すぐには立ち上がれそうにない。
俺は、地面に這いつくばったまま、リンとモジャに呼びかける。
「リン、モジャ、だ、大丈夫か‥ ?」
「モ、モジャはなんとか生きておりますぞ」
背後からモジャのか細い声が聞こえ、安堵した。
「 ‥‥ 」
リンの返答がない。なんとか体を起こし、辺りを見回すと、モジャよりさらに離れたところにリンが横たわっているのが確認できた。
俺とモジャは四つん這いのまま、湿った草をかき分け、リンの方へ向かう。
「おい、リン、しっかりしろ」
リンの肩を叩くが反応がない。次は頬を軽く叩いてみる。
が、それでも反応はない。
俺とモジャの二人でこの魔人を相手にしなければならない。
リンの魔法なしでどう闘う?
俺は意を決して、バラクへ突進しようと身構えたその時。
「勇者殿、リンは‥ 呼吸をしていないのではなかろうか」
「まさか。リン、ちょっとごめんな」
慌てて胸に手を当ててみる。
確かに動いている様子がない‥ 。
「そうだ!心臓マッサージだ」
俺は心臓マッサージを施すことにした。
リンのローブをめくると、内ポケットから一枚の写真が落ちた。リンによく似た少女の写真。ローブ風のワンピース姿で微笑んでポーズをとっている。これがリンの娘か‥ 。
そっと写真をポケットに戻し、心臓マッサージに取りかかる。
「やったじょい、やったじょい。残りは二人。一気にやっちまうじょなー」
「そうはさせませぬ。リンは、我らが守る!」
「頼む!モジャ!」
モジャは黙って頷くと、バラクへ向かって走り出した。
「バラクは強い!バラクはすごい!もうひとつおまけに
ドンドンヒャララードンヒャ‥‥ 」
‥ ズッデーーーン!
落ちたのは落雷ではなく、バラクだった。
モジャが背負っていた斧をバラクの玉に振り下ろし、バラクは地面に尻もちをついたのだ。
「このジジイ!ムカつくじょ!玉に乗らなくてもやれるんじょ!」
「そうはさせませぬ!ドワーフいちの力持ち、モジャのドンケツ受けてみなされ!」
モジャはバラクに覆いかぶさり、その身を押さえ込む。
小柄なバラクより、大きく頑丈な体つきのモジャが、馬乗りになるのは容易いことだった。
「ドンドンドンケツ!ドンヒャララーですぞっ!」
モジャは馬乗りになったまま、尻を繰り返し上下させた。
「やめろジジイ!グホッ!重い!降りろ‥ ムゴムゴ‥」
「手と口を押さえておれば雷は落とせまい?」
「 ‥ 」
♢ ♢ ♢
俺はリンの心臓マッサージを続ける。
頼む。戻って来てくれ!
ピカッッ
ドドーーーーンッッ!!
一段と眩しい閃光が走り、落雷の衝撃で、またもや吹っ飛ばされた。
(手と口が塞がれたって雷は出せるじょ。両足があるじょ。コントロールはきかないけど)
バラクは仮面の下でほくそ笑む。
落雷はバラクの玉に落ち、粉々に割れた。
その破片のひとつがバルクの仮面へと飛び、
モジャは驚いて、バラクの体から飛び退いた。
バラクの仮面は真っ二つに割れ、パタリと地面へ落ちた。
すると、道化師の仮面の下から、赤鬼の面が現れた。
「よくもやってくれたじょなー! 木っ端微塵にしてやるじょ!」
バラクはゆらりと立ち上がり、両手を高く上げた。
「勇者殿!リンを連れてできるだけ遠くへ!」
モジャが危険を察知して叫ぶ。
俺はすかさずリンを抱き上げ、必死に走る。
走りながら脳をフル回転させる。
雷は、高い建物や尖った建物、金属に落ちやすい。高い建物を落雷から守る為に取り付けられる避雷針というのは雷を誘う。
俺はリンを静かに地面に横たえると、バラクの方向を向いた。
モジャがこちらへ向かって走ってくる。
その向こう側に、オレンジ色のポンチョが風にはためく様が目に入った。
バラクは空中に浮いた状態で、頭上高く両手を広げて空を見上げていた。
おそらく、これまでよりいっそう大きな雷を落とすつもりなのだろう。
(次は避けられない!)
本能が俺を引き止めようとする。‥ だけど行くしかない。
なぜだか、こんな瞬間にミーコを思い出した。
" いざ進めー!いざ進めー!いざ進め!レッツムボーン! "
俺は勇気を振り絞って突進した!
「うおぉぉぉーーーっ!ムボーーーーーーンッ!!」
「ドンドンドンヒャラ ドンヒャラドーーンッ!」
俺の雄叫びにバラクの声が重なった。
ピカピカッ ピカッ
灰色の空に鋭い光が走る。
俺はスピードを緩めることなくバラクの近くまで走ると、腰に携えていた剣をバラクの頭上めがけて思いっきり投げた。
「頼む!雷を受け止めてくれーーーーっ!!」
ゴロゴロゴロドドドドーーーーーーンッ!!!




