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第二十七話 「 雷鳴 」


第二十七話 「 雷鳴 」

 

 

 「うぉっ!ぬほっ!わぉ!」


 薄暗いテントの中、スマホのライトで開封したカードを照らす。皆を起こさぬよう細心の注意をはらっているが、つい感嘆の声が漏れ出てしまう。危ない危ない。


 残念ながら、レアなキラカードではなかったが、三枚とも衣装や構図が異なり、どれも可愛い!


 最後の一枚。

開封しようとして、ふと手を止める。


「もったいないから、これは明日の楽しみにとっておこう」


そっとカードをファイルにしまい、ささやかなミーコ満喫タイムを終えた俺は、幸せ気分で溶けるように眠りに落ちた。



     ♢ ♢ ♢




「勇者!起きて!」


 頬をペチペチ叩かれて目が覚めた。


「い、痛い‥ デジャブかな‥ 昨日もこんなことが‥ 」


「寝ぼけてる場合じゃないわよ!サルジュとワームがいないの!」


「えっ!? なんだって?」


 俺は、すぐさま飛び起きた。

昨晩、サルジュはリンの隣でぐっすり眠っていたはず。


「まさか、ドゥンケルに拐われたのか?」


「わからない。今モジャが近くを探しに行ってくれてる。

私の結界が破られた形跡はないから、魔人に侵入されたとは思えないけど‥ 」



 と、そこへモジャが息を切らしながら戻って来た。


「見つかりませぬぞ。いったいどこへ行ったのやら‥ 」


「散歩なら、そのうち帰って来るわよね‥ 。でも、こんな朝早くに黙って出かけるなんて。なんだか嫌な胸騒ぎがするわ‥ 」


リンは不安を隠しきれない表情で呟いた。


「とりあえず、朝食を済ませたら予定通り出発しよう。それまでに戻って来るかもしれないしな。

サルジュにはワームがついてる。何かあれば知らせに来るさ」


「そうね‥ 」


 

 俺はすぐに着替え、簡単な食事を用意した。

だが、朝食を終える頃になっても、サルジュとワームは戻ってこなかった。


 魔人の子だ。危険に遭遇すれば、身を守る術は身につけているだろう。


 とは言え心配だ。モジャもリンも同じ気持ちだろう。

俺たちは物音に耳をすませ、サルジュとワームの姿を探しながら山道を進んだ。



      ♢ ♢ ♢



 しばらくして、急にリンが立ち止まり空を見上げた。


「なんだか空が暗くなってきたわね」


 緑の葉と葉の隙間から差し込んでいた陽の光が、灰色の雲に遮られていく。


「これはひと雨きそうですな。あそこに雨宿りできそうな倒木がありますぞ」


 モジャが指差した先には、古びた倒木と大きな岩が組み合わさった天然の屋根のような場所があった。


「よし。ひとまずあの木の下で休憩しよう」


 俺たちは膝丈ほどの草の海をかき分け、倒木まで足早に向かう。


 ‥ ポツリ。


 ひと粒、冷たい滴が頬に落ちる。


「降ってきたぞ」


「急ぎましょう」


 俺たちが倒木の下に滑り込んだ次の瞬間、空が破れたように雨脚が強まり、森は一気に水の音に包まれた。


「間一髪、間に合いましたな」


「すぐ止むといいけど‥ 。サルジュとワームが心配だわ」


「そうだな‥ 」


 俺たちは、草原を濡らしていく雨粒をただただ眺めながら、勢いが静まるのを待った。


 ふと、雨音の隙間を縫うように


「ドンドンヒャララードンヒャララー」


どこからか、祭り囃子のような唄を歌う、甲高い声が聞こえて来た。

 

「美味しい獲物はどこじょいなー

 ドンドンヒャララードンドドンー」  


 微かに聴こえていた歌声が次第に大きくなっていく。


そして、草原の向こう側に揺らめく、オレンジ色の影が視界に入った。


それは、だんだんこちらへ向かって近付いて来る。

よく見ると、オレンジ色のポンチョを被り背を向けている人影のようだ。

サーカスで見るような紅白模様の玉に乗り、両手でバランスをとりながら後ろ向きのまま近付いて来るではないか。


「あれは‥ もしかしたら魔人か‥ ?」


 俺は小声で呟いた。


「気付かれないように隠れましょう」


「そうですな。今はサルジュ達を探す方が先決ですぞ」


 俺たちは、静かに岩陰へと移動した。


 すると、


「もういいかーい? もういいよー!」


甲高い声がいっそう大きく響いたかと思うと


「見いつけたぁーっ!」


突如、オレンジ色のポンチョが目の前に現れた!


「なっ、なんだお前はっ?!」


「通りゃんせー、通しゃんじょー!」


 オレンジ色のフードが風でめくれ、ニンマリ笑った道化師の仮面をつけた何者かが、両手を広げて通せんぼのポーズをしながら言った。


「隠れようったってそうはいかんじょ。

ここはバラクの森じょー」


「お前は魔人か? まさか、サルジュを連れ去ったのはお前なのか?」


「おおーやぁだやぁだ! 勝手にバラクの森へやって来て、なんて失礼な生き物だ!」


 バラクは興奮した様子で話し続けた。


「人間はそうやって差別する。

バラクが醜い化け物だって。

村の奴らは酷かった。

バラクの家に火をつけた。

燃えた!燃えた!無くなった!

家も!優しいばあちゃんも!

ばあちゃん、バラク、かわいそう。

バラクは泣いた!泣いた!何日も!

ある日魔王様バラクに言った。

悪い人間に仕返しを!

バラクの何倍もの悲しみを!

ばあちゃんの何倍もの苦しみを!

与えて与えて与えてやるんじょー!!」




「過去に、辛いことがあったんだな。でも、俺達はその村の人間達とは違う」


「関係ない。人間、嫌いじょ」


 バラクと名乗る魔人。魔王が人間界との共存を宣言したあの日、あの場にいた魔王の側近の一人だ。

油断はできない。


「まとめて丸焼き、雷の乱だじょ!

ドンドンヒャララードンヒャララ!」


バラクが歌いながら玉を転がすと


 ピカッ  


ドドンッッッ!!!


直後に稲妻が光り、俺たちが雨宿りしている倒木目がけて雷が落ちた。 


その衝撃で、木は焦げ臭いにおいを発し、真っ二つに割れた。


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