第二十三話 「 洞穴 」
第二十三話 「 洞穴 」
ミーコとの時間を堪能し、疲れも吹っ飛んだ!
ミーコは、ヒカゲを覚醒させた後『吐気毒小便』をチクワにお見舞いし勝利した。 手に汗握る激闘だったなぁ。
昨日のズィルザールとシャラーラも強敵だった。
リンやモジャがいなかったら、ズィルザールに食われていただろう。もっと強くならないと、二人の足手まといになっちまう‥ 。
よし、まずは今できることをやろう!
皆が目覚めるまで、剣の稽古だ!
俺は剣の素振りを始めた。
(ソイヤッ!ホイヤッ!テイヤーッ!!)
" 強くなりたい " そう強く念じながら剣を振りおろす。
何度か繰り返すうちに、一瞬剣が輝いて見えた気がした。
「ふわぁぁ‥ おはよう、勇者。朝から稽古?」
テントから出てきたリンに声をかけられ、俺は手を止め、振り向いた。
「ああ。リンやモジャにばかり頼っていたら、勇者の名が廃る。サルジュを狙って、いつ魔物が出て来るかわからないからな」
「そうね。この先は、さらに危険が待っていそうね‥ 。
朝食前に、私も付き合うわよ」
「それはありがたい!よろしくお願いします!」
♢ ♢ ♢
その頃、魔王城ではーー
「魔王様っ!」
慌てた様子で部屋に駆け込んできたのは、真っ白な長髪の魔人。ハァハァと息を切らしながら、興奮気味に話し出す。
「魔王‥ 様、サルジュが‥ 人間達といるようです。シャラーラの話では、ズィルザールは、その人間達にやられた、と」
「 ほお‥ サルジュが人間と‥ ? 」
「人間と一緒に、魔女とドワーフがいたと。おそらく、先日使い魔が見たというあの三人でしょう。
まだ、山中の『迷い』の結界は破られてはおりません。
奴らがこの城まで辿りつくことはないと思われますが‥ 」
「ならば放っておけば良い。たかが三人、いつでも始末できる。この城に辿り着く前に、他の魔物達の餌食になるだろう」
「‥‥ サルジュの処罰はいかがいたしましょうか?」
「ドゥシアよ。サルジュはまだ子供だ。じきに目覚めるだろう。放っておきなさい」
「 ‥‥ 御意」
ドゥシアと呼ばれた魔人は、そのまま静かに部屋をあとにした。
廊下に出たドゥシアは、考え込むように左手で口髭を触り、右手の人差し指の爪を噛んだ。
やがて、ローブを引きずるようにして歩き出したが、突然立ち止まり、右足でダンッ! と床を踏み鳴らした。
その表情は、苛立ちを隠せない様子だった。
「魔王様は放っておけと言っていたが‥ さてどうしたものか‥ 」
ドゥシアは呟きながら、再び歩き出した。
♢ ♢ ♢
俺達四人+ワームの一行は、森で木の実や薬草、魔石を集めながら進んだ。
「この辺りには、薬草や魔石が多いわ」
「ワームの好きな木もたくさんあるね!」
リンは、地面と睨めっこしては、黒いレースで縁取られた巾着に、見つけた魔石や薬草を放り込む。
サルジュはモジャと、ワームに樹液を飲ませている。
俺は、石に腰かけひと休み。ミーコのチャンネルをチェックしていた。
ふと、顔を上げた時、七〜八メートル先にある木々の隙間から、洞穴らしきものがあるのに気がついた。人が通れそうな位の大きさだ。
俺は、リン達に声をかけた。
「おーい!あそこに洞穴があるぞ」
「なんですと?魔王城への入り口ですかの?」
「行ってみましょうか?」
リンがそう言うと
「‥ダメ!やめて!」
サルジュがそれを制止した。
「サルジュ、どうしたの? 顔色が悪いわ」
「具合が悪いのか? それなら、いったんここから離れよう」
顔面蒼白のサルジュを、抱き抱えて引き返そうとしたその時。リンによって小鳥大の大きさに戻されていたワームが、サルジュの肩から離れ,飛び立った。
「わ、ワーム、ダメだよ‥!行っちゃぁダメ!」
ボォーーーーーッ
「何の音ですかな?」
洞穴から重低音が響いてきた。
ワームは吸い寄せられるように洞穴の入り口に飛んで行き、そこで突然パタリと落ちた。
「ワーム!!」
サルジュが俺の腕から滑り降り、ワームの元へと走った。地面に落ちたワームを大切に握りしめて、こちらを振り向いた時だ。
「キャーーーーーッ!」
洞穴の暗闇から、灰色の触手が伸びて、サルジュのワンピースをグイッと引き寄せた。
サルジュはバランスを崩し、その場に倒れ込んだ。
「敵だ!」
俺はサルジュの方へ走った。
「セヨーキヒッジュルサ!」
俺の足も、リンの呪文も、届かなかった。
洞穴の暗闇に、サルジュが飲み込まれてしまった。
「サルジュがさらわれてしもうたっ!」
モジャが慌てふためきながら言った。
「サルジュは危険な気配を感じたのね‥ 」
「敵地に入るには、リスクが高いですぞ。罠がしかけてあるかもしれん」
「でも、放っておけない。助けに行こう!」
「そうね。‥ でもその前に、勇者、モジャ、あなた達の手を私に重ねて」
「こうか?」
俺とモジャがリンの手の甲に各々の手を重ねると、リンがその上にもう一方の手を重ね、毅然とした声でこう言った。
「リン・クヴェレの名において、精霊達の力を借り受ける。我の力をこの者達にもしばし分け与えよ!」
一番上に置いたリンの手の甲が一瞬金色の光を放ったかと思うと、指先、腕、身体へと、温かい光が流れ込み、力が湧いてくる感覚を覚えた。
「こ、これは‥?」
「洞穴の中では、かなり危険が伴うわ。あなた達を守る為に、私の力を少しの間だけ貸す、ってとこかな」
「俺達にも魔法が使えるのか?」
「今だけ一時的にね。危険な時、強く、願うの。呪文が使えなくてもいい。強く、願うのよ。思いが足りないと、何も起こらない。でも、魔法神の加護で最低限命は守れると思う」
「わかった。リンの力を信じる」
俺は、勇気を出して一歩踏み出した。
ミーコ、俺もやったるで!
覚醒ヒカゲのように、覚醒勇者になったるで!




