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小窓を開けて

作者: 檸檬

あなたが座っていた木椅子を大切にしています

小窓から木漏れ日が差してその椅子が照らされているのをみるとまるであなたが座っているように見えるのです

なにものにもなれなくてもいいそう思えた

あなたと出会えて愛し愛されて

ただ目の前に広がる海にあなたの歌が翼を広げて

この胸をさらって飛んでゆきます

遠くから見ています

ずっと慕っています

小さな家に静かに暮すことしかしらないわたしです、本当のわたしは舞踏会には向いていなかったけれど

それでも、精一杯舞って

あなたにだけはわたしをわかってほしかった

あなたにだけはわたしを焼き付けたかった

あなたにだけはわたしを覚えていてほしかった

朽ちてゆく時にも負けない輝きをあなたの胸の中でみたわたしの中にある水面のゆらめきへ


もう、なにものにもなれなくてもいいそう思えた

あなたと出会えて愛し愛されて

あなたは自由にどこまでも、

あなたらしく飛んでいって

あなたの好きな場所へひとへ

わたしはいつまでも夢をみて、

夢の中であなたに手を伸ばしています

小窓を開けて

あなたの座った木椅子を大切にしています

木漏れ日に包まれながらその木椅子に座り

思うように動かなくなる手でも手編みのうたを 

密やかに作っていたい

あなたが座るその椅子の

傍らに掛けて待っています

小窓を開けて



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