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22 お茶会に行きます

「はい、大変よろしゅうございます」

「ありがとうございます!」


家庭教師のアーネスト夫人が笑顔で頷いてくれたので、私も笑顏で返事をする。


最近は、学院の入学式が一ヶ月後に迫っているので、家庭教師のアーネスト夫人からマナーの授業を受けている。

基本的な振る舞いについては、もうある程度叩き込まれているので、最後の仕上げというかおさらいのようなものだ。

今日は高位の相手への対応の仕方を教わった。


今年の新入生の中で私より高位の家門の者は、男子は侯爵家の子息が2人。女子は伯爵家より上のものはいない。

だが、上の学年には、王太子殿下と公爵家の子息、令嬢がいる。


一応、学院では身分は関係無く平等ということになっているそうだが、それを真に受ける者は誰もいない。

「今夜は無礼講だよ!」って言われても、上司に向かって「オッケー♪」なんてタメ口きく人がいないのと同じだ。


一応、学院がどんな様子なのかは、マリーに詳しく教えてもらった。

マリーは学院の卒業生、つまり私の先輩だ。

学院は貴族以外にも、マリーのように両親のどちらかが貴族だった者や、裕福な平民の子供も通っている。


マリー曰く、意外と身分の上下に厳しく、日常的に足の引っ張り合いがあり、派閥争いもしょっちゅうなのだが、表面的にはみんな優雅に仲良く振る舞っているそうだ。

まあ、前世の日本の学校や職場も、程度の差こそあれ、似たようなものだった。

人が多く集まれば、どうしたってそうなるのかもしれない。


それにしても、前世で大人だった私が、今更学校に通うことになるとは。

学業の方はまあ、なんとかなると思う。

だが、「人脈作り」という名の「友達との社交」が面倒くさい。

でも、ここで人間関係に躓くと、のちのち社交がやりにくくなるらしいから、気合いを入れて乗り切らなければならない。


「明日は、スペンサー伯爵家のお茶会だそうですね」

「はい。スペンサー伯爵令嬢とはデビュタントで一度お会いしましたが、穏やかにご自分の意見を仰る、聡明な方だとお見受けしました」


デビュタントの控室で、先頭を歩く人を決める話し合いの際に、私とキャサリンが良いのではと言い出した令嬢だ。

はっきりと自分の意見を言うがおっとりとした性格の令嬢のようで、ニコニコと微笑むその姿は好感が持てた。

亡くなった母と同じ名前なのも、なんだか親しみが感じられる。


「でしたら、是非仲良くされると良いでしょう。入学式前に仲の良いお友達を作っておくと、入学後に色々と都合が良いですから」


とりあえず、リチャードがいるのでひとりぼっちにはならないだろうけど、女子の友達もいないと、何かと不便だものね。

アーネスト夫人から言われる前に、マリーからも、入学前に友人を作っておくようにと言われているし。


よし、明日のお茶会で、頑張って友達を作ろう!




※※※




そして、私は今、スペンサー伯爵家にきている……のだが!

お茶会の開始早々に窮地に陥っている。

何故だかわからないのだが、一人の令嬢からものすごい敵意を向けられているのだ。


今日のお茶会の参加者は5人。

主催のマーガレット・スペンサー伯爵令嬢と私。

それから、初対面のアメリア・グラント伯爵令嬢、ビアンカ・トール子爵令嬢、シャーロット・ベンティス子爵令嬢の三人。


赤いドレスのアメリア様は、肩より少し長い赤毛の髪をハーフアップに結い上げている。ぱっちりとした少しつり目の緑色の瞳で、少々気が強そうに見える。


白いドレスのビアンカ様は、ふんわりした肩までの金髪をカチューシャできちんとまとめている。おとなしそうな茶色の瞳で、下がり眉のせいか気弱そうな雰囲気。


黄色いドレスのシャーロット様は、明るいブラウンの毛先を外側にカールさせたボブヘア。緑交じりの青い瞳をキラキラと輝かせた明るい雰囲気の子だ。


ドレスの色が赤、白、黄色なので、とりあえずチューリップトリオと呼ぶことにしよう。

そんなことを考えて気を紛らわせるしかないほど、今の私は戸惑っている。


何故なら。

アメリア様が、「どうしたお前?」と突っ込みたくなるほど、敵意を向けてくるのだ。


「エリザベス様は、バートン子爵家を継ぐはずだったと伺っておりますが、ご家族に何か問題がおありなのかしら?」に始まり、「デビュタントでは他の令嬢達を差し置いて一番最初に入場されましたが、そんなに目立ちたかったのかしら?」「常に予約でいっぱいのマダム・ローリーに急にドレスを注文するなんて、順番待ちの方がお気の毒ですわ」などなど。

チクチクネチネチと嫌味を言ってくる。


なので現在、場の雰囲気は殺伐としている。

ビアンカ様は、アメリア様と私の方をおろおろと交互に見つめ、ますます眉を下げているし、シャーロット様も戸惑ったように黙っている。

唯一、マーガレット様だけは、穏やかな微笑みを崩さずにのんびりとお菓子を口に運んでいるのだが。


(この年頃の女の子って、こんな攻撃的だったっけ? 前世で言うと中学1年生くらいってことだよね? 貴族令嬢って、こんなに口が達者なの?)


前世では大人だった記憶のある私。

記憶を取り戻した当初は精神年齢も大人だったはずなのに、あれから数年経った現在では、考え方などが現世での年齢相応になってきているような気がする。

お茶会に参加する前は、子供とのお茶会なんて余裕! と若干舐めてかかっていたが、これはどうやって対応したらいいのか全くわからない。


「リチャード様がお可哀想ですわ! せっかく幼い頃から騎士を目指していらしたのに。エリザベス様が従者にと望まれたせいで、長年の夢を諦めることになったんですもの!」


よくもまあ、それほど嫌みのネタがあるなと感心し始めた時。

突然、アメリア様が、まるで諦めたのが自分であるかのように悔しそうに言った。


何故、ここで急にリチャードの話が出てくるのだろう。

不思議に思っていたところ、今まで沈黙を保っていたマーガレット様が、にこやかな微笑みを浮かべながら言った。


「うふふ。アメリア様は、昔からずっと、リチャード・ベルク様のことがお好きなのよね」


突然の爆弾投下。


アメリア様は真っ赤になってブルブルと震え出し、ビアンカ様は気の毒なほどおろおろとしている。

シャーロット様だけは、突然の話題にキラキラと目を輝かせて、マーガレット様の話の続きを待っているようだ。


緊張感が漂う中、マーガレット様はニコニコと微笑みながら、マカロンをつまみ上げた。

チューリップトリオ \(*`∧´)/ (´・ω・`) (゜▽゜*)♪

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― 新着の感想 ―
あははは。 どうしたおまえ?。に、持っていかれ チューリップに打撃をくらいました。  リチャードがロックオンされてたのね。 もぉあげないけど(笑)
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