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初恋強盗  作者: 御神大河
93/203

藍川家訪問

「ここなの?」

「櫟井からもらったメモによるとな」


 オレたちは櫟井のメモを頼りに藍川の家まで来た。

 藍川の家は団地のため、到着までかなり探し回った。

 オレがインターホンを押そうとすると桜ノ宮に止められる。


「ちょっと待ちなさい。わたしが押すわ」

「なんで?誰が押しても一緒だろ?」

「あなたは自分の人相の悪さをもう少し認識した方がいいわよ」

「なんで急にディス」

「よく考えなさい。インターホンで出てくるのが藍川さんのご両親という可能性もあるのよ。

 ご両親が出られてあなたみたいなのが玄関に立ってたら警戒して、まともに取り合ってくれないかもしれないじゃない。退がってて。

 ……ただでさえ、今はそういう人を警戒してるかもしれないんだから」

「そ……そうか」


 まぁ、一週間以上だしな……学校に来ない理由が体調不良とは限らないのはその通りだ。最大限の気を遣った方がいいだろう。

 とは言え、そこまでボロクソに言うかね……。

 桜ノ宮はオレを扉の死角になりそうな位置へと追いやると、インターホンを押す。


「はーい」


 インターホンには返答があった。

 声的に女性だろうか?


「急な来訪申し訳ございません。わたくし楚麻理さんのクラスメイトで桜ノ宮真姫と申します。

 ここ最近、楚麻理さんが登校されておらず心配になり、お伺いさせていただきました。少しばかり、楚麻理さんとお話しさせていただきたいのですが、楚麻理さんはご在宅でしょうか?」

「え!?楚麻理のお友達?ちょっとだけ待ってくださいね?」


 インターホンが切れる。


「家にはいるみたいね」

「だな」


 しばらく待っていると玄関が開く。

 玄関から出てきたのは藍川楚麻理ではなかった。

 藍川に似てるな。母親だろうか?


「待たせてしまってごめんなさいね」

「いえ、それで楚麻理さんは?」

「それが、会いたくないみたいで……せっかく来てくれたのにごめんなさいね?」

「なんか大きな病気というわけではないってことですか?」


 オレが口を開くと、オレに気付いていなかったのか藍川の母親は驚いて一歩下がる。


「ちょっと!ビックリされてるじゃない!?」

「すまん。つい」

「大丈夫よ。えーっと……」

「楚麻理さんのクラスメイトの湾月鏡夜です。楚麻理さんのお姉さんですか?」

「え!?もうそんなわけないでしょ!楚麻理の母です」

「そうなんですか。お若く見えたのでてっきりお姉さんかと」

「あら、そう?こんなおばさん褒めたってなんにも出ないわよ。でも、楚麻理のお友達がいい子そうで安心したわ」


 藍川の母親は容姿を褒められて明らかにホクホクしている。

 わかりやすいお母さんだ。


「どうしても楚麻理さんに会うことはできませんか?」

「う~ん。難しいと思うわよ。あの子お部屋から出てこないから」

「いつからですか?」

「部活のみんなと海に行って帰って来た時は楽しそうにしてたんだけど、その後から段々と」


 ということは、考えられる原因はみんなで海に行った時に何かあったか、その後から二学期までの期間に何かあったかか……。

 そして、藍川が学校に登校してない理由はやはり病気じゃなかったな。


「あの、少しだけ上がらせていただいてもよろしいでしょうか?」

「え……ああ、どうぞ」


 桜ノ宮、随分攻めるな。

 オレたちはお言葉に甘えて藍川家へとお邪魔する。


「お部屋すごいきれいですね」

「そうかしら?」

「はい、急にお邪魔してしまったのにこのきれいさはすごいですよ!お母さんが?」

「ええ。帰ってきたら家の中が汚いってなんか嫌でしょ?」

「そうですね。こんないい奥さんと巡り合うとは旦那さんは幸せ者ですね」

「もう!本当に口が上手ね!あの人もこれくらい褒めてくれれば嬉しんだけど」


 そう言いながら、藍川の母親はオレの肩をペチンと叩く。


「ここが楚麻理の部屋よ。楚麻理ー?お友達が来てくれたわよー」

「……」


 藍川の部屋から返答はない。


「もう!楚麻理──!」

「大丈夫です」


 オレは無視する藍川を叱ろうとする藍川の母親を止める。

 ここで叱られたらますます殻に閉じこもるだけだ。友人の前で母親に叱られるってきついからな。

 沈黙のドアに向かって桜ノ宮が話しかける。


「藍川さん、桜ノ宮です。余計なお世話かもしれないですけど、心配になってつい来てしまいました。

 元気になったら学校に来てくださいね?待ってますから」

「……」


 桜ノ宮の声に対しても何の返答もない。

 そう簡単にはいかねーよな。

 オレたちは特に何の成果もなく、藍川家を後にすることにする。


「急にお邪魔してしまい申し訳ございませんでした、お母様。よろしければ、楚麻理さんに湾月も来ていたとお伝えください」

「わかったわ。今日はわざわざ来てくれてありがとね」

「いえ、こちらこそ」


 藍川家からの帰り道。

 桜ノ宮は明らかに気落ちしていた。

 村雨と桜ノ宮は藍川がこうなるかもしれないことを危惧して、わざわざ部活まで作ったんだもんな。予測できていたのに、この状況を食い止められなかったと言う悔しさもあるんだろうな。


「不登校になっちまったのは気になるけど、大病とかじゃなくてよかっただろ」

「……そうね」

「それに、これ以上出席しない日が続けば学校側もなにかしら動くんじゃないか?」

「それはどうかしら?以前イジメによって不登校になってしまった生徒は学校側から半強制的に退学させられたという話よ」

「なんだそれ?」

「あくまで噂よ。確証があるわけではないわ。

 ただ、イジメに加担したであろう複数の生徒を洗い出して処罰するよりも、イジメられている一人をいなかったことにする方が学校側としては労力が少なく済むでしょうし、ないとは言えないと思うわ

 翁草高校は体制が古めだから」

「なるほどね~」


 ということは学校が動き出すよりも早く、オレたちで藍川のことをなんとかしないといけないのか。

 そうなると、あまり時間はなさそうだな。


「ねえ、湾月くんって年上好きなの?」

「はあ?なに、いきなり?」

「だって、藍川さんのお母様を口説いてたじゃない」

「いや、口説いてねーよ!若いですね?って言っただけだろ?」

「それにしては積極的だったように感じたのだけれど。それに家のキレイさも褒めてたし」

「家事をする身からすると、家を常に人に見せられる状態に保ってるってのは感心することなんだよ。あれくらい普通だって!」


 それに、ちょっとオーバーくらいでいいんだよ。

 藍川のことを聞き出すんだったら相手を上機嫌にさせつつ、懐に潜り込む方がいいんだから。


「本当かしら?朝宿の件もあったし……」



 自宅に帰ったオレは早速パソコンに齧りつく。

 いろいろと調べた結果、オレが藍川のためにしてやれそうな事は二つ。

 原因の解消と本人の心の支えとなってやること。

 原因は当然調査するとして、やはり一番重要なのは本人の心の支えとなることだな。

 桜ノ宮の話が本当なら、学校側が動き出す前に、オレは藍川にとって「他からどう言われようとどう扱われようと関係ない」と思えるくらいの存在にならなくてはならない。

 幸い、恋愛シュミレーションゲームにはイジメられているヒロインは星のように存在する。さまざまな展開を組み合わせて、最も最適な選択肢を選んで行けばいい。

 このまま攻略するのもありか……。


『藍川さんのイジメ問題解決してあげるの?』

「知った以上なにもしないのはモヤモヤするからな」

『瀬流津さんの時にみたいに派手にやるつもりじゃないでしょうね?せっかく周りも鏡夜を怖がらなくなってきたのに……』

「さぁな。それは状況によるな」

『無茶はしないでね』


 それは無理だろうな。

 オレは桜ノ宮を攻略しなきゃならない。ただ、桜ノ宮を攻略するためには藍川の不登校状態の解消は必須だ。

 桜ノ宮は友達が大変な時に浮かれるような性格じゃないからな。

 多少無茶してでも藍川のことは解決して見せる。

 オレはひたすらにイジメられているヒロインが出てくる恋愛ゲームをやりまくった。

また読んでいただきありがとうございます!

『初恋強盗』の93話です!!

今回は藍川楚麻理の自宅訪問回!!

藍川が不登校状態に!!

今度は本格的にイジメと対峙することに!?

次回は鏡夜のごり押し回!!お楽しみに!


忌憚ない批評・感想いただけると嬉しいです。

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