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初恋強盗  作者: 御神大河
92/203

二学期

 今日から二学期である。

 楓は私物を置いたまま彩夜と一緒に登校していった。

 なんでも、もしかしたらまたすぐ世話になるかもしれないかららしい。

 まぁ、楓のお母さんまだ帰ってこれてないみたいだしな。

 それと、結局楓の父親は一度も顔を出さなかった。

 別に挨拶しに来いとは思わないけど、忙しいだかなんだか知らんが一度くらいは自分の娘の様子くらい見に来いよな。


「おはよー湾月くん!」

「根古屋さん!?おはよ」

「え、なに!?優立って湾月くんと仲良いの?」

「夏休みにたまたま会ってちょっと話したんだー」

「へー」


 学校は一学期と特に変わりはない──と思っていたのだが、少しばかり変化があった。

 まず、根古屋に挨拶された。少しばかり交友が増えたのだ。

 そして、他クラスからも恐れられている感じがしなくなった。

 今までは廊下を歩くだけで、目も合わせてもらえず大げさに避けられていたのに、今はそんな様子はない。

 と言うかこれは──


『なんかすごい見られてない?』

「ああ」


 そう、見張ってんのかったくらい周囲の視線がオレへ集中しているのである。

 これはこれで居心地悪いな。

 オレが足早に教室へと避難しようとすると桔梗と鉢合わせた。


「湾月くん、おはよ」

「おはよ。もう足大丈夫なのか?」

「ええ。もう平気よ。それよりまた何かやらかしたの?随分と注目されてるみたいだけど」

「さぁな。原因がわかってれば対処するんだけどな」

「ふーん。それよりもネクタイだらしないわよ、しっかり締めなさい!」

「いや、まだ暑くてさ」

「言い訳しない!」


 桔梗はオレのネクタイを思いっ切り締める。


「ぐぇ。強く締めすぎだろ」

「だらしない格好してるからでしょ!もう、締め直してあげるから、ちょっと屈んで」

「いいよ。自分でやるから」

「ダメ。湾月くんがやるとまたちゃんと締めないでしょ!いいから、屈んで」


 強引な。

 オレが屈むと、桔梗は慣れた手つきでネクタイを結んでいく。


「随分と慣れてるな。他人のネクタイを締めるのって結構難しいだろ?普段からやってんのか?」

「べ、別になんでもいいでしょ!

 はい、できた!やっぱキチッとしている方がかっこいいわよ!緩めちゃダメだからね!」

「はいはい」


 オレと桔梗が話していると、今まで話したこともない同級生からも話しかけられた。


「湾月くん、ちょっといいかな?」

「なに?」

「あっ、ごめん。お取込み中だった?」

「大丈夫よ。私の用事は終わったから」


 他に人が来たことで、桔梗は自分の教室へと帰っていった。


「湾月くんって桔梗さんと付き合ってるの?」

「いや」

「そうなんだ。それよりさ!夏休みの櫟井とのテニスの試合見てたよ!あの櫟井から一本取るとかすごいな」

「はあ?ありがと」

「あの後オレらも勝負したけどボールに触れることすらできなかったもんな!」

「なー!」

「それでさ、もしよかったらバスケ部に入らない?」

「あっ!抜け駆けすんなよ!野球部にしようぜ、湾月くん!」

「いやいや、サッカー部でしょ!」

「野球とテニスは球を打つから一致してるけど、サッカー関係ねーじゃん!」

「球打つって全然ちげーじゃん!てか、それならバスケも関係ねーだろ?」

「湾月くんがバスケ上手いのは体育で保証されてっから!」


 オレに部活の勧誘……。マジか!?

 入学当初はオレが通る瞬間だけ部活の勧誘の声が失くなってたのに!!

 もしかしてオレ、ついにこの学校の一員として認められた!?

 ただ、家のこととミッションがあるんだよな~。


「ごめん。オレ部活には入れなくて……」

「そっかー」

「まじかー。残念」

「まぁ、しゃーないだろ」


 誘いを断ってしまったが、嫌な顔することなく退いてくれてよかった。

 あー、あいつらの名前聞けばよかったな。


『随分と鏡夜に対する接し方変わったわね』

「な。なんでだろ?」


 理由は非常に簡単だった。

 夏休み中、オレがいろんな人と親しくしていたからのようだ。

 藍川の部活を手伝ったり、詞と夏祭りに行ったり、さらには彩夜たちとプールに行っていたのも目撃されていたらしい。

 その中でも特に大きいのが、詞と長春さんの証言であった。

 詞は夏祭りでオレと別れた後、友人たちにオレは怖くないと力説してくれていたらしい。詞があまりにも必死に訴えてくるから周りも信じざる得なかったとか。

 そこに加えて、一組の長春さんだ。夏休みにオレとちょっとだけ遊んだけど、全然普通むしろ優しいくらいだったと話して回っていたと聞いた。

 なんでも、基本的に避けられているオレと遊んだという内容は大きな話のネタになるそうだ。

 ちょっろっと食事しただけだから遊んだって言うのは完全に誇張表現だけどな。

 さらに付け加えると、そこに陰浦もいたことも話したそうだ。陰浦も友達がおらず、話したことがある人が少ないからな。そんな陰浦と遊んだというのは価値があることなんだろう。


『長春さんが言いふらしたことで、陰浦さんかなり囲まれているみたいよ』

「陰浦栞がクラスメイトと仲良くなったのはいいことなんだが、夏休み中にオレと遊んだ記憶は失くなってるはずだから、それを掘り返されるのはオレとしては面倒だな。記憶戻ったりしないよな?」

『どうなのかしら?ないとは思うけど』


 幸い陰浦と学校の人を交えて会ったのは、長春さんが話して回ってる食事の非常に短い時間とほとんど村雨と回っていたイベントだけだ。

 村雨はあまり語る方ではないし、「忘れてるだけかな?」くらいの感じだとありがたいんだが……どうだろう?



 二学期が始まって一週間以上が経った。

 順調に滑り出したと思われたオレの学校生活であったがとんでもない問題が発生した。

 二学期が始まってから一度も藍川が登校していないのだ。

 放課後は基本的に桜ノ宮と部室で過ごしているのだが、ここ最近は非常に空気が重い。

 初日こそ単なる体調不良だろうと、オレはゲーム桜ノ宮は読書と各々好きなことをやり、時折り軽口も飛ばし合っていた。

 しかし、藍川の欠席数が増えれば増えるほど互いに口数が減っていった。


「もう一週間以上よ」

「そうだな」

「スマホも既読が付かないし、なにか大きな病気なのかしら。それとも……」

「確認するか」

「どうやって?先生に聞いてもはぐらかされてしまうじゃない」

「本人に聞きに行くんだよ?桜ノ宮は藍川さんの家って知ってるか?」

「いいえ」


 知らないのか。


「あなた知ってるの?」

「残念ながらオレも知らない」

「じゃあ、どうやって本人に聞きに行くのよ?」

「藍川さんの家を知ってる奴に聞く」


 オレはテニス部へと赴く。

 夏休み以来、再びのオレの来襲にテニス部がざわつく。


「湾月くんだっけ?なにか用かい?」


 危機感を抱いた先輩がオレに話しかけてきたが、オレはその先輩をスルーして日陰で涼んでいる姫路の下へと向かう。


「姫路さん、ちょっといいか?」

「なに?」

「藍川さんと仲いいよな?藍川さんの住所を教えてくれ」

「は?なんで?」

「様子を確認しに行くんだよ」

「なに?あんたもしかしてあいつのことが好きなわけ?あ、そう、ふーん。お断り!」

「なんの用だい、湾月くん?」


 姫路にお願いしていると櫟井が話しに入ってきた。

 どうやら周囲のテニス部が只ならない空気を感じて櫟井を呼んできたようだ。


「姫路さんに藍川さんの家の場所を教えてもらおうと思ってな」


 櫟井はこめかみを跳ねさせると、警戒するように眉間にしわを寄せる。


「藍川の家?知ってどうするんだ?」

「お見舞いに行くだけだよ。もう一週間以上登校してないからな」

「君一人で行くのか、女の子の家に?」


 オレは離れた場所からオレの様子を窺っている桜ノ宮を指差す。

 桜ノ宮を確認すると櫟井からほんの少し警戒心が解けたような気がする。


「少し待ってくれ」


 櫟井は一度部室に戻るとオレにメモを手渡してきた。

 そのメモには住所が書いてある。


「藍川の住所だ」

「助かる。……そうだ、藍川さんが登校してない理由についてなにか知ってたりするか?」


 オレの質問に櫟井も姫路もなにも答えなかった。

 オレはメモに書かれた藍川の家へと向かう。

また読んでいただきありがとうございます!

『初恋強盗』の92話です!!

今回は二学期回!!

周囲の鏡夜への接し方に変化が!?

そして、藍川楚麻理がまさかの不登校に!?

次回は藍川家訪問回!!お楽しみに!


忌憚ない批評・感想いただけると嬉しいです。

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