表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初恋強盗  作者: 御神大河
81/203

大輪が照らす君の横顔

 あーあ。詞が行ってしまった……。

 せっかく詞と楽しくいい感じに遊べていたんだがな。


『ちょっと、鏡夜!しっかりしなさいよ!

 せっかく桔梗さんと二人きりになったんでしょ!!』


 おっと、そうだった。

 遊びは終わりだ。ここからは攻略に切り替えるぞ。


「じゃあ、二人で花火見るか!その前にたこ焼き買ってっていいか?」

「え!?あ……うん」


 花火見てる間って「きれーい!」とか「おー!」とかしか言うことないし、意外と手持ち無沙汰になるんだよな。


「すみません。たこ焼き一つ」

「あいよ!おや、妹さんかい?熱いから気を付けるんだぞ!」


 妹?あー、桔梗のことか。

 この身長差じゃ同級生には見えないよな……。


「妹じゃないです!」


 気にしている身長のせいで間違えられたとはいえ、身を乗り出して抗議するのはやめなさい。

 屋台が倒れたらどうするんだ。


「おっと、すまんすまん。彼女さんだったか!

 たこ焼き一つおまけしたるから堪忍な。

 兄ちゃん、かわいい彼女さんを幸せにしてやるんだぞ!」

「かっ──!?」

「あはは。ありがとうございます」


 オレはなおも店主に何か言おうとしている桔梗の口を押さえて遮ると、たこ焼きの屋台を後にする。

 ったく、屋台の店主なんてあんなもんだろ。いちいち噛みつかずに笑って流せよな。


「ね、ねえ、傍から見ると私たちってそう見えるのかな……?」

「まぁ、年頃の男女が祭りで二人でいるわけだしな。相手がオレなのは我慢してくれ」

「別にいいけど……」


 恋人に見えるって質問であってるよな?兄と妹って意味じゃないよな?



 オレたちは本殿を少し逸れた立ち入り禁止の紐が張ってある場所へと入る。


「ここって本当に入って大丈夫なのか?荷物持つぞ、紐越えるの危ないし」

「ありがと。大丈夫よ!別に危険な場所じゃないし。

 ここからは先はうちの庭になっているから他所の人が入って来ないように紐を張ってるだけだし」

「あ、そうなの。お邪魔しまーす」


 天霊神社は小山に入り口にある。

 ということは、この山は桔梗家のものなのか……。

 桔梗ってお金持ち?

 禁止紐の先は二手に分かれており、片方が桔梗への庭へと繋がっており、もう片方は石段が上へと伸びている。

 石段は普段はあまり使われていないのだろう、若干滑る感じがする。


「おい。足元気を付け──」

「きゃ!?」


 オレの注意が遅かったか。

 桔梗は石段で滑ってつんのめる。

 オレが桔梗を支えるのと、桔梗自身が両手を地面につき、体を支えるのが間に合ったため幸い顔面をぶつけるという事態にはならなかったが、もう少し気を配ってやればよかったな。反省だ。


「大丈夫か?」

「大丈夫よ!」


 そう言いながら桔梗は石段を登り始める。

 しかし、その足運びは明らかに不自然だ。


「本当に大丈夫か?足ひねったんじゃないか?家すぐそこだろ?一回治療しに帰った方が──」

「大丈夫!それより早く花火を見に行きましょ!」


 まったく、強情な。

 まぁ、今ここで家に帰って治療してたら花火に間に合わないだろうし、最悪親に花火見に行くのを止められるかもしれないもんな。


「しゃーねぇな。オレが負ぶっていってやるから、乗りな」

「いいわよ!迷惑になるでしょ!」

「いいから乗れって!その速度じゃ花火間に合わねーだろ」

「でも……」

「わがまま言ってると担ぎ上げて家に強制送還するぞ。黙ってオレの言うことを聞け」

「……わ、わかったわよ……」


 強制送還が効いたのだろうか?

 桔梗は素直に従ってくれた。

 オレは桔梗を背負って石段を昇る。

 意外だ。

 ちんちくりんの桔梗によるオレの背中にかかる圧迫感が、桜ノ宮のそれに酷似している。

 桜ノ宮はあん時意図的に距離を取ろうとしてたし、こっちは足元が不安定なためかなりギュッとしがみついてきてるとは言え、桜ノ宮は薄布一枚だったのに対して、桔梗の方は浴衣だぞ!

 これは互角……いや、仮に桔梗が晒を巻いていた場合は──


「湾月くん?」

「へ!?ああ、ど、どうした?」

「お、重くない?」

「全然。綿菓子みたいだぞ」

「……そんなわけないじゃん」


 うおおお!!耳元で囁くのやめて!それと吐息が耳にかかってるから!!

 これは早く昇りきらないとオレの理性がやばい!

 オレは転ばないように慎重に素早く石段を昇りきる。


「おおー!ここか!まじで誰もいないじゃん!」


 昇りきった先はコンクリートとの床と、落下防止の柵で整備された物見ができるような場所になっており、周囲には灯りも少なく空までの距離も近い。

 これは、一般人にバレたら一瞬で話題のスポットになっちまうだろうな。

 オレは備え付けられたベンチに桔梗を座らせる。

 澄んだ夜空にはすでに最初の花火がドーンドーンと打ち上がり始めている。


『わー!すごーい!超きれいじゃなーい!!』

「おおー!」

「きれいねー!」

「そうだなー。…………あっ、律の方がきれいだよ?」

「ぶふっ、あはははは。やめて。似合ってない」

「あれ、そう?」

「うん。それにそんなこと思ってないでしょ?」

「んなことはないけ──」

「……」


 少し煙がかった空に今日一の特大花火が打ち上がりオレのたちを明るく照らす。

 うーん。やっぱ花火の最中は会話しづらいな。

 花火を見ているせいでお互いの目が合わないから表情もわかりづらいし、目の前で派手できれいな見世物が行われているから心ここにあらずの会話になるし。

 まぁ逆に、目の前の花火よりもお互いのことで頭いっぱいになって盛り上がれたら、これ以上の相思相愛はないって思えるから花火ってカップルに人気なんだろうな……なんか悟れた気がする。

 そういう意識を植え付けるためにも、もうちっと花火中にアプローチした方がいいのだろうか?

 いやでもなー、桔梗の奴相当花火を楽しみにしてたみたいだし、やり過ぎると鬱陶しいと思われる可能性も……。

 迷ったオレはチラッと桔梗の方を見る。

 オレと桔梗の目が合う。

 しかし桔梗はすぐに目を逸らした。

 桔梗も会話のない気まずさを感じているんだろうか?


「そ、そうだ!さっき買ったたこ焼き食べないか?

 桔梗も食べたいって言ってたろ?このままだと冷めちまうし」

「え!?あ、じゃあ、お金」

「いいって!いいって!桔梗に喜んでもらいたくって買ったんだし。

 人の好意を素直に受け取るのも時には大切だぞ。ほれ、口開けろ!」

「へ!?自分で食べられるから!!」

「いや、お前さっきこけて手両方とも汚れてるだろ?」

「あ」

「ほら、拒んでないで素直に受け入れろ。あーん」


 かなり迷っていた桔梗であったが、折れて口を開ける。


「そんなおちょぼ口じゃ入らないだろ。もっと口開けて」

「でも……口の中見せるの恥ずかしいし……」


 そういうこと言わないで!意識しちゃうから!!


「い、いや、歯科検診とかでもやってることだろ?恥ずかしがることじゃないって!」

「そ、そうね!」

「じゃ、じゃあ、改めて。あーん」

「あー」


 あーん下手か!

 なんで薄目になって微妙に舌出してんだよ!食べ物を口に運ぶ時に舌出さないだろ!緊張してんのか!?

 妙に色っぽくてこっちの手が震えるわ!!

 しかし、さすがは人間の口。

 オレがたこ焼きを口に運ぶと自動的に舌が口の中へと引っ込み、受け入れ態勢を作った。


「うーん!美味しい!」

「そいつはよかった」


 桔梗は実に満足そうにたこ焼きを頬張っている。


「ねえ、もう一個もらってもいい?」

「もちろん。遠慮なく桔梗が食いたいだけ食いな。実はオレ、詞ともう結構食べてるから」

「そ、そう?じゃあ、遠慮なく」


 オレが再びたこ焼きを差し出すと桔梗が止まる。


「どうした?」

「さっきから私のこと呼び捨てにしてるよね?」

「え!?ああ、すまん。嫌だったか?」

「ううん、いいんだけど。その~……わ、私も呼び捨てにしていいかな?」

「ああ、もちろん!」

「えへ」


 その後も桔梗は花火を見ながらたこ焼きをパクパクと食べていった。

 最初の遠慮はどこへやら。

 完全に花より団子といった感じだな。

また読んでいただきありがとうございます!

『初恋強盗』の81話です!!

今回は打ち上げ花火回!!

お祭りの締めといったら夜空に咲く大輪!

花火に照らされる思い人の横顔から目が離せなくなる最高の青春!!

次回は思考情報部の合宿準備回!!お楽しみに!


忌憚ない批評・感想いただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ