表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初恋強盗  作者: 御神大河
76/203

陰浦栞とのお出かけ前編

 オレは朝から彩夜と楓の朝食と昼食を用意すると、身支度を整える。

 そう、今日は陰浦と会う日である。


「さて、行くか」

『やけに張り切ってない?』

「陰浦栞の攻略において今日が一番重要だからな」


 オレは気合を入れて待ち合わせ場所へと向かう。



 到着は待ち合わせ10分前。

 陰浦は……まだ来てないな。

 そこから待つこと約10分。陰浦がパタパタと走ってきた。

 前回の宣言通り、本当に待ち合わせ時間きっかりに来たな。そんなにナンパが嫌だったんだろうか?


「おはよ、栞」

「お、おはようございます。待たせてしまってすみません」


 陰浦は顔を合わせるや否や、赤べこのように頭を振りながら謝罪してくる。


「全然待ってないから大丈夫だよ」

「よ、よかったです」


 相変わらずの敬語だな……まぁ、普通に会話できてるし、親密度がリセットされたってことはなさそうだけど。


「わ、湾月くん?どうしましたか?」

「ん?ああ、いや、今日の栞はオシャレでかわいいなと思ってね」

「ふぇ!?あ、あ、ありがとうございます……。

 ……そ、その!きょ、きょ……湾月くんもかっこいいと思いましゅぅ……」


 ぷっ。

 顔がそんなに真っ赤になるまで頑張らなくてもいいのに。

 陰浦面白いな。


「じゃあ、行こうか」


 オレは硬直している陰浦の手を引き、電車へと乗る。


「わ、湾月くん。今日はどこに行くんですか?」

「陰浦ならすぐわかると思うよ」


 オレと陰浦はとある駅で降りる。

 陰浦は辺りをキョロキョロと見回している。


「行くぞー」

「は、はい」


 陰浦は明らかにそわそわしている。

 まぁここは陰浦が来たいと思っていた場所だろうしな。

 オレは迷いなく道を進むと、とあるモールの前で足を止める。


「ここって……!?」


 陰浦驚いてるな?

 そりゃそうだよな。ここは今日陰浦の好きなもので埋め尽くされてるもんな。


「今日ここで『群青(あお)(きみ)』のイベントやってるんだろ?」


『群青の君』は女性に非常に人気の高い恋愛シュミレーションゲーム。

 個性豊かなさまざまな男性キャラクターとともミッションをクリアしながら好感度を上げていくゲームで、別段エンディングがあるわけではなく、常にアップデートがされているらしい。

 乙女ゲーというよりはキャラゲーに近いゲームだと個人的には思う。

 攻略の参考になるかと思ってオレもプレイしたことがあるのだが……男に愛を囁かれたりするのがむず痒すぎて早々にリタイアしてしまった。


「ど、どうして?」

「栞のパソコンの壁紙がこのゲームのキャラだったし、部屋にもポスターとかあったし好きなのかな~と思って……。あ!?悪い、こういうとこには一人で来たかったか!?」

「ううん。たぶん私じゃ行きたいと思いつつ勇気が出なくて結局来れなかったと思うから、嬉しい。ありがと」

「お、おう」


 陰浦ってこんな風に笑うんだな……。


「って、今タメ口で話せてたよな!?」

「え!?すみません、すみません。私なんかが調子に乗りました」

「いやいやいや、嬉しかったんだって!もう一回なんかオレにタメ口でしゃべってみて」

「へ!?あ、えっと……あの~……無理です……」


 ん~。意識するとダメなのか。

 まぁいい。別に言葉遣いが変化しないからと言って好感度が変化しなわけじゃないしな。

 オレと陰浦はモールの中を見て回る。

 と言っても、陰浦の足が止まりまくりで入口からほとんど移動できていないのだが……。

 にしても、人気の作品なだけあって人が多いな。

 一般客もいるとは言え、ほとんどが作品のファンだろ、これ。その証拠に女性客の人数が呆れるほど多い。対して男性客はほとんどいない。

 これは向こうから見つけてもらえる可能性の方が高いか?

 オレは陰浦を見失わないように注意を払いつつ、周囲を見渡す。


「わ、湾月くん!」

「どうした?」

「え、映画一緒に見ませんか?」


 映画?

 はえー、『群青の君』って映画もやってんのか。


「いいよ。じゃあ、チケット買ってくるから欲しいグッズがないか見てな」

「席……一緒に選びたいです……」

「お、おう。一緒に選ぼ」


 そういや女の子はいろいろと一緒にやりたがるってトーカに教えてもらったな。

 どうもその感覚に慣れないな。

 オレと陰浦が券売機でチケットを買おうとした時、不意に声をかけられる。


「湾月!?」

「おお、村雨!?」


 オレが声をかけられた瞬間、陰浦は相手を確認することなく、ものすごい勢いでオレの後ろに隠れた。

 声の主は村雨心和である。


「な、なんであんたがここにおるん?」

「あー、その~……」


 あのー、陰浦さん?そんなに引っ張らなくてもどこにも行きませんよ?てか、服伸びるから……。

 それに、そんに村雨に怯えてたら紹介しづらいでしょ?


「こらこら。オレの後ろに隠れてないで挨拶しなさい」

「あ、うぅ……」

「も、もしかして妹さん?」


 オレの後ろに隠れている人物を見ようと、村雨が覗き込む。

 そんな村雨から逃げるように陰浦は反対方向へ回る。

 オレの正面まで回ってきたところで、オレは陰浦の肩を掴む。


「ひゃう!?」

「観念しろ」


 陰浦と村雨の目が合うと、ほぼ同時に互いに目を逸らして黙り込んでしまう。

 似た者同士め。


「いやいや、お互い挨拶しろよ。ほれ!」


 オレは軽く陰浦の背を叩く。

 不安そうにオレの顔を見る陰浦だが、オレがウィンクすると全身をカチコチにしながら自己紹介する。


「あ、わ、わたし、陰浦栞といいます。あの、その……あう……」

「頑張ったな。というわけで、一年二組の陰浦栞だ」

「あっ、えっと、一年三組の村雨心和です。と言うか、二人付き合っとったの!?」

「いえ、そんな、違うんです!違うんです!」

「そ、そうなん」


 も、ものすごい否定されたんだが……。

 あれ?結構好感度稼げてるかなーとか思ってたんだけど、もしかしてオレの思い違い?


「ほんなら二人がなんで一緒におんの?」

「え!?あ、うっ……」


 あーあ。陰浦の奴、目が泳ぎまくって吐きそうになってるわ。

 これ以上は無理かな。


「以前学校で噂が流れたろ?あの後仲良くなったんだよ。

 で、オレがここにいるのは付き添いみたいなもんだ」

「はーん。ほんなら陰浦さんが『群青の君』好きなん?」

「え!?あ、はい」

「ほんま!?誰推しなん?」

「……ムラマサです」

「ムラマサ!?もしかして第四章のあれでやられた口?」


 陰浦はコクコクと頷く。


「わかるわー。あそこええよね!

 最初は超クールなムラマサが姫を救うために初めて本気で戦って、その後に見せる姫を救った時の笑顔な!あんなん反則やって!」

「その後、笑い返されて照れるのも……」

「ああーいい!最高!」


 村雨のエンジン掛かってきたなー。

 村雨は自分の好きなことになるとすごい饒舌だし、基本的に否定したりしないから打ち解けやすいんだよなー。

 しかも、めちゃくちゃしゃべる割り本人も本質的にコミュ障だから、スーパーコミュ障の陰浦の気持ちも汲めて相性はいいだろう。


『ちょっと、鏡夜!陰浦さん完全に村雨さんに取られちゃってるけどいいの?』

「いいんだよ。むしろこれが狙いだ」

『どういうこと?』

「言っただろ?陰浦栞の攻略で策を講じるって。

 共通な好きなものがある二人にはここで友達になってもらう。

 可能ならオレよりも高頻度で遊ぶようになるとベターだ。

 そうすれば陰浦栞が合う相手がオレと絞れなくなって、攻略後にオレの存在が陰浦栞の記憶から消滅しても不信感を持たれにくくなるからな」

『てことは、村雨さんが今日ここに来るってことも?』

「知ってたさ。だから陰浦をこの日この場所に連れてきたんだからな。まぁ、会えるかどうかは賭けだったが」

『ダウトね!どうせ見つからなさそうだったら、アタシに探して来いって言ってきたんでしょ!?』

「バレたか」


 さて、今日で二人はどこまで仲良くなってくれるかな?

また読んでいただきありがとうございます!

『初恋強盗』の76話です!!

今回は陰浦栞とのお出かけ回!!

場所はコラボ中モールとかいうヲタク仕様!!

なぜなら、ここには鏡夜の真の狙いが!?

次回は陰浦栞とのお出かけ回後編!!お楽しみに!


忌憚ない批評・感想いただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ