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初恋強盗  作者: 御神大河
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みんなで料理

 突如、発生した授業内容の変更で村雨、桜ノ宮、藍川も慌てている。


『料理なら鏡夜の十八番じゃない!ラッキーね!』


 そうだな。

 おかげで、徹夜してまで考えたプランは全部ご破算になったけどな。

 それにしても、偶然とはいえ桜ノ宮の米が噛み合うとは……運がいいな。


「どうしよう。私、今日のためにカルボナーラの練習はしてきたんだけど、他の料理はちょっと……。まっきーとこころんは?」

「料理したことないのよね、わたし」

「うちもインスタントとかしか作ったことあらへんよ」

「ど、どうする?とりあえず、なにか作らないとダメだよね?えっと……あるのが、タラとにんじん、玉ねぎ、ブロッコリー、しめじ、バター、調味料かな?」

「よーわからんけど、焼いたら食えるんちゃう?」

「そうだね!とりあえず、焼こっか!」

「待ちなさい。なんでわたしが湾月くんなんかと同じ班になったと思ってるの?」


 なんかってなんだよ!なんかって!


「え!?……よくわかんないけど……」

「湾月くん、あなた料理得意なのよね?お願いね!」

「お願いね!じゃねーだろ。一応、授業なんだからお前らも手伝えよ?」

「え!?湾月くん料理できるの!?」

「できるけど」

「ほんまに?ほな、これなに作る予定の食材やったかわかるん?」

「ホイル焼きだろ」

「「へー」」


 食材のラインナップがまさにだし、わざわざアルミホイルも用意されてるしでほぼ間違いないだろう。


「じゃあ、そのホイル焼きっての作ろっか!」

「ちょっと待て。タラの旬は冬だけど、今は夏だろ?安く済んでいいけど、その分味も落ちやすいから、ダイレクトに味が伝わる蒸し料理じゃなくて、照り焼きにしよう」


 理由はそれっぽいことをテキトーに言っただけだけどな。

 照り焼きにしたい本当の理由は、手間の問題だ。

 ホイル焼きだと具材を切って調味料と一緒に蒸したら、後は待つだけになってしまうからな。ここは手間の多い料理で達成感と共同作業感を与えた方がいいだろう。

 その方が親密度が上がりやすい。


「そうなの?まぁ、それでいっか!じゃあ、湾月くん指示ちょうだいね!」

「了解。じゃあ、タラはまず下ごしらえするから、その間ににんじんと玉ねぎ、あとネギを切って、米も炊いといてくれ!」

「じゃあ、私炊飯器借りてくるね!」


 オレは食材を袋から出すと、手を洗う。

 だがその間、村雨と桜ノ宮はその場から動いてない。

 なにか気に障ることでも言っただろうか……。


「ど、どうした?」

「わたし、包丁を使ったことがないのだけれど」

「うちも包丁使ったことない……」


 まじか……。


「じゃあ、タラの下準備をやってもらおうかな?とりあえず手を洗って、その後タラに塩を振ってくれる?」

「わかったわ」

「炊飯器借りてきたよー」

「じゃあ、米炊いてくれるか?」

「あー……私お米の炊き方わかんないんだけど……」

「うち、米なら炊けるで!」

「そうか、じゃあお願いしていいか?」

「任しとき」

「私はなにすればいい?」

「じゃあ、野菜を一緒に切ろうか」

「切り方教えてくれる?」

「あ──」

「ねえ、塩振り終わったんだけれど、これどうしたらいいのかしら?」

「10分くらい放置で」

「そう、ならこの後わたしはどうしたらいいのかしら?」

「……藍川さんと一緒に野菜の切り方教えるから、見ててもらえる?」


 これ、全部オレが指示しながらやるのか?

 めんどくさがってある程度やってもらおうと思ったけど、これならオレ一人で作った方が楽だったかもしれん……失敗したな。

 桜ノ宮も藍川も全く料理をしてこなかったようで、包丁の持ち方すら危なっかしく教えていてひやひやした。

 彩夜も家庭科で調理実習とかやったりするんだよな……心配になってきた。

 やっぱり、ちょっとは料理教えておいた方がいいんだろうか?

 桜ノ宮も藍川もさすがは一流高校の生徒。飲み込みが早く、教えればすんなりできるようになった。

 2人がにんじんと玉ねぎ、ネギを切ってる間に、オレはなべでブロッコリーを茹で、ボウルの中に調味料を入れタレを作る。

 村雨は……炊飯器と格闘しているみたいだがまぁいいだろう。


「野菜切れたわよ」

「そしたらどうすんの!?」

「タラの水気をキッチンペーパーで拭いたら野菜一緒に焼く。バターしくからちょっと待って。その間にネギだけ別に分けといてもらえる?」

「はーい」


 オレは手早くフライパンにバターをしくと、タラと野菜をフライパンの中へ投入する。


「じゃあ、焦げつかないように見ててもらえる?片面がいい感じに焼けたらひっくり返して同じこと繰り返すだけだから。あと、野菜に火が通ってるなと思ったら、先に上げちゃっていいから」

「わかったわ」

「さてと」


 オレは使った器具をながしへ移動させると、鍋に水と出汁を入れ沸騰させると、ネギとしめじ、余ったにんじんを入れる。


「なにやってるんや?」

「味噌汁作るんだよ」

「ああ、あんた味噌持って来とったもんな」

「米の方はどうだ?」

「完璧やで!」

「そうか。じゃあ村雨、味噌汁あと頼んでいいか?」

「え!?」

「大丈夫、大丈夫。あとはこの味噌溶かして、鍋かき混ぜとくだけだから」

「ほんなら……」


 よし。せっかくだしもう一丁作るか。

 オレは鍋に油を引くと、ネギと生姜を炒め、味噌と調味料を加え弱火で混ぜる。


『いろいろ作るのね?』

「美味しいものが食べたいとご所望だったからな。出来るだけのことはやっとく」

『アタシも鏡夜の料理食べてみたいな……』


 オレがいろいろと仕込んでいる間にタラの方が焼けたらしい。

 桜ノ宮が次の指示を仰いでくる。


「湾月くん、両面いい感じなのだけれど!」

「じゃあ、ボウルに入っているタレと絡めて、照りが出るまで強火で頼む。火傷しないようにな!」

「了解よ」

「いい香りね!なに作ってるの?」

「焼き味噌だよ。桜ノ宮がせっかく米を持ってきたくれたからな。照り焼きの方村雨と代わったのか?」

「うん。こころんが代わってくれるって!だから私は今暇なのです」


 オレはチラリと味噌汁の方を確認する。

 ちゃんと火は止まってるな。


「そうか。それなら、これ焦げないようにあと3分くらいかき混ぜててくれるか?」

「いいよ」


 オレは焼き味噌も藍川に任せると、ながしにある洗い物に着手する。

 こまめにやっとかないと洗い物でながしが埋まっちまうからな。


『ほとんど任せっぱなしじゃない!もっとこう、料理を通して会話とかしないわけ?』

「いいんだよ。どうも初めての料理で余裕がなさそうだし、そんなところに余裕綽々で雑談振ってきたらうっとしくてしょうがないだろ?それに、自分たちで作ったって事実が達成感と美味しさを増していい思い出になるから、それで十分だ」

『ふーん。アタシも料理挑戦してみようかな……』


 しばらくすると、味噌とタレのいい香りが家庭科室に充満し、他の班の連中が鼻を鳴らしたり、こっちの班の様子を覗き込んだりし始める。


「湾月くん、もういいと思うのだけれど」

「そうか、じゃあ火を止めて皿に盛りつけてくれ!藍川さん、焼き味噌を小鉢に移してもらえる?」

「はーい」

「フライパンはどうしたらいいのかしら?」

「洗い物はオレがやっとくから、ごはんと味噌汁をよそっといてもらえるか?」

「わかったわ」


 ふーーー。

 なんとかなったな。

 普段作ってるものに比べたら別に大した料理じゃないんだが……疲れた……。


「これ結構すごいんじゃない!」

「そやな」

「問題は美味しいかどうかよ」

「「確かに……」」


 なんかこの三人、最初の頃と比べて随分仲良くなったな。

 ごはんと味噌汁とタラの照り焼き、それに焼き味噌。

 若干朝食っぽくはあるが、昼食としても申し分ないだろ。

 ミッションの進展は皆無だった気がしなくはないが、そんなもんに気を回してる余裕もなかったし、それ以上に三人が満足そうにしてるし良しとしよう。

 ……あれ?この調理実習を通して仲良くなれてないのオレだけでは!?

また読んでいただきありがとうございます!

『初恋強盗』の51話です!!

今回は完全料理回!!

調理実習だと基本簡単なものだから料理上手な子が一人でパパパッと作っちゃって他の子はやることとないのよね。

みんなで作れば親近感をアップ!

次回は鏡夜の作った焼き味噌でちょっとしたトラブルが!?お楽しみに!


忌憚ない批評・感想いただけると嬉しいです。

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