ネタバレ
『体育祭無事終了ね!』
「そうだな」
『高校の体育祭って初めて見たけど、すごい盛り上がりだったわね!』
「そうだな。小中よりできることが多くなってるからだろうな」
高校の体育祭を通じてわかったことは自由度が高く、その分準備が大変。
そして、一緒に盛り上がれる仲間がいないと楽しさが半減どころではないということだ。
やはり、楽しい学生生活を送るためにはコミュニケーション能力が大切!……頑張って友達増やそ……。
『で?攻略なんにも進んでないけどどうすんの?』
「しょうがねーだろ。体育祭中、雷歌先輩はずっと動き回ってて忙しそうだし、チームもバラバラだし。それに、オレはオレで競技やら手伝いやら一応あったからな」
『まあね……』
「よし!片づけやるか!これが終われば、更衣室でやらかしたペナルティーから解放だ」
同時に雷歌先輩との接点も大幅に消えることになるが、引き伸ばす方法がないしな。
体育祭が終わり、先ほどまでの活気がうそのように閑散とした校庭の中央に体育祭実行委員が集まっている。
「皆のおかげで無事体育祭を行うことができた!ありがとう!
今から体育祭実行委員、最後の仕事である後片付けをします!
楽しかった思い出が霞まないよう、ケガに気を付けて行いましょう!」
「「はい!!」」
この片付けがめちゃくちゃ大変だった。
テントや放送機材などの片付けはもちろん、白線を消すのも地味に重労働だ。
極めつけは、道具の清掃。どれも泥だらけになっており、なぜか一つ一つ手洗いをしないといけない。
業者に頼めばいいものを……。
あっという間に日が暮れ、辺りはすっかり暗くなる。
明日が休みだかなんだか知らないが、普通こんな時間まで学生を残らせるかね?先生たちだって早く帰りたいだろうし……。
片付けが終わった頃には、普段実行委員が終わり帰る時間よりも遅い。
「しんどい……。体育祭よりも汗かいてんだけど……」
『鏡夜って真面目よね。途中で抜けてもなにも言われないだろうに』
誰かさんのせいで、ロクでもないことしてるからな。こういうところで徳を積んどかないと人間性が崩壊しそうなんだよ。
片付けが終わった体育祭実行委員は着替えて、会議室に集まることになっている。
オレはとっとと着替えて会議室へと向かう。
まだ、誰も来てないな……。
「鏡夜ー!」
「雷歌先輩、お疲れ様です」
「疲れたよー。労わって!」
「ええー」
オレも疲れてるんだけどな……。
ただ今までの傾向的に、雷歌先輩は甘やかすのが吉。
「どうすりゃいいですか?難易度低いのでお願いしますよ」
「膝枕で頭撫でて!」
「男の膝枕は気持ちよくないと思うんですが……」
「いいから、いいから!」
そう言いながら、雷歌先輩はオレの膝の上に頭を乗せる。
頭を撫でてあげると嬉しそうにしている。
ネコみたいだな。
「鏡夜、手握りたい」
「へいへい」
オレが手を出すと、雷歌先輩は頭を撫でられながら満足そうにオレの手をにぎにぎする。
「男の人の手って感じ」
「男ですからね」
「……ありがと。鏡夜以外の人の前ではシャッキっとするから」
「……」
そうしてるうちに、会議室の外から話し声が近づいてくる。
「雷歌先輩、立ってください」
「ええー、もうちょっと」
「他の人の前ではシャッキっとするんでしょ?」
「わかったわよ」
雷歌先輩が離れたところでゾロゾロと他の人が入ってくる。
雷歌先輩がオレの隣に座っていると、風歌先輩が近づいてきた。
「雷歌ちゃん、ちょっと来て」
「なによ?」
「いいから」
「鏡夜、後でね!」
雷歌先輩は風歌先輩に呼び出され、入り口近くの前の方の席に並んで座った。
「お疲れ様でしたー!」
「「お疲れ様でしたー!!」」
会議室では締めの挨拶が始まる。
みな一様に達成感に満ちたよい表情をしている。
『鏡夜、阿雲姉妹がいない!』
オレはトーカの報告を受け素早く確認する。
さっきまで会議室にいたよな……!?
オレは音を立てて席から立つと、ドアの方へ歩く。
周囲の視線なんて今はどうでもいい。
それより、攻略の方がはるかに重要だ。
「わ、湾月くん?」
「すんません。帰ります!」
オレはそれだけ言うと会議室を飛び出す。
「トーカ、二人の教室を頼む!」
『了解!』
考えろ!
連れ出したのは間違いなく風歌先輩だ。
そして、全員が参加する締めの挨拶のタイミングでいなくなったということは、誰にも見つかりたくないということ。
つまり、誰にも見つからないだろうと風歌先輩が選ぶ場所。
どこだ?
屋上!
屋上へと走りだそうとした時、オレの脳内にある場所が浮かぶ。
校舎の陰にある花壇!
応援合戦前に緊張から風歌先輩が逃げ込んだ場所、あそこだ!
オレは花壇へと走る。
ビンゴ!
花壇の方から阿雲姉妹の声が聞こえる。
「で、なんの用なのよ?こんなところまで連れてきて」
今始まったところか?
トーカがすぐに気付いてくれて助かったな!
オレは見つからないように掃除用具の陰に隠れ、聞き耳を立てる。
「なんで、なんで雷歌ちゃんは毎回私の好きな人を奪おうとするの?」
「は?なに、そんなこと?今更じゃない?」
「いいから答えて!」
「だって風歌見る目あるんだもん」
「え!?どういうこと?」
「どういうことって、風歌ってさ、直感的に優しい人がわかるでしょ?んで好きになる。それ、私には無理。だからさ、風歌が選んだ人なら間違いないな~って」
「じゃあ、なんですぐに別れたりするの?私から奪ったのに。長続きするって言うなら……それでも嫌だけど、私に魅力がなかったんだって納得できる……」
「だって、思ったのと違うんだもん。風歌は優しく甘やかしてたくせに、私には甘えようとしたり意味わかんなくない?」
「だったら私が好きになった人を奪っても長続きしないってわかってるでしょ!もう止めてよ!!」
風歌先輩の心からの悲痛な叫びが夜闇にこだまする。
しかし、雷歌先輩は動揺した様子一つなく返答した。
「いやいや、いつか当たりを引くかもしんないじゃん!私が無作為に選ぶより、風歌が選んだ人の方が効率いいし。それに、鏡夜はことはいいかな~とか思ってるし」
「いいかな?……じゃあ、別に鏡夜くんのこと完全に好きってわけじゃないんだね?」
「え!?」
「だってそうでしょ?雷歌ちゃんは私が好きな人にアタックしてるだけなんでしょ?ってことは鏡夜くんだって本当は好きじゃないんじゃないの!?」
「……いや、鏡夜のことは…好きだし……」
「は!?なんで!?さっき好きじゃないけど奪ってるって言ったじゃん!!」
「それは……そうだけど……鏡夜は……」
「じゃあ、はっきり教えてあげる。私は雷歌ちゃんが奪いに来ると思ったら、学校一の不良の鏡夜くんに近づいたの!そしたら、いつも通り雷歌ちゃんは奪いに来た!雷歌ちゃんはなにも変わってない!だから、今回の鏡夜くんが好きって気持ちも雷歌ちゃんの錯覚だよ!」
え!?ここでネタバレ!?
どういうことだ!?
「錯覚なんかじゃ──!!」
ガッシャン!
やっべ!
動揺したオレは側に立てかけてあった掃除用具にぶつかり、倒してしまう。
「だれ!?」
こちらを見た阿雲姉妹とオレの目が合う。
「あっ、すまん!邪魔したな!」
「ちょッ!?」
オレはその場から大慌てで走り去る。
『ねえ、二人は見つかったの!?』
「トーカ!?校舎の陰にある花壇のところに二人いるはずだ!えっと、阿雲雷歌の方を監視して、なにかあったら報せてくれ!」
『はあ!?鏡夜はどうすんの!?』
「予想外のことが起こったから一度冷静になりたい!」
『わかったわ!信じてるからね!』
図書室はもう締まってるよな……。
オレは冷静になるために一年三組の自分の教室へと戻ってきていた。
はあ~、咄嗟のことで思考が纏まらずに逃げてしまった……ここからどうっすか……。
また読んでいただきありがとうございます!
『初恋強盗』の44話です!!
今回は阿雲風歌によるネタバレ回!!
自分の行動をぶちまけた風歌先輩の心境は?
そして、それを聞かされた雷歌先輩の心境は?
次回は雷歌先輩との決着回!!お楽しみに!
忌憚ない批評・感想いただけると嬉しいです。




