桜ノ宮とのお昼
まだ、日も昇りきっていない時間からオレは弁当の仕込みをする。
全ては腕によりをかけた最高の弁当で、彩夜の思い出に花を添えるため。
そう、今日は体育祭である、オレの!!
彩夜の体育祭では考えなしの行動により迷惑をかけ、彩夜の気分を害してしまったからな!今回はなんとしても汚名を晴らさなければならない。
『また一段と気合が入ってるわね!』
「彩夜に食べてもらうのだからな、当然だ。
それに、彩夜の友達である楓の奴も来るからな。彩夜の兄であるオレが無様な弁当を提供したとあっては、彩夜に対する印象も下がりかねん!」
『いや、友達のお兄ちゃんの料理が下手だからって印象悪くなったりしないでしょ……。
それにしても、あんたが体育祭に誘った時はすごい嫌そうな顔してたのに、よく来てくれることになったわね』
「まぁ、彩夜に来てもらうために楓を体育祭に誘ったからな」
『うわぁ……』
オレは弁当と彩夜の朝食を用意すると、学校へと出発する。
『彩夜ちゃん起こさなくていいの?』
「楓が遊びに来るって言ってたし大丈夫。
それに日曜日だからな、いっぱい寝かせてやりたい。寝る子は育つだ。中一とは言え、彩夜は身体がまだまだ薄いからな、もうちょっと成長した方がいいだろ」
『……。それ彩夜ちゃんも前で絶対言わない方がいいわよ。二度と口きいてもらえなくなるから』
「わーってるよ」
ボッチの体育祭とはかくも暇なものなのだろうか?
すでに午前の種目が終わろうとしているのというのに、トーカ以外と会話した記憶がない。
オレが話せそうな奴はみんな紅組だしな~、待機時間にやることがない。
オレみたいな奴が座りながら永遠にスマホたぷたぷしてるから、オレもゲームやろうかな~とも思ったりしたが、コミュニケーションを放棄したような行動はプライドががが……。
『なに悶絶してんの?そんな姿彩夜ちゃんに見られたら、幻滅されるわよ?』
そうだ!そろそろ昼休憩か!?
彩夜はすでに来てるのだろうか?
オレは彩夜に連絡を取るために席を離れる。
決して、居心地が悪いからじゃないからな!?
「もしもし彩夜?そろそろ昼休憩なんだけど、もう来てる?」
「まだだけど?早く行っても見てるだけで暇だし、3時くらいにちょっとだけ顔出す」
「え!?お昼はどうするの?」
「今日ね、楓とケーキバイキング行くんだー!いいでしょ!」
「……そ、そっか……楽しんできてね……」
「うん!」
ツーツーツー
……そうか。
そうだよな……当事者であるオレが死ぬほど暇してんだもん!そら、見てるだけの彩夜は暇に決まってんだから乗り気なはずねーよな!
うん!彩夜の嬉しそうな声が聞けたし良しとしよう!
ケーキバイキングは結構テンションが上がると……メモしておこう!
『鏡夜ー!昼休憩になったわよ!彩夜ちゃんどこにいるって?』
「……3時くらいに来るって」
『じゃあ、お弁当どうすん……ねえ、あれって桜ノ宮さんじゃない!?』
トーカの指さす方へと目をやると、たしかに桜ノ宮真姫が一人で校舎の中へと入っていくのが見える。
『なんか元気なさそうね。体調でも悪いのかしら?』
一人で静かに校舎に入っていく姿はたしかに気落ちしているように見える。
熱中症だろうか?
「とりあえず、追うぞ」
『了解!』
オレは桜ノ宮をバレないように尾行する。
ほとんどの生徒が校庭で弁当を広げたり、近くの店に食べに行ったりしており、校舎内には生徒がほとんどいない。教室が消灯されておりいつもより廊下も暗く、校庭とは対照的に閑寂である。
なんか人目のないところを探して、ウロウロしてる感じだな。
桜ノ宮は踊り場や空き教室など人の通りが少なそうな場所で足を止めては、なにかと葛藤している。そして、時たま誰かとすれ違いそうになると慌てて身を隠している。
『なにやってるのかしら?』
「さあな?」
そうしてるうちに、桜ノ宮は結局自分のクラスである一年三組に入っていった。
オレはドアの隙間から教室内の様子を確認しようとする。
『ちょっと!着替えだったらどうすんの!?アタシが見てくるから待ってて!!』
あの様子で着替えなわけねーだろ……まぁ、一応待つけど。
ちょっとして様子を見に行ったトーカが戻ってくる。
「どうだった?」
『なんか教室から校庭を見ながらため息ついてたわ』
昼休憩に一人で教室でため息。
しかも誰にも見つからなさそうかつ、自分がいても不自然じゃない場所を探していたとなるとこりゃもう一択だろ。
「ボッチだな」
オレは目を閉じ一呼吸置くと、教室の扉を開ける。
扉の開いた音に驚き、焦った様子で桜ノ宮がこちらに振り返る。
「あれ?桜ノ宮さんどうしたの?」
「外は暑いから少し休憩しているだけよ。あなたこそどうしたのかしら?」
やはりな!
標準的ボッチであれば、オレのような奴が教室に入ってきたら思考は逃げの一手だろう。
しかし、桜ノ宮はプライドが高い人種だ。予想通り、そそくさと逃げることなく堂々とした態度で居座ってきた。
こう言うプライド高めのタイプに対しては、僕のように下手に出るか対等な関係を築くかの二択だ。とりあえず、お仲間であることを強調しつつ、安牌であろう下手から入るか。
「いや~、実は妹が来る予定だったんだけど来れなくなっちゃって、みんながワイワイと昼食を囲んでいる中、オレだけ一人寂しくでかい弁当を食べるのはいたたまれないから逃げてきたんだよね」
「そう……」
「桜ノ宮さん、お昼は?」
「え!?あ、その~……いつもはお手伝いさんが作ってくださるんですが、今日は日曜日でしたので……」
お手伝いさんってなに!?
金持ちだとは知っていたけど、想像以上にとんでもないのか!?
「もしかして、お昼ないの?」
「……」
「じゃあさ!もしよかったら、一緒に食べない?妹とその友達が来るって聞いてたから結構作ったんだけど、このままじゃ余っちゃうし」
「別にわたくしは一食くらい抜いてもなんの問題もありませんわ!」
「いいから、いいから!運動するんだしちゃんと食べないと体力持たないよ!」
オレはそう言いながら、机の上に重箱を広げる。
そして、詞の椅子を引くと桜ノ宮をエスコートする。
「座って!座って!」
「……。でしたらちょっとだけ……」
桜ノ宮はオレから箸を受け取ったものの、まだ遠慮している。
すると、桜ノ宮のお腹がキュゥーっとかわいく鳴く。
桜ノ宮は首まで紅潮させ俯く。
ふーーー。気付かない振り、気付かない振り。
「好きに食べていいよ。捨てるの勿体ないし」
「で、では、遠慮なく!」
腹の虫により吹っ切れたのか桜ノ宮が弁当を口へと運ぶ。
そして、即座に動きが止まる。
「……おいしい。ねぇ、これをお作りになったのってあなたのお母さま?お父さま?」
「いや、オレだけど?」
「うそ!?これをあなたが!?お手伝いさんよりおいしい……。こちらもいただいても?」
「どうぞどうぞ!」
気に入ってくれたのだろうか?
桜ノ宮は次々に口に運ぶ。
それにしてもよく食うな……二人前以上はペロリだ。
オレが桜ノ宮の食べる姿を眺めていると、夢中で食べていた桜ノ宮もオレが見ていることに気付き再び顔を紅潮させる。
「そ、その、これはあなたの料理がおいしいかったから、ちょっと食べ過ぎただけで……普段はこんなに食べないのよ!」
「ありがと!いっぱい食べてくれるのは作った身からすると、すごく嬉しいよ。それとおいしそうに食べる桜ノ宮さん素敵だと思うよ!」
「ですが、男性からすると大食いの女性ははしたなく映るものでは?」
「そんなことないんじゃない?少なくともオレはそうは思わないし。そう言えば、桜ノ宮さんって運動好きなの?」
「いえ、特に好きというわけではないですが。なぜですの?」
「食べるの好きなのにスタイルいいからさ、日頃から結構運動してるのかなって?でも運動好きじゃないってことは日頃から努力してんだな!」
「なッ!?ごちそうさまです!おいしかったですわ!お昼休憩も終わりますし、これで!!」
桜ノ宮は急に立ち上がると、教室から出て行ってしまった。
『あーあ。いい雰囲気だと思ったのに……。鏡夜ってさ、たまにデリカシー足りない時あるよね……」
え!?なに!?
オレが怒らせたってこと!?
不快になること言ってないよな……?
また読んでいただきありがとうございます!
『初恋強盗』の42話です!!
今回は体育祭&桜ノ宮真姫とのお昼回!!
彩夜はお昼には来てくれませんでした;;
その代わり、桜ノ宮とお昼をすることに!!
次回は体育祭後編!!そして、雷歌先輩の攻略もいよいよ大詰め!!お楽しみに!
忌憚ない批評・感想いただけると嬉しいです。




