体育祭リハーサル
翌日も体育祭実行委員は応援合戦の練習であった。
と言うかここからほぼ一週間、実行委員の活動のメインは応援合戦の練習だそうだ。
オレ必要ないだろ?
そう思いつつも、オレはさまざまな角度からカメラを回す。
「じゃあ、今日はここまで!明日は体育祭のリハーサルを行うので、休みで申し訳ないが、8時集合でお願いします!以上!!お疲れ様でした!!」
「「お疲れ様でした!!」」
明日も学校にくんのか……めんどくさい。
「鏡夜くん……」
「ああ、了解です。どこでやります?」
「外の体育館とか?」
「外の体育館は瀬流津さんが使ってると思いますけど……」
「え!?そうなんだ……どうしよ……」
この会議室だと遅くまで残ってる奴がいそうだし、こういう練習は人目を避けてやりたいだろうし……。
「屋上とか?この時間なら人も少ないでしょうし」
「じゃあ、屋上にしよっか」
職員室で屋上の鍵を借りると、オレたちは屋上で練習を開始する。
「じゃあ、オレが団長の位置に立つんで、それを目印に踊ってみてください!」
「わかった」
「いきますよー!」
オレは手を叩いて、太鼓のタイミングを再現しながら、風歌先輩の動きを指摘していく。
風歌先輩は非常に真面目だ。
オレとの練習であれば別にある程度手を抜いてもいいものだ。
しかし、風歌先輩は真剣な表情で真摯に取り組んでいる。
『鏡夜、サクサクと指摘してるけど、もう動き覚えたの!?』
「赤点だらけだったから勘違いしてるかもしれなーけど、オレそんなに頭悪くねーからな!目の前で何度も見てれば覚えるわ」
『それにしても風歌先輩は動きが悪いわね。鏡夜が覚えられるんなら覚えてないってことはないでしょうし、自信がないのかしら?』
こいつ……。
まぁでも、自信がないのはほんとかもな。
「風歌先輩、動きが硬いです!」
「そうだよね。ごめんね、全然上手くいかなくて……」
「風歌先輩、オレに対して間違えたら恥ずかしいとかかっこ悪いとか思って遠慮してますよね?」
「えっと、そんなことは……」
しょうがない。
「こっち来てください!」
「え?」
「こっち来て」
「わかった」
風歌先輩が近づいてきたところで、オレは風歌先輩に手を差し出す。
「手握ってください」
「え!?」
「ん」
風歌先輩は遠慮気味に恐る恐る掴もうとする。
「風歌先輩、今遠慮してますよね?」
「え!?」
「動きが硬くなってます」
「だって……」
オレはパッと風歌先輩の手を取る。
「ふぇ!?」
「友達なんですから、これくらい遠慮なくていいです!オレ嫌がったりしないんで!」
「……」
「緊張してます?」
「だって、だって!男の子と手繋いだことなくて!」
「え?あっ、すんません……」
「謝らないで!」
「すんません」
オレはそろ~っと手を離す。
「と、とにかくですね!風歌先輩はオレに遠慮があるから、間違いたくないとか、いい姿を見せなきゃとか思うんすよ!
別にオレにしょうもない姿見せたところで大したことないんですから!
もっと肩の力抜いて気楽にやりましょ?
もちろんバカにしたり、笑ったりもしませんから!」
「わ、わかった!」
風歌先輩は両手をギュッと握り、一つ気合いを入れると再び練習に戻る。
『雷歌先輩攻略のために風歌先輩も堕としに行くのよね?あんなに友達を強調してよかったの?』
「問題ない」
『なんで?』
「恋愛ゲームの中でも名作と呼ばれている『Dear My ~』がオレに教えてくれたからな。
このゲームは「ずっと三人仲良しでいようね!」と約束した男一人女二人の幼なじみが、徐々に互いに惹かれ合いつつも仲良しの誓いを裏切るまいと葛藤する、素晴らしいストーリーなのだが、その仲のセリフで「男女の友情は成立しない!」と言う名言があるんだ。
と言うことで、男女の友情は成立しないからいくら友達うんぬん言っても大丈夫だ」
『またゲーム……』
遠慮しないようとアドバイスしたが、風歌先輩の動きの固さはそう簡単に改善されない。
『全然ダメじゃない!』
「そうだな」
これはもうちょい荒治療の方がよさそうだな。
「風歌先輩、全然固いです」
「ごめん」
「うーん。たぶん風歌先輩とオレあんまり仲良くないんですね」
「え!?」
「仲良かったらこんなに遠慮されないですもん」
オレは仲良い人にも遠慮しまくりだけどね。
「と言うことで、オレともっと仲良くなりましょう!」
「ど、どうやって」
「まずははい!」
オレは再び手を差し出す。
「握って!」
オレに言われ風歌先輩は目をつぶりながら両手でキュッと握る。
「そんな必死に握ってどうすんすか!もっと気楽に!もう一回!」
この行為を何度か繰り返し、今日は解散となった。
翌日、学校は休みであるが、オレは体育祭のリハーサルのために登校である。
高校生になってからは初めての休日登校だな。
「おはよー、鏡夜くん」
「風歌先輩!おはようございます」
そう言いながら、スッと出したオレの手を風歌先輩は迷いなく握る。
「おお!」
「むふー」
いや、この程度でドヤ顔されても。
これ応援合戦のための下準備ですからね?
「おはよー鏡夜!」
「おはようございます。雷歌先輩」
「ちゃんと来てるじゃん!偉い偉い!」
「どうも」
「今日もよろしくね!ほら、風歌行くよ!」
リハーサルは紅組と白組に分かれ、競技と準備を交互に行う。
そして、基本オレは競技には参加しない。
じゃあ、なにをするのかと言うと人手が足りない時の助っ人や給水係である。
『……暇ね』
「……そうだな」
にしても、体育祭って走る競技多いな。まぁ、小物が必要ないから楽なんだろうけど。
オレがボーっとリハーサルを眺めていると、競技をしていた風歌先輩の体が大きく揺らぎ派手に転ぶ。
「「うわっ!」」
みんなが驚いてる中、オレは真っ先に駆け寄っていた。
「大丈夫ですか!?」
「うん。ちょっとふらっとして……ッ!?」
風歌先輩の足には擦り傷ができている。
派手に転んだもんな。
オレは風歌先輩を仰向けにすると抱きかかえる。
「ふえッ!?」
「暴れないでください。保健室連れてきますから」
「で、でも……」
「大人しくする!」
「はい…………ごめんね」
「この時期の脱水症状は気付きにくいそうですから、しょうがないですよ」
オレは風歌先輩を保健室に連れて行くと、飲み物を手渡し、傷の手当てをする。
「慣れてるんだね?」
「何がです?」
「……手当とか」
「妹がいますからね。こういうのは昔から自然とやってきたんですよ」
「鏡夜くんってお兄ちゃんなんだ。……ねえ?妹さんってかわいい?」
「そりゃもちろん。目に入れても痛くないですね」
「そっか……。なんかお兄ちゃんと言うよりお父さんみたいだね」
「かもしれないですね」
保健室から戻ると、リハーサルは終了し後片付けが始まっていた。
「鏡夜—!どこ行ってたの?」
「保健室に」
「ああ、風歌転んだんだっけ?大丈夫なの、風歌?」
「うん」
「じゃあ、片づけ手伝って!」
みんな忙しそうだな……対してオレは今日なんにもしてないな。
やったことと言えば序盤の水の用意と風歌先輩の手当くらいだ。
帰り際、オレは風歌先輩に呼び止められる。
「きょ、鏡夜くん……もしよかったら、明日練習に……」
「なに、練習って!?どういうこと!?」
「えっと……応援合戦の練習に付き合ってもらってて……」
「え、ずるい!?じゃあ、私も!?」
「雷歌先輩は紅組じゃないですか。それと、明日は妹の体育祭なんですんません」
「そっか……それじゃあ仕方ないね……」
「じゃあね、鏡夜!」
「お疲れ様です!」
オレは明日のため走って帰る。
また読んでいただきありがとうございます!
『初恋強盗』の32話です!!
今回は体育祭のリハーサル回!!
風歌先輩との距離がみるみる近づいていく。
ただ、攻略対象は雷歌先輩。さあどうなる!?
次回は妹の体育祭回!!彩夜の友達も登場!お楽しみに!
忌憚ない批評・感想いただけると嬉しいです。




