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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

TSゲーム転生 ―寸胴眼鏡ロリ高校生がナビ能力で主人公くんをナビゲート―

作者: 稲光結音

 前世の事なんてもうほとんど覚えていない。

 いやそんなもの覚えてる事自体が夢物語のようなもの。

 私は現実に生きているのだ。

 この貧相な寸胴体型は今日から高校一年生だというのに相変わらず。

 目つきの悪さを隠しきれていない眼鏡にぼさぼさ頭。

 そんな少女に転生したという現実と戦っている。性格も男っぽさが消えていない。

 そう、私は男から女へと転生して今日まで生きてきた。

 だからといって、特別な事は何もない。普通に育って普通に学校に通って、普通に友達と遊んできた。

 小学生の頃は男友達と馬鹿やって遊んでたけど、中学生になると男子と衝突する事が増えた。すぐ足が出ると評判の私は、気に入らない相手にローキックをかます系女子へと進化したのだ。

 それでまあ、近いからという理由で近所の高校に進学したけど、その後はきっと普通に大人になっていくのだろう。転生の事はさらに記憶から消えていくと思う。


 ……そう思っていた。


「よろしく」


 入学式も終わり、一年A組のクラスで隣の席の男子に声をかけられて、そちらを向いて思い出してしまったのだ。

 この男は、『ミラージュ3』というゲームの主人公だ、という事に。

 そして私はモブ。この世界の最初のイベントで死ぬだけのキャラだ。


「おー、よろしく。なんなら男友達だと思って気軽に話しかけてよ」


 しかし、私は焦らない。死亡しないための条件のチャンスも思い出しているからだ。

 一個記憶が浮かび上がった事で連鎖的に記憶が蘇っている。


「私は穂村舞。君は?」


 確かここで名前の選択するシーンに移行するはずだ。どこまでゲーム知識が通じるか分からないが、大本は変わらないだろう。


「……阿賀智八城」

「そっか。そうそう阿賀智くん。学園裏サイトって知ってる?」


 この話が大事なのだ。というかこのキャラはこの話をさせて、最後には死亡するためだけにいる。


「裏サイトって……初日だよ」

「まあね。でも、結構見つけるの難しいらしいんだ。何か分かったら教えてよ」


 確かこれで、話は終了。じゃああとは裏サイトに行けば死亡フラグを阻止できる可能性が……


「一緒に探そう」


 しかし彼は、選択肢には無かったはずのセリフを吐いた。

 これは……私が本来の穂村舞じゃなくなった事で世界が変わった?

 でも助かる確率を上げるためには主人公と一緒にいてモブ脱却するのはありだろう。


「いいの? ありがと。じゃあ放課後空けといてね。聞き込みしよう」

「君のためだったら夜だって空けるさ。一緒に夜明けのコーヒーを飲もう」

「は?」


 なんだネタ選択肢を選んだのかこいつ。つい半目になって見てしまった。今は着席中だからローキックも放てないしね。

 この選択肢が勇気が必要なセリフだとしたら二週目の可能性はないか? それなら戦闘では楽が出来そうなんだけど。

 まあ知らない選択肢なのでなんとも。

 クラスの女子とトイレにいってちょっとお話なんかもして。入学式の日はあっという間に過ぎていった。

 肝心の放課後がやってきた。


「さて、それじゃ裏サイト探し手伝ってよ。といってもトイレで情報収集は済ませた」

「手際がいいね」

「まあね。とりあえずURLを変えるといいって話は出てた。なんか『これだ!』ってアイディアはある?」


 そう問いかけると彼は沈黙した。思考の海を漂っているのだろう。


「サイトの最初のWWWをMMMに変えるとか」


 正解。

 一発で辿り着くって事は中の人……外の人は攻略サイト見てる可能性があるな。

 まあそんな人がいるのかは知らんけど、ここがゲーム世界なら攻略サイトの存在はありえる話だ。この私、穂村舞が生存するルートを進んでくれてるみたいだし、ありがたいね。


「オーケー、さっそくやってみよう。MMM、と……」


 スマホを使ってこの学園の公式サイトを開き、URLを変更。決定。

 直後、周囲が『何か』に塗りつぶされていく。

 黒と赤の混在する校舎。それが今私達のいる場所だった。

 頭痛。目の前に鏡、映るのは私じゃない。胸の大きな美しく長い髪を持った女性の上半身に、蜘蛛の下半身。

 激しくなる頭痛。こいつの名前を呼んでやらないといけないのだ。

 だがよかった。穂村舞という存在には『適正』があるようだ。


「『アラクネ』、私に力を貸してくれ」


 鏡が割れ、破片が私に突き刺さる。この鏡は私の精神的な何かを表すもので刺さっても怪我はしない。

 そして、これで私は最初に起こる事件の被害者枠から外れた。このもう一人の自分である『ミラージュ』を持っていない人物で、悪目立ちする存在が被害者一号になるのだから。

 あとはどれだけ戦えるか……なのだが。なんと私は戦闘用のスキルを持っていないようだ。

 サポート系が充実している、いわゆるナビ役だったらしい。

 となると、頼れるのは。


「阿賀智くん! なんかやばいのくる!」

「やばいの?」

「こんな場所だしモンスターも出るでしょ! 構えて!」


 教室の扉を開いて現れたのは無数の腕だ。赤く濡れた手が空中をふよふよと浮いている。五本ほどの腕が絡まり合ってこちらに向かってくる


「なるほど……理解した。僕の力。いくよ『クロヌリ』」


 彼がそう名を呼ぶと、一本の刀が姿を現した。その刀で腕の塊を一閃。


「ナイスヒット! 弱点サーチ完了! 火属性! 使える?」

「任せて! ミラージュチェンジ! 『ツノガミ』! 燃えろ! フレド!」


 そう、彼は主人公。

 本来一つしか持てないはずのミラージュを複数使いこなすスペシャリスト。

 ただし、手に入るミラージュはガチャで当てなくちゃいけないというリスク付きだ。


「弱点にヒット! いいね! もう一回行動どうぞ!」

「了解! フレド!」


 弱点で怯んだ相手にはもう一回攻撃するだけの隙が生まれる。

 本来ならその弱点は一回攻撃を入れないと判明しないのだが、私のサポート能力によって弱点は丸裸だ。

 結局、怪我をすることなく無事戦闘は終了した。


「怪我はない?」

「私は大丈夫。そっちこそ怪我は?」

「頭撫でてくれたら治るかも」


 またネタ選択肢を……ちょっと釘刺しとくか。


「この身長差で撫でられるわけないだろ! 喧嘩売ってんのか!」


 彼のスネにローキックを一発。

 彼の身長は175センチくらい。私はまあ……いいじゃないか。とにかく撫でるには無理のある身長差だ。


「よし、帰ろう」

「帰り方分かるの?」

「『アラクネ』が帰還方法を教えてくれた。ネットに繋がったもので、もう一度MMMにしたURLをWWWにすればいいみたいだ」


 という事でスマホを使って現実世界に帰還。

 赤と黒で染まっていない、普通の校舎だ。


「あー、疲れた。付き合ってくれてありがと」

「結局あの場所はなんだったんだろう」

「あー……その辺の説明は今度するよ。それも『アラクネ』が教えてくれた。

 でも今日は帰ろう」


 これは嘘。ゲーム知識を思い出したからそこからのものだ。

 というわけで解散。

 さて、家でごろごろしながらゲーム知識を思い返してみる。

 まず穂村舞という人物は死んでたはずの人間だ。私達が入り込んだウラセカイで開かれる『学級会』、ここで異世界の住人達の槍玉にあげられた人物が死ぬ。

 しかし期限以内に『学級崩壊』させる事によってそれを防ぐことができる。

 または『ミラージュ』に覚醒する、のどちらかだ。

 覚醒した場合、学級会は止まらないので別の人物がターゲットになってしまう。

 さてどうやって学級崩壊させるか。すごく単純であの世界に存在する魔物の大物、『先生』を倒せばいい。

 その為に必要なもの……。


「戦力だな」


 確か数人、ウラセカイに適応し、『ミラージュ』にも覚醒してる先輩キャラがいたはずだ。その人達とコンタクトを取ってみよう。

 せっかく私が生き延びれたのだ。このまま死者を出さずにハッピーエンドと行きたいものだ。






―プレイヤーサイド―






 はいどうもー、三度のメシよりガチャが好き。ガチャシロウです。

 いやー、ソシャゲに課金しすぎて本当にご飯食べられなくなっててやばいですよ。

 そこで今回は買い切りゲームでガチャしていきたいと思います。


『どんだけガチャしてるの』

『ご飯はちゃんと食べてもろて』

『ねぇ知ってる? 健康あってのゲームなんだよ?』


 まあまあ、今回は「ミラージュ3」やっていきます。

 なんかガチャがすごいとかで。


『凄いぞ』

『救済処置がやべー助かる』

『神様仏様舞様』


 楽しみだなあ! という事で起動!

 スタート、モードはノーマルで、と。

 お、いきなり入学式。が、さっと終わって教室に移動、と。

 近くにいる人に話かけられるのか。えーと前の席の男子、後ろの席の男子。左の席の女子、右の席の女子、ね。

 誰がいいだろ?


『舞様一択』

『右の席の子』

『右しかない』

『悪い事言わないから右の子にしとき』


 なんだ右の子人気だなー。じゃあ素直に右の子で。


「よろしく」

「おー、よろしく。なんなら男友達だと思って気軽に話しかけてよ」


 あれ、なんかみんなが推すほどの人気キャラなのこの子? ぼさ髪眼鏡のロリっ子よ?


『それがいい』

『性能見てもう一度それが言えたらいいね』

『ガチャ殺すウーマンだぞ』


「私は穂村舞。君は?」


 お、名前入力画面。あ、がちゃしろ……あがちゃしろ。

 阿賀智八城で。


『草』

『根っからのガチャ好きだよお前は』

『まあキャラ的にも正しい』


「……阿賀智八城」

「そっか。そうそう阿賀智くん。学園裏サイトって知ってる?」


 三択か。知らない、初日だよ、興味無い。


 なんかこの娘に興味持っといた方がよさそうだなあ。じゃあ。


「裏サイトって……初日だよ」

「まあね。でも、結構見つけるの難しいらしいんだ。何か分かったら教えてよ」


 一緒に探そう、任せて、教えない。お、これ一番上いいんじゃないの。


「一緒に探そう」

「いいの? ありがと。じゃあ放課後空けといてね。聞き込みしよう」


 また選択肢。そろそろふざけたい欲が勝ってきました。セクハラしよう。


「君のためだったら夜だって空けるさ。一緒に夜明けのコーヒーを飲もう」

「は?」


 お、ギャグテイストの半目かわいいな。

 ああ、こっから放課後までカットか。


「さて、それじゃ裏サイト探し手伝ってよ。といってもトイレで情報収集は済ませた」

「手際がいいね」

「まあね。とりあえずURLを変えるといいって話は出てた。なんか『これだ!』ってアイディアはある?」


 これは分からんなー。

 コメント見ます。

 あー、MMM多いな。これにしよう。


「サイトの最初のWWWをMMMに変えるとか」

「オーケー、さっそくやってみよう。MMM、と……」


 うわ! なんだなんだ! 赤と黒のペンキみたいなのが周囲を塗りたくってる! 気持ち悪!

 あ! 俺と舞ちゃん? だっけ? がなんかうずくまってる!


 頭痛がする? この状況で? なんかやばいんじゃないの?

 鏡? の中に刀? お、手ぇ突っ込んだ! 鏡の破片やば! うわ破片が体の中に吸収されとる!


「私はミラージュ、クロヌリ。今後ともよろしく……」


 え? え? 全然分からん。

 あ、説明入った。この世界で戦うための力。本来なら一つしか持てない力を、主人公はガチャを引く事で複数種類もつことができます?

 なるほどね! そりゃ嬉しいわ!


「阿賀智くん! なんかやばいのくる!」


 舞ちゃん焦っとる。というか彼女もなんか頭抑えてたけど頭痛大丈夫になったんかね。彼女もミラージュ覚醒したんかな? とりあえず選択肢はのんきな感じで。


「やばいの?」

「こんな場所だしモンスターも出るでしょ! 構えて!」


 怒られちゃった。おー、なんか敵出てきた。

 画面変わった。え? ガチャ? このタイミングで? 一回だけね。了解。


『このタイミングのガチャはツノガミで確定なので面白くないよ』


 あー、本当だ。でもまあとりあえず分かったわ。


「なるほど……理解した。僕の力。いくよ『クロヌリ』」

「ナイスヒット! 弱点サーチ完了! 火属性! 使える?」


 お、ツノガミに変えろって。炎属性使えるんだろうな。というかこの子ナビゲーション担当か。声かわいいなー


「任せて! ミラージュチェンジ! 『ツノガミ』! 燃えろ! フレド!」


 フレドが炎ね、はいはい。


『フレド、フレドア、フレドリア、フレドアリアまであるよ』

『全体はフレドール、フレドアール、フレドリアール、フレドアリアール』


 待て待て、全部覚えるのは難しいって!


「弱点にヒット! いいね! もう一回行動どうぞ!」


 お、行動もう一回、回ってきた。


「了解! フレド!」


 オッケー弱点だからダメージも大きいし倒せたわー

 でも魔法を使う為のポイント、SPの消費激しくなるのは気になるなー


「怪我はない?」

「私は大丈夫。そっちこそ怪我は?」


 ちょっと甘えてみよ。


「頭撫でてくれたら治るかも」

「この身長差で撫でられるわけないだろ! 喧嘩売ってんのか!」


 あ、怒られた! 手厳しいなー。そんなつもりじゃなかったのに。


「よし、帰ろう」

「帰り方分かるの?」


 これで言われてみれば分かんないなーとか言われたらどうしよ。


「『アラクネ』が帰還方法を教えてくれた。ネットに繋がったもので、もう一度MMMにしたURLをWWWにすればいいみたいだ」


 アラクネってのは舞ちゃんのミラージュだよね。説明無かったけど。


「あー、疲れた。付き合ってくれてありがと」

「結局あの場所はなんだったんだろう」

「あー……その辺の説明は今度するよ。それも『アラクネ』が教えてくれた。

 でも今日は帰ろう」


 アラクネは知識とかサポートのミラージュってことなのかねえ。


『それとガチャの確率操作ね』


 ん? 今見逃せないコメントあったぞ?


『舞様は好感度マックスにしてSP全部消費する事で主人公のガチャSSR確率を100%にしてくれる』


 は?


『一日探索できない代わりに強力なミラージュゲットできるから楽しいんだこれが』

『好感度MAX消費SP50%だと50%の確率でSSR出してくれる。運に自信があって探索もいきたいならこれ』


 つよ……人権じゃん。


『だから一日でも早く仲良くなっとくのが大事なのよ』


 なるほどー! すごい! つよい! 舞ちゃんこそ相棒だな!

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