表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今夜さよならをします  作者: たろ
第1章
8/109

はち

 学校に着くと周りをキョロキョロとつい見回してしまった。


「学校の雰囲気ってなんだか懐かしいわ」


「久しぶりですものね」


「ええ、学校に来たら来年留学するのが楽しみになってきたわ」


「その前にお勉強頑張らないといけませんね」


「ははは、ほんと久しぶりに必死で勉強しなくっちゃいけないわね」


 ーーシエルとの婚約解消が決まればもう何も悩むことはなくなる。あとは前進あるのみね!


 サマンサと二人で学生が販売している食べ物や手作りの品を見て回った。


 校庭では剣術大会や武術大会が行われていて盛り上がっていた。


 乗馬ができる場所があったり仮装大会があったりとかなりの賑わいで歩くだけで楽しい。


 とりあえず約束の時間になったのでバズールのいる教室へと向かった。

 廊下には何人かの知人が歩いていた。

 ーーあ、一番会いたくない人たちだわ。

 学生の頃何かと絡まれていた男子だった。


「ライナ嬢久しぶりだな」

 ニヤニヤ笑いながら話しかける中等部の時のクラスメイト。


「高等部に進学しなかったくせに何しにきたんだ?」


「噂では婚約者はリーリエ様に夢中らしいぜ」


「相手にされないのなら俺たちが相手をしてあげようか?」


「まっ、なんて失礼な方達なの」


 サマンサは目を見開いてギロっと男子達を睨みあげた。


「うわぁこの人怖え。綺麗な顔してるのにそんなんじゃ男に相手にされないだろう?ライナ嬢と纏めて俺たちが相手にしてあげようか?」


 元クラスメイト達はわたし達の姿を上から下まで舐めるように見てニヤッと笑った。


 そしてわたしの腕を掴んで引き寄せた。


「きゃっ!!」


「おやめください!」

 サマンサはわたしの手を掴んだ男子の腕を捻り上げてそのまま背負い投げをして床に叩き落とした。


「いってぇなぁ」


「おい、おばさん!何するんだ」


「おばさん?」サマンサは怒りのスイッチが入ってしまい他の男子も投げ飛ばした。


「貴方達、もう少し強くなってから向かってきなさい」


 サマンサの勇姿にわたしは絶対彼女を敵に回したくないと心に誓った。


「パチパチパチ」

 拍手が聞こえてきて振り向くとバズールがクククッと笑いながら私たちのところへやってきた。


「遅いから心配して見にきたら、さすがサマンサ。侍女にしておくのはもったいないよね。騎士としても十分素質があるよね」


「バズール様、わたしはライナ様のお側でお世話するのが楽しみなのです」


「君たちは事情を聞きたいので今から警備室へと行ってもらうね」

 バズールは彼らに目を向けるとさっきまで笑っていた顔とは全く違い冷たい眼差しで

「連れて行って」と護衛に伝えた。


「二人ともごめんね嫌な気分にさせてしまって」

 バズールがシュンとして謝ったので


「別にバズールは何もしていないわ。だから謝らないで欲しいの。それよりも暇な時間は作れそうなの?駄目ならわたし達まだ見て回りたいから行くわね」


「もうライナ!お前冷たすぎるぞ。昼休憩が2時間あるから一緒に回ろう」


「いいの?だったら案内役よろしくね」


「俺と回りたいんじゃなくて、案内役にさせたいだけ?」


「え?だってわたしここの学園祭のこと全然知らないのだもの。案内してくれるのでしょう?」



「………わかったよ、案内はするよ」


 何故かバズールは不貞腐れていた。





 ーーーーー


 バズールお勧めの屋台に連れて行ってもらった。


 学生が売っている食べ物だから期待していなかったけどめちゃくちゃ美味しい。


 焼きたてのパンはもちろんクッキーやアイスクリーム、バナナチョコ、牛肉の串焼やパンケーキ屋さんもあった。


「ライナってほんと色気より食い気だね」


「だって美味しいのだもの」


「ふーんじゃあ一口ちょうだい」

 そう言ってわたしが持っていた食べかけの牛肉の串焼をぱくっと半分以上食べた。


「あ、あーーー!!わたしの肉!減ってしまったじゃない!」


「うん、とっても美味かった」


「もう、もう!バカ!」


「ライナ様それくらいのことで怒っては、はしたないですよ」


「………サマンサには敵わないわ」

 小さな声でボソッと言ったのに「ライナ様?」とわたしをギロっと見てきたので仕方なく……


「なんでもないわ」

 と笑顔で返した。

 ーーサマンサ、怖し。


 三人で楽しく歩いていると、向こうからたくさんの男子に囲まれた女の子がやってきた。


「あら?バズール様ぁ?」


 可愛い声でバズールに呼びかけたのは………


 リーリエ様だった。


 わたしの姿は見えていないのか全くの無視!完全にムシ!でバズールに嬉しそうに声をかけてきた。


 周りにいる男子はバズールが生徒会長なので文句も言えず関係ない横にいたわたしを睨んできた。


 ーーバズールの所為で何故わたしが睨まれなくてはいけないのかしら?


 溜息を吐きながらみんなの邪魔にならないようにサマンサと二人で廊下の端っこにぼーっと立っているとリーリエ様は懲りずにバズールを誘っていた。


「バズール様ぁご一緒に回りませんか?」



「いえ結構です」

 リーリエ様を一瞥してさっさと立ち去ろうとするバズールの腕を掴み


「バズール様ぁ、リーリエはあなたをお慕い申しております。是非一緒に回りたいのです」

 瞳をうるうると潤ませて(涙はどこにも出ていないけど)泣きそうになりながらバズールの服を掴んでいるリーリエ様。

 ーー獲物を捕らえた狐?蛇?のように見えるのはわたしだけかしら?



 リーリエ様の周りにいる男子達はバズールに対して「まさか断らないですよね?」と無言の圧をかけている。


 ーーリーリエ様のどこがそんなにいいのかしら?

 わたしはその姿を黙って見ていたけど、よく考えたらバズールが誰と回ろうとわたしにはどうでも良いことに気がついた。


「サマンサ、行こう」

 わたしが廊下の端っこから立ち去ろうとした。


「おい!ライナ置いていくな!すまないけど僕は今彼女達と回っているんで君とは回れない。君はそんなにたくさんの彼氏と一緒なんだから僕は必要ないと思うんだ」


 バズールは優しくリーリエ様に微笑んで、みんなに「じゃあ僕は行くね」と手を振りわたしのところへと駆け寄った。


「ったく、俺を置いていくなよ!勘弁してくれよ」とわたしに悪態をついた。


 ーーハア……後ろからの視線が突き刺さってくる。

 絶対振り向いては駄目。振り向いたらリーリエ様に睨み殺されてしまうわ。


「バズール、貴方ってかなりモテるのね。リーリエ様はもちろんだけど貴方といると色んなところからとても怖い視線が突き刺さってくるのだけど、女子に手を出しまくっているの?」


「そんなわけないだろう?俺って一途なんだから。ずっと失恋しているのに」


「っえ?バズールって好きな人がいるの?知らなかったわ」


「………ったく、知らなくていいんだよ」


 バズールがまた不機嫌になった。

 男心ってよくわからないわ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ