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今夜さよならをします  作者: たろ
第1章
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お花畑のリーリエ様④

 せっかくの楽しい劇もお買い物もライナのせいで楽しくなくなってしまったわ。


 ーーもう!せっかく可愛いドレス買おうと思ったのに!ま、シエルに選んでもらって可愛いドレス買ったけどね。彼の瞳の色に合わせてエメラルドグリーンのドレスにしたの。


 いつかライナの前でシエルと並んで着てやるわ!

 わたしにイヤな思いをさせた意地悪なライナだもの。


 屋敷に帰るとわたしは部屋の中で「くすんくすん」と泣いた。


「どうなさいましたか?」

 わたし付きのメイドが驚いてそばに来た。


「なんでもないの」


「そんなに泣かれているのに……今日外で何かありましたか?」


「ううん、わたしが我慢すればいいの」


 すると護衛騎士の一人も「大丈夫ですか?」と聞いてきた。彼はいつも寂しい時にわたしを慰めてくれる優しくてかっこいい人。シエルの次にお気に入りなの。


「なんでもないの。ただ……昼間お買い物中に……ライナが……」

 そう言って泣いていると



「今日はシエルが護衛でしたよね?」


「……ええ………そうよ」


「………シエルのやつ」小さな声で聞こえないように護衛騎士のマークが呟いた。


 ーーマーク達はわたしがシエルとライナの婚約のこと知らないと思っているもの。


「マークは知ってるわよね?バズール様って言って生徒会長をしている方を。彼がライナと仲良くお買い物していたの……その時バズール様はわたしに冷たくしたの、あれは……ライナのことを気にしていたのよね。二人はとても親しそうにしていたの……」


 目にハンカチを当てて涙を拭きながら…


「わたし………バズール様がわたしに冷たくするのはライナに気を遣ったからだと思ったの。だってライナったらバズール様の隣でわたしのことを冷たい目で睨むのよ………だからバズール様はあんな冷たくわたしに…………思い出すと悲しくなっちゃうわ」


「リーリエ様すぐに何か温かいお飲み物を用意してまいりますので泣かないでください」


 そう言ってメイドが部屋を出て行った。


「……マーク………」

 瞳をうるうるさせて彼の方へそっと両手を差し出すと、マークはわたしを抱きしめて優しく頬にキスをしてくれた。


「リーリエ様泣かないでください。ライナなんかこの屋敷から追い出しましょう。そんな女うちの屋敷にいる資格なんてありません」


 そう言って何度も頬に口にキスをして首筋へとキスが……


「失礼します」メイドの声に急いでマークが離れた。

 わたしはハンカチで涙を拭きながらメイドに


「ありがとう、とっても嬉しいわ。貴女達のおかげで少しだけ気持ちが落ち着いたわ」


 と言って涙を堪えながら微笑んでみせた。


 ーーわたしって昔から涙を流すの得意なの。


 いつでもどこでも涙を流せるのってほんと便利なのよね。


 みんながわたしに優しくしてくれる。これが普通なのよ、バズール様がおかしいのよ!



 ーーーーーー


 次の日の朝の話をメイド達がシエルとライナのことを教えてくれた。



「ライナ、話がある」


「……シエル…どうしたの?」


 ライナが控え室から廊下に出るとシエルが睨んだ。


「何故バズールと一緒に買い物をしていたんだ?」


「え?ドレスを取りに行くのについて来てもらっただけよ?」


「リーリエ様はとても傷ついていたんだ。バズールはなんであんな態度をとったんだ?」


「あんな態度?バズールの態度におかしいところはなかったはずよ」


「リーリエ様が学校で食事を一緒にしてあげると言ったのに断ったじゃないか」


「それはバズールも言ったでしょう?友人でも知人でもない挨拶しただけの関係なのだから、してあげるはないと思うわ」


「リーリエ様に誘われて喜ばない男なんているわけがないだろう」


「……はあ……………いるから断ったのではないのかしら?それにバズールは伯爵家の嫡男よ、別にリーリエ様のご機嫌伺いなんてする必要はないのだからわたしに文句を言うのはおかしいのではないかしら?」


 バチっ!


「…あっ……ライ……ナ………ご、ごめん」


 シエルは自分が手を出したことに慌てていたらしい。


「シエルわたしはあなたにどうして叩かれないといけないのかしら?昨日はわたしとの約束を断ったからバズールに付き合ってもらったの。昨日だけは一緒にいて欲しかった。なのに……」


 控え室から出て来たメイドの仲間達がライナの頬を見て「ライナ?どうしたの?」


「頬を急いで冷やさないと!」


 ライナは半べそになっていて、みんなに声をかけられた。


 その後結局は早退したとメイドが教えてくれた。





 ーーうふふふふふふ!


 シエルはもうライナと上手くいかないわ。


 もうわたしだけのものよ。


 いい気味だわ。


 バズール様とシエルの二人を自分のものようにしていた罰よ。


 次はバズール様をわたしのものにしてみせるわ。


「シエルはわたしのことを庇ってくれたのね。……ライナはわたしのことが嫌いなんだわ。でもライナは頬を叩かれてしまったのよね?大丈夫なのかしら?」


「まあ!ライナはあんな酷いことを言ったのにライナを庇うなんてリーリエ様はなんてお優しいのでしょう」


 ーーふふ、わたしのイメージはこれでまた上がったわ。

 みんながわたしを愛してくれる。


 なんて幸せなのかしら、わたしの世界は愛に包まれているの。



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