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今夜さよならをします  作者: たろ
第1章
18/109

シエル⑦


 俺が避暑地にリーリエ様の護衛としてついて行っている間にライナの社交界デビューの夜会が行われていた。


 エスコートはライナの父親だった。


 ファーストダンスは父親と踊ったらしい。


 その後バズールと3回も続けて踊ったと友人に聞いた時には思いっきり壁を叩くしかなかった。


 ライナとのすれ違いは大きくなるばかりだ。





 ーーーーーー



 何度も手紙を送るが連絡すらなくなったライナ。


 そんなある日リーリエ様が言い出した。


「シエルの男爵家でお茶会があるらしいの。クラスメイトの子達が話していたのよ?

 シエルのところのお茶会はとても人気があると聞いたの。是非行ってみたいわ」


 確かにうちのお茶会は男爵家ではあるが高位貴族の夫人達に喜ばれている。

 母上はとてもセンスがあり庭や屋敷も他家とは違う家具などの調度品を置いている。庭の花も外国から取り寄せて植えているので珍しい花が多い。


 一つ一つの花の植え方もいかに花を綺麗に見せるのかこだわり、その辺の高位貴族には負けない素晴らしい庭だと言われている。

 男の俺にはあまり興味がないが義姉上は嫁に来た時

「こちらの庭でお茶を飲めるのがとても楽しみだった」と言っていた。


 奥様からも「リーリエを連れて行ってもらえないかしら?」と頼まれてしまったら断ることはできない。


「わたしシエルのお母様とお話ししてみたいわ。素敵な方なのでしょう?」

 甘えた声でリーリエ様が俺に頼んでくる。


 周りにいた先輩達も「断るなよ」「リーリエ様の頼みなんだ。聞いてやれ」とまた圧をかけてくる。


「母に聞いてみますのでお待ちください」

 と答えると


「ありがとう、ドレスは何を着ていこうかしら?シエルはどんなドレスが好みなの?」


 ーー俺はリーリエ様が何を着ようとどうでもよかった。


「リーリエ様は可愛らしいので何を着てもお似合いになると思います」


 ーー仕方ないので適当に答えることにした。


「シエルったら可愛いなんて!嬉しいわ」


 ーーこの人の頭はお花畑なのだろうか。




 ーーーーーー


 お茶会の当日俺は息子としてではなくリーリエ様の護衛として我が家のお茶会に参加した。



 遠くにライナの姿が見えた。

 久しぶりのライナ。目が合うかと思ったがこちらを見ようともしない。気が付かないのかわざと無視しているのか。


 すると俺のことは見向きもしないでリーリエ様のところに来た。


「リーリエ様お久しぶりでございます」

 と笑顔を向け挨拶をしていた。


 リーリエ様は「お久しぶりね」とだけ言った。

 ライナのことなど興味すらないようだ。


「……なんでいるの」小さな声でリーリエ様が何か呟いているのが聞こえたが、内容はわからなかった。


 ライナは俺の両親に挨拶をして母上の隣の席に座った。


 リーリエ様はお茶会にあまり参加をしたことがないと言っていた。

 少し作法は苦手なようでお茶の頂き方が汚い。音を立てているしカップを持つ時に小指が立っている。


 いくら病弱でマナーのレッスンが足りていないとはいえ伯爵令嬢のリーリエ様。周りの同級生にクスッと笑われてかなり傷ついている。


 相方の騎士は俺の横でそんな令嬢達に腹を立てているのがわかった。

 リーリエ様を慕っている護衛が多いのでみんな自分の休みすら取りやめてリーリエ様をお護りしている。

 俺もそれに見習い休むことが殆どできなくなっていた。





 チラッとライナを見ると母上の隣に柔かに笑顔で座っていた。


 するとライナのところにリーリエ様がわざわざ行くと言い出した。


 ライナのところへ行くといきなりリーリエ様は………


「ライナはどうしてここにいるの?シエルとはどういう関係?たかが使用人ごときが貴族のお茶会に来るなんて恥ずかしくないの?」


「リーリエ様、わたしとシエルは幼馴染なのです。そしてわたしは元使用人ではありますが、パシェード男爵の娘でもあります」


 ーーえ?幼馴染?婚約者だとは言ってくれないのか?


 俺はずっと無視され続けさらに幼馴染でしかないと言われて無性に腹が立った。


「ふうんそうなの」


 ライナの話を聞いても興味がないのか自分の髪の毛を指でくるくると巻きつけて遊んでいるリーリエ様。


 俺は暫く腹が立ってそんなリーリエ様を黙って見ていた。

 俺はリーリエ様のそばに行くと思わず思ってもいないことを言ってしまった。


「リーリエ様、そんなところに立っていたら疲れるでしょう?母上の隣に是非お座りください」


 ライナの前でリーリエ様に優しくして見せつけてやりたくなった。




 なのにライナは俺の言葉を無視して母上と話をしている。俺のことを無視するのか?


「おば様、今日の紅茶の味は如何でした?」


「ライナのお勧めに間違いはないわ」


 母上までも俺の言葉を耳にしていたのにライナと同じように無視して二人だけで話している。


 二人で話している姿にイライラして我慢できなくなった。


「ライナ、いい加減にしろ。その席をリーリエ様に譲るんだ、そこを退け!」

 ライナの頭の上で俺は怒った。


「ライナ、シエルの言うことを聞いてちょうだい。使用人ごときが座る席ではないわ」

 リーリエ様もうっすらと涙を溜めてライナに諭すように言った。


「シエル、リーリエお嬢様を連れて元の席にお戻りなさい」

 母上が俺に呆れたように言った。

 周りの客は俺とリーリエ様の態度に呆れ果て黙って見ていたのがわかる。

 でも感情的になっていた俺は止めることが出来なかった。


「し、しかし、リーリエ様は母上と話をしてみたいと言っています。是非リーリエ様を隣の席に座らせてください。あの席ではお可哀想です」


 先程のクラスメイトの態度を思い出して言った。


「あの席に何か問題があるのかしら?同じ学校の同じ年頃の方達よ?」

 母上が自分が決めた席に対してどんな不満があるのかと尋ねた。


「リーリエ様はとても繊細なんです。あの子達はとても性格が悪くリーリエ様に対して冷たい態度を取るのです」


「シエルは優しいから見ていられないみたいなのです」

 悲しそうに呟くリーリエ様………


「あの子達は性格が悪く冷たい態度を取る?そう……皆様のお子様のことをうちの息子がとても失礼なことを言って申し訳ございません」

 母上は席を立ちまわりに座っている夫人たちに頭を深々と下げた。


「母上?」

 俺は母上の行動に驚いていた。まさか母上が俺のことを庇わないなんて……いつも俺に優しい母上なのに。


「貴方の言ったあの子達とはここにいるお客様のお嬢様達よ。わたしが見ている時は我儘を言ってまわりを振り回していたのはそこにいる貴方のお嬢様だったわ。冷たい態度も無視もしていなかったわ」


 まわりの人達は流石に大人で怒ることもなく静観しているようだった。


「ひ、酷いわ。わたしは我儘なんて言わない。シエルわたしこんなお茶会嫌だわ、帰りたい」


 リーリエ様を巻き込んでしまった。


「申し訳ございませんリーリエ様。すぐにお暇しましょう」

 そう言うと俺はライナ睨みつけて去っていった。


 ーーなんでリーリエ様を陥れようとするんだ。

 元使用人なら少しは労ってもいいのに。

 俺はライナへのイライラで限界だった。



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