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今夜さよならをします  作者: たろ
第1章
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シエル編⑥の続きです

 後でライナのメイド仲間に聞いた話だが、


「ライナは気が利いているし連れて歩いても貴族令嬢だから作法もしっかりしているし安心だったのに、寂しくなるわ」


「ライナはシエルと結婚するのね?」と奥様が聞くと


「そうなったらいいですね」

 と言って辞めて行ったと教えてもらった。



 ーーまだ俺と結婚してくれるつもりはあったんだ。


 俺はホッとしながらも彼女との仲直りのきっかけすら掴めずにいた。


 俺のポケットには彼女への誕生日プレゼントの指輪が、箱が少し歪んだ状態で入っていた。


 また会えたら今度こそ渡したい。


 ずっとそう思って持っていた。


 なのに結局ライナの社交会デビューのエスコートをすることは叶わなかった。


 リーリエ様が数日前から避暑地へ旅行へ行くことになり護衛としてついていかなければならなくなった。


 お詫びと夜会に参加できない旨を伝えるために手紙を書いてライナへうちの屋敷の者に頼み届けてもらった。


 リーリエ様にライナのことを伝えるつもりで奥様に話した。


「ライナは仕事を辞めました。リーリエ様には伝えても宜しいでしょうか?今度の夜会はライナの社交界デビューの日でもあります。わたしはエスコートをして参加したいと思っています」


「あら?その数日前からリーリエは避暑地へ行くことになっているのよ?聞いてないかしら?もちろん護衛の四人にはそちらへ行ってもらうつもりなの。ライナには行けないことを伝えて置いてちょうだい。元使用人なのだからそれくらい理解できるでしょう?」


「………了解しました。ただリーリエ様にはわたしの婚約者のことを伝えても宜しいでしょうか?」


「わかったわ、わたしから伝えておくから貴方からは言わないでちょうだい。リーリエは貴方を気に入っているのよ、突然貴方の口から言われたらショックを受けてしまうわ。あの子は体が弱いのよ。そんなつまらないことで寝込まれてしまったら困るわ」


 ーーつまらないこと?


 俺は唖然としたが何も言い返せなかった。


 あと一年辛抱すれば王宮騎士になるための推薦状がもらえる。機嫌を損ねるわけにはいかない。

 あと少し我慢すればいいんだ。


 俺は騎士仲間とリーリエ様について避暑地へと旅立った。


 この時は俺が書いた手紙の全てが誰かに邪魔されてライナの元へ届けられていないなんて思ってもみなかった。


 だから返事もこないし会いたいと前もって手紙を書いても返事が来なかったのだ。






 











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