表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今夜さよならをします  作者: たろ
第1章
12/109

シエル編②

 俺は騎士科を卒業して伯爵家の護衛騎士として働くことになった。

 王宮騎士の試験はかなり難関で今年はダメだった。

 数年高位貴族の騎士として働けば優先的に王宮騎士になるための推薦状がもらえる。

 俺は数年頑張ることにした。

 ライナと結婚すれば男爵家の婿になる。でもまだライナの父は元気だししばらくは騎士として働くことも許されている。


 そう、………許されている。俺は婿になれば自由が減るのだ。


 いずれは王宮騎士を目指しているが今は実力をつけるために地道に頑張るしかない。

 だって俺の夢は護衛騎士ではなく王宮騎士なのだから。


 伯爵家ではまずは門番から始まった。


 毎日ひたすら立っているだけの仕事。

 もちろん大事な仕事ではあるけど……とても暇だ。


 まぁ、立っているのは門を閉めて敷地の中なので相方と二人で鍛錬をしたりして過ごす。


 慣れてきたら屋敷を周回して怪しい人が居ないか見て回る仕事に移る。


 そして半年過ぎてやっと奥様や伯爵の護衛につくことができた。

 俺は奥様につくことになった。


 屋敷内では奥様の部屋の外で待機して、外に出る時は常に近くで護衛する。


 この国は争いが少なく他国との戦争はない。

 話し合いで解決することが多いし国自体も安定しているので内戦やクーデターなどもない。


 だから街中も路地裏に行かなければ引ったくりがあるくらいで殺し合いなどはない。


 奥様は俺たち護衛にも優しい。


「今日のお買い物は終わったから一緒にどこかで食事にしましょうね」

 必ず俺たちも誘ってくれる。


 奥様付きになって半年。


 ライナは伯爵家のメイドとして働き出した。


 ライナももちろん最初は下積みから始まった。


 俺は内心、男爵家とは言え裕福な家庭でその辺の高位貴族と変わらない屋敷に住んでたくさんの使用人に囲まれて暮らしているライナにメイドなど務まるわけがないと反対した。


「わたしはシエルと同じ時間を過ごしてみたいの。もちろんずっと一緒ではないと思うわ。でも近くで貴方の騎士姿が見られるだけで嬉しいの」

 そう言って微笑むライナ。


 俺がどんなにヤキモチを妬いても少し冷たい態度を取っても、俺への愛情を変わらずに態度で表してくれる。


「無理しないでくれ、ライナは辛くても顔に出さないですぐ我慢するからな、ここの伯爵家の人達はとても優しいしいい人なんだ、だけど仕事はやはり大変だから」


 ライナと伯爵家で働き出して2年が過ぎた。


 その間ライナのことでよくない噂をちょこちょこと耳にした。


「少し我儘なところがある」

「金持ちのくせに働いて私たちを見下している」

「すぐにキツイと言って仕事をサボる」など。


 はっきりと誰かが言っているわけではない。でも俺の耳にたまに入ってくる。

 この屋敷では俺とライナが婚約していることはあえて伝えてはいない。

 伯爵家で働く使用人の殆どが平民だ。


 俺たちのように騎士は男爵家や子爵家の者もいる。そいつらは俺とライナの婚約のことは知っている。


 ただメイドの殆どが平民だ。ライナのように男爵家や子爵家のメイドは行儀見習いで働きに来るがライナのようにメイドとしてしっかり働くわけではない。


 半分仕事をしながらも伯爵家ではゆっくりとした時間を過ごしている。いわゆる花嫁修行として伯爵家にきているだけだ。


 だがライナはせっかくなのでみんなと一緒に仕事をしたいと言ってしっかりと働いている。

 普段実家にいれば全て使用人がしてくれる生活なのに。

 頭もよく人気のあったライナ、バズールと高等部へ行くだろうと思っていたのに


「もう高等部の勉強は全て終わっているのよ、学校へ行かなくても3年後に高等部卒業資格の試験を受ければいいだけにしているの。だから心配しないでね、一緒の時間を過ごしたいと思うけど、シエルの仕事の邪魔はしないわ」


 そう言って仕事をしているのにライナに悪い噂が立っていることが不自然に感じた。

 俺たちのことを知っている者は少ないし、周囲から悪意は感じないのに……



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ