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第九話

皆さま、新年明けましておめでとうございます。

今年もマイペースでですが、執筆と更新を頑張りますのでこれからもどうぞよろしくお願いいたします。

 近くのショッピングセンターとスーパーで買い物を終え、皓は大荷物を持ちながら歩く。

 左右の手には大きなビニール袋が二つほど握られ、中には大量の食品が入っている。

 静那の手にぶら下がっている袋には静那の服などが入っており、後ろを一緒に歩くタマとポチはやはり静那の服などを持っているようだ。

「なんでそんなに服が必要なんだよ」

 結構な時間ショッピングに付き合った皓は、思わずそう突っ込みを入れる。

 静那は小首を傾げて、言葉をよく噛むような表情を浮かべている。

「静那じゃねぇ、この突っ込みはポチだ」

 そう、長いショッピングになったのはポチが静那の下着から服までを吟味し買い込んでいたからだ。

「それは、私はお洋服をあまり持っていないからです」

 笑顔で静那は言い、ポチとタマはコクコクと頷く。

「は?」

 皓は思わず変な声を上げてしまうが、静那は笑顔で皓の隣を歩いている。

「お嬢様は、洋服は現在着ておられる一着しかありません。それ以外は全て和服です」

 タマが皓の突っ込みの意図を理解し、そう説明する。

「……着物しか持ってねぇのか?」

 ほんの少しだけ眉を顰めた皓の問いかけに、静那はこくんと頷く。

「しゅぎょうの時もおしごとの時も、お家に居る時もお着物で過ごしていました」

 静那の返事に、皓は何となく色々な事を納得する。

「和服が普通の家か」

 うん、と頷きながらちらりと静那を見る。

 静那の姿勢の良い立ち姿や、歩き方。

 何処か気品がある様なその姿に、着物で過ごすのが普通の家と聞けば納得できるものがあるからだ。

 もっとも、それ以上に静那の性格を知れば知るほど、どこぞの良家の箱入り娘にしか見えないわけなのだが。

 怜悧な容姿と相反するおっとりとしか表現できない雰囲気と性格に、微笑ましい気持ちになる。

 それと同時に、自分がこの三人に馴染み始めている事に苦笑してしまう。

 皓の苦笑に静那は相変わらず小首を傾げている訳なのだが、タマもポチも特に口を挿む事無く家路を歩く。

 かなり荷物が多いので、タクシーを利用すればよかったと皓が嘆息すると同時に真正面に高校生くらいの少年が少しだけ安堵した表情で駆け寄ってくるのが見えた。

 この近辺に住んでいる学生かと思いつつ歩いていると、少年は真っ直ぐに静那を見ている。

「静那さん! 昨日は急に居なくなるから、心配したんですよ!」

 そう言いながら静那の前に立ち、笑顔で少年は彼女を見下ろす。

 静那は数度瞬きをして、それから恥ずかしそうに頬を染めて頭を下げる。

「昨夜はご心配をおかけして、申し訳ありませんでした」

 静那に頭を下げられた少年は慌てて手を振り、笑みを浮かべる。

「いえいえ、気にしないでください。無事だったから、本当に良かったです」

 少年はそう言って、タマとポチを見てからちらりと皓を見る。

 その視線は、皓の事を訝しく思っているのがありありと判るほど不愉快なものだ。

 皓はそれに瞬時に気が付き、ぎろりと睨みつける。

 少年は睨まれた事に不愉快そうに眉をひそめ、ぐいっと静那の腕を引く。

「それより静那さん、こんな処で何をしておいでですか? 貴女に是非、当家に来ていただきたいのですが」

 まるで、一刻も早く皓から引き離したいと言う素振りを見せる少年に、タマが口を開く。

「控えなさい、火野家の少年よ」

 冷たい声音と口調で諌めるが、少年は眉を顰める。

「たかがか使い魔の分際で、ボクに意見するな」

 ますます不快そうな表情を浮かべ、少年はタマにそう吐き捨てる。

「あの……」

 静那は困った表情を浮かべ、戸惑いながら少年に声をかける。

「静那さん、行きましょう」

 頭から静那の話を聞く気の無い少年の態度に、皓は自分の荷物をタマに強引に渡して静那を掴む手を引き剥がす。

「何をする!」

 思わぬ力で静那から引き剥がされた少年は目を剥き、皓を睨みつける。

「それはこっちの台詞だ」

 少年の態度に皓は顔を顰め、そう言って静那を背中に庇う。

「ちったぁ人の話を聞け、餓鬼が」

 皓は少年にそう吐き捨て、手で先に家に帰れと指示を出す。

 ポチは頷き、静那を促そうとするが静那は皓の腕を掴み少年を見る。

「啓太くん。私は、旦那様を見つけたので行けません」

 そう言って、静那は幸せそうに微笑む。

 だが、啓太と呼ばれた少年は目を剥き、皓を見る。

「こ……こいつですか?」

 静那に対しては敬語の啓太だが、皓に対しては使う気が無いのか「こいつ」呼ばわりをする。

 皓はそんな啓太に、獰猛な笑みを浮かべる。

「喧嘩なら買うぞ、おい」

 低く、どすを利かせた声で言う皓。

「大人げないぞ、ご主人さま」

 ポチがすかさず突っ込み、皓は眉を顰めてポチを睨む。

「うるせぇな。それより、とっとと帰ろうぜ」

 往来で騒げば恥ずかしい思いをしそうだと、皓は静那の頭を撫でて三人を促す。

「まっ……待て!」

 啓太が慌てて声をかけると、皓は面倒くさいと表情に書きながら顎でついてこいと示す。

 皓のその態度に啓太が怒鳴ろうと口を開きかけるが、ポチが振り向き口を開く。

「往来で怒鳴り散らすなど、見っとも無い真似をしてくれるなよ? 元素使い火野家の少年」

 釘を刺すかのようなポチの言葉にぐっと詰まり、啓太は渋々足を踏み出す。

 裏の世界の話を往来でする様な事ではないのは確かで、啓太は不本意だが納得をしてポチの後をついて行くのであった。




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