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第十四話

 勉強が終わると同時に普通のテーブルの天板になったその場所に、静那が次々と夕飯のおかずとご飯、味噌汁を並べて行く。

 やはり和風の食事で、皓は感嘆の溜息を吐く。

 皓は一人暮らしを始めてから自炊はしていたが、仕事などで疲れた時は在り合わせのものを買って済ませると言う事の方が多かった。

 その為、豊富なおかずで食事を取ると言うのが全く出来なかった。

 実家にいる時よりも豪華な夕食に、皓は嬉しいがある意味複雑な心境である。

 押しかけ女房を歓迎するつもりは全く無いと言うのに、こうして食事の支度をしてもらうとまぁ良いかと思ってしまう。

 現金すぎる思考に軽い自己嫌悪を覚える訳なのだが、静那の笑顔を見るとそれすら消えて行ってしまう。

 嵌められていると脳内で呟きつつも、もう逃れられないのだからと腹を括って自分は自分で居れば良いと開き直る。

 目の前に置かれた箸を取り、手を合わせる。

「いただきます」

「いただきます」

 静那も手を合わせ、皓と同じ言葉を口にして食事を始める。

 豆腐となめこの味噌汁は出汁が利いており、皓は自分の好みの味である事に目を細める。

 その後に白菜のお浸しと、鶏大根の煮物を皿に取り分け食べる。

 これらもやはり良い好みの味で、皓は美味いと呟いたっ切り夢中になってしまう。

 静那はそんな皓の姿に嬉しそうにしながらも、ゆっくりと食事を取る。

 ある主対象的な食事風景をタマとポチは眺めていると、かたりと棚の上に置いた桐の箱が鳴る。

 なんの音かと皓は箸を止めて箱の方を見ると、ポチが気にせず食事を続けてくれと告げて箱をタマの前に持っていく。

 気にしないでくれと言われても、皓は気になる訳でそれをじーっと眺めていると。

「旦那様」

 と、静那におっとりと呼ばれる。

「如何した?」

 皓は静那を見ると、彼女は小首を傾げる。

「お口に合いませんでしたか?」

 静那の問いかけに、皓はいやっと頭を振る。

「あいつら、何をしているのか気になってな」

 皓の疑問に、静那はおっとりと微笑む。

「あの桐の箱は、ものをなかに入れてから二度叩くと、なかのものをついの箱にうつす転移の箱なのです」

 静那の説明にへぇっと声を上げかけ、皓は目を丸くする。

「……それは便利っちゃ便利だな」

 ファックスを使うよりも便利なものなのだが、今の科学ではそのような物を作れる技術は無い。

 これもまた妖が作ったものなのだろうと皓は思いつつ、気にしないように努める事にする。

 原理が気になるのだが、聞いた所で理解できないだろう。

 むしろ、理解してしまったらなんだか戻れなくなりそうな気すらしている。

 そんな事を悶々と思いながら食事を続けていると、タマが小さく息を飲む。

 皓はそれに気が付くが、タマとポチは二人で立ち上がり、小さく会釈をして部屋を出て行ってしまう。

「如何したんだ?」

 皓は味噌汁で口の中の物を流し込んでから呟くと、静那はおっとりと小首を傾げる。

「なにかあったのだと思います……けど……」

 そこまでは分からないと、静那は困った表情を浮かべている。

「まぁ、飯をさっさと食って聞くしかねぇな」

 皓はそう言って、からの茶碗を静那に差し出す。

 静那は皓のその食べっぷりに嬉しそうに笑みを返し、茶碗を受け取る。

「はい、旦那様」

 いそいそと横に置いてあるお櫃の蓋を開け、しゃもじを持って茶碗に盛りつけ始める静那。

 その姿を見ながら、タマとポチの先程の表情を思い返す皓。

 あまり表情を変えないポチが、いつもより少しだけ焦っているように見えたのが気にかかる。

 また、タマも酷く不機嫌そうな表情だったのを考えれば、あまり良い知らせではないのだろうと予想が付く。

 皓はこれからどんな面倒が待ち受けているのかと眉を潜め、深い溜め息を吐くと。

「旦那様? 具合、悪いですか?」

 と、心配そうな声音でご飯を山盛りにした茶碗を持つ静那が声をかけてくる。

「ん? いや、ちっと考え事をしていただけだ。気にすんな」

 眉尻を下げ、心配そうな表情をする静那ににっと笑んで、皓はご飯を受け取る。

「わりいな」

 静那に気が付かなかった事を謝ると、彼女はフルフルと頭を振ってふわりと微笑む。

「いっぱいたべてくださり、嬉しいです」

 本当に嬉しそうに笑う静那に、皓もまた笑顔を浮かべ彼女の頭を撫でる。

「静那も一杯食えよ」

「はい!」

 元気に返事をする静那に優しく目を細め、皓は茶碗に山と盛られたご飯に箸をつけた。


なんかもう、適当に更新。

閑話に近い短さだけど、取り敢えずマッタリと見守って頂けると嬉しいです。

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