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空虚な人生に花束を  作者: TOMY@
2/3

発起

「バッシャーン」

髪の毛から水がポタポタと垂れてくる。

「あのウンコマンにかかったかな?」と囃し立てる声。

「こんだけトイレがビチャビチャならかかってるっしょ」という陽気な返答。

泣きそうになるのを必死に堪える。

泣いてしまったら彼らに栄養を与えるのと同じ。

グッと堪え、反撃もせず、ただこの悪夢が終わるのをじっと待つ。

僕は過敏性腸症候群なんだ。

お腹が痛くて痛くて授業中でも何回もトイレに行く。

それをクラスメイトは「ウンコマン」と呼んで苛める。

僕は何もしてないのに。ただ平凡に生きたいだけなのに。

小学生ぐらいでこの虐めは終わると思ってたんだ。

でも中学になっても続いた。

勉強はできた。運動はてんでダメだったけど。

そこも彼らの反感を買う一因だったと思う。

「ウンコマン反応ねーよなぁ」という同意を求める声。

「つまんないよねー」という大衆の声。

(クソッ...クソッ...)

僕は全てを恨んでいる。

当然僕を虐めている人間は全員。それにこいつらの親 親族 親戚 友達。

加えて、真面目に取り組まずなーなーで済ませる学校関係者。

もちろん担任の先生に言ったことはあるんだ。

でも、クラス全員の前で「〇〇(僕の名前)を虐めないようにしましょうね。お腹の病気なの。皆で気遣ってあげてね。」だって

教師は僕を人間として見てくれてないんだ。

自分の体裁しか見えていないんだ。

ここら辺から虐めはより一層酷くなっていった。

僕は人間を信じられなくなった。

学校なんて不登校でいいじゃんって思うかもしれないけど、親が許してくれない。

親は僕に英才教育的なものを施してて、不登校というのは汚点になってしまうと考えている。

だから、ある程度は勉強ができるんだ。

僕を肯定できる唯一の事。

「おしっこかけたら面白いんじゃね?」

「おーいいねぇ」

「よーしいくぞ!」ガチャ

ジョボボボ

僕の体は穢されてしまった。

あいつらの尿で。

僕は限界が来て、泣いてしまった。

そうしたら、あいつらは満足して帰っていった。

僕は自殺することに決めた。

ふらふらと屋上へ向かう。

「この人生に意味は無かった」

階段を昇りながら猛省する。

彼らの存在。

この体で産んだ親のこと。

いじめを改善しない学校の体制。

トイレの鍵が正常に動作しないこと。

全てに絶望を感じる。

最後に絶対的なものに出会えた。

僕は「自殺」に救いを求めたんだ。

この階段が人生で最後に登る階段だと思うと感慨深い。

この扉も人生で最後に開ける扉だ。

「よし...死のう」

自殺防止柵(建前上つけられただけなので高さは1mも無い)

に跨り。この世界に最後の挨拶をする。

「Gott ist tot」

頭を空に放り投げようとしたとき。

女の子の声が空を切り裂いた。

「死なないで!」

何て無責任な発言だろうと思った。

でも、僕の自殺を止めるのには十分だった。

「やってほしいことがあるのー!」

なんて面倒なことだ。今更他人に求められるとは。

「あのいじめっ子たちに報復できるよー!」

報復....報復か.....

その言葉を反芻する。

決心が鈍ってしまった。

もう自殺はできない。

「君の人生を私に頂戴!」

自殺できないならこの女の子の話を聞く以外に選択肢は無い。

でも近づく訳にはいかない。

おしっこの匂いが女の子に届いて嫌われてしまう。

嫌われてしまう...?

僕はこの女の子に好かれようとしているのか?

まったく無縁の世界であったと思っていたから自分の心の変化にドギマギする。

遠くで話す。または、何とか風下に立ちおしっこの匂いを届かせないようにするかの二択だ。

遠くで話すのは無理だ。最近人と話をした記憶がない。

故に遠くから会話するのは不可能だ。

ならば、相手がこっちに近づいてきたら風下に立つことにしよう。

「さっきおしっこかけられたのは知ってるよー!」

僕の計画が全て水の泡になった。

女の子が近づいてくる。

一番最初に芽生えたのは恥ずかしさであった。

自殺を止められた恥ずかしさ。虐められていることを知られている恥ずかしさ。

僕は彼女のことを何も知らないのに彼女は僕が虐められたことを知っているし、おしっこをかけられたことも知っている。

なんて不公平なんだんろう。

「私の手助けをしなさい!」

内容も聞かずに、はいやりますなんて言う人間がいるのだろうか。

けど、僕は「はい」とか細い声で返答した。

僕は自分の中の歯車が回転していくのを感じ取った。

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