平穏が終わる時
これは勇者が誕生する前の魔王サイドの物語。
魔王城の一室に九尾のラルドは鬼人のソウタを呼び出した。
「魔王様が勇者誕生の予言したよ。」
「いつだ?」
「7年後に誕生するだろうだってさ。」
「そうか・・・」
バンという音と同時にドアが勢いよく開いた。
「じゃーん!!スイ参上!」
「スイちゃん邪魔したらだめだよ」
ハーピーが2人入ってきた。
「おや、スイにエリカじゃないか。」
「何のようだ?」
「見てみて~。エリカに擬態してみたよ~。上手にできてるぅ?」
そういってスイがくるくる回って見せた。
スイはスライムだ。だからこうしてよく擬態して遊んでいる。
「確かにそっくりだね。よくできているよ。」
「えへへ。ところでソウタとラルドさんは何をしていたんですか?」
そういってスイが妾の近くまで寄ってきた。
「ちょうど魔王様が勇者誕生の予言をしたのさ。7年後に誕生するだろうとね。」
「ヒェェ!! 勇者が誕生しちゃうんですか?」
勇者誕生を聞いたエリカがプルプル震えだした。
「怖がることはない。勇者と言っても性格による。俺らは大丈夫だ。」
ソウタはエリカの近くに行きそっと慰めた。
「誕生の知らせも来たことだし、人間界へ様子を見に行ってみるかい?」
「・・・もし、人間に正体がばれたら殺されてしまうの?」
エリカはまた涙目になって俯いた。
「妾も一緒に行くのだから殺されることはなかろう?」
「4人で行くから大丈夫だ。」
「私も行けるの!?付いていっていいの?ヒャッホウ!!」
「私は怖いけど、ラルドさんがいるなら大丈夫かな?ラルドさんのそばにくっついていてもいいですか?」
「よかろう。では4人で人間界へ行くとしようかのぅ。」
4人は人間界へたどり着いた。
ラルドは九尾の姿から人間の姿になった。
ソウタも角を隠し人間の姿になった。
スイは村の人を見つけたときに擬態した。
エリカは擬態しようとしたが、手だけが残ってしまってうまくできなかった。
「エリカこの服をきておくれ。」
「ありがとう。ラルドさん。」
ラルドはフードが付いた丁度手が隠れるポンチョみたいな服をエリカに渡した。
エリカは笑顔で受取りすぐに着た。
「では、この村によっていくかのぅ。」
「さんせーい!!何があるのかなぁ?楽しみぃ!!」
「おや、旅の者ですかな?」
村に入ってすぐに村の人に声を掛けられた。
「はいそうです。この村に興味がありまして。」
「ゆっくりしていきな。」
それから4人は村を見てまわる。
村で暮らす人のことを観察しながら歩いた。
お昼は村の人と一緒にご飯を食べた。
そして村でお土産を探していると事件が起きた。
「これ可愛い!!ラルドさんこれ欲しいです!!」
スイが黄緑色のペンダントを見せてきた。
「よかろう。エリカも自分が欲しいお土産が合ったらいっておくれ。」
話しながらエリカがいる方向を向いた。
エリカがいない!?
「エリカはどこに行ったのじゃ?」
「エリカ? え!エリカどこ?」
スイがペンダントを元あった場所へ置いてあたりを見た。
だがエリカが見当たらない。
「どこではぐれたのかのう?擬態が不完全じゃから急いだほうがよかろう。」
そういって2人を連れて人目のつかないところへ行き、家の屋根に飛び乗った。
魔力を薄く広げてエリカを探した。
魔力に反応する気配が2つあり、一つはエリカだと気づいた。
「エリカは見つけたよ。ここから突き当り右の3つ目の家と4つ目の家の間でじっとしているよ。」
「了解。」
「妾は、気になる反応があったからそっちに向かう。合流するまで3人でのんびりしといておくれ。」
「はーい!!では行ってきまーす!」
スイは元気に手を振ってソウタと一緒にエリカのもとに向かった。
よし、もう一つの気配主は誰かえ?
スイたちと別れた後、すぐに反応があったもう一人の場所へと向かった。
すると少年が買い物のお遣いをしていた。
「はいこれ頼まれてた分だよ。気を付けてお持ち。おまけは少ししているよ。母にはよろしく伝えておくれ。」
「うん。肉屋のお姉さんありがとう!」
「おまけ分はそのうち強くなってわしらを守ってくれたらいいからね。」
「はい!僕誰にも負けないくらい強くなって皆を守れるようになるね。またね。」
そう言って肉屋を後にし、八百屋に向かった。
「お兄さん、いつもの野菜ちょうだい。」
「はいよ。坊や気を付けて帰るんだぜ。」
「はーい。いつもありがとう!」
無垢な笑顔でお礼を言う少年
「そういえば・・」
八百屋が少年に声をかけた。
「また村の外に魔物が出てきてるって噂を聞いた。坊や任せたぜ。」
「そうなんですね。分かりました。魔物は恐ろしいですからね。僕がみんなのために倒してきますよ。」
少年は笑顔で答えて、急いで家に向かった。
妾は少年のことが気になったので八百屋に行き、店主に声をかけた。
「そこのお兄さんや、さっきの少年が魔物の討伐に行くのは本当かい?」
「なんだね。旅の者か。あの少年は生まれたときから同じ学年の子たちより少し強かったのさ。それからその力を延ばすための修行を幼い時からやっている。魔物を討伐できるのもこの村で坊ちゃんだけだ。だから頼るし、おまけをしてでも生きて守ってもらわなきゃなんねーんだ。」
「そうなんだね。」
「あの子の家族は母親一人だけだ。今は病気で寝たきりになっている。」
「ふーん。よくわかったよ。情報料だよ。」
そう言って金貨を1枚店主の手に握らせて、ソウタ達のところへ向かった。
昔っから強く。正義感もあり、純粋。母親が病気か・・・
あんな純粋な子だと世界に騙されて、過去一強敵になりそうじゃのう。
まぁ死なないように準備をしないとなぁ。
一応魔王様へ報告しとくかのぅ。
考えながら3人のもとに戻った。
「ラルドさん心配おかけしました。」
エリカがペコペコと頭を下げながら近づいてきた。
「無事で良かったわい。そろそろ帰ろうか。」
「皆で帰ろう!!」
スイの掛け声とともに魔界へ帰った。
すぐに魔王へ村で見た未来の勇者について話した。
魔王との謁見の後。いつもの部屋に戻った。
「ねぇ。ラルドさん、勇者を見たって本当!?」
スイが興奮気味に近寄ってきた。
「あぁ。激しい戦いになるだろう。」
「・・・え・。そうなんですか・・・怖い・・」
それを聞いてエリカがまた涙目で震えだした。
「大丈夫だ。死にはしない。」
ソウタはそう言ってエリカを慰める。
「今から死なないように準備をする。死んだように見せることが重要だからなぁ。」
「私たちは戦わないんですか?」
エリカは震えながら聞いてきた。
「そりゃぁ。魔族は人間のことをなんとも思っていないからね。だけど自分たちが死ぬのは嫌だし、この手で殺すのもごめんだからね。毎回勇者が誕生するに合わせて、人間界の人々に勇者が魔王を倒したように見えるための演出をしているのだよ。だから勇者は怖くはないよ。」
「そんなことをしていたのですね。怖さが少し減った気がします。」
そう言って震えがなくなり、笑顔になるエリカを見ながら、これからのことを思った。
これから勇者誕生に合わせて、魔王様含めた幹部会議が頻繁に開かれた。
そして7年が経ち勇者誕生の知らせが魔王様のもとまで届いたのだった。