大空に舞う
遂に私は大空を舞う。先人達の夢や希望をのせて。
人は昔から自由に空に飛びたいと思い描いていた。
神話の時代から近世にかけるまで。
歌にもなっているロウで固めた鳥の羽根。
ヘリコプターの原型。
記録映像にある試行錯誤された翼を付けた車、そして飛行機。ヘリコプター。
その後小型化されラジコンが出て、カメラが付きドローンと呼ばれる物が登場した。
巷では空飛ぶ車の実用化も近いと言うニュースを聞く。
安全面を考えれば、ドローンで大空を舞い撮影して仮想現実の世界で楽しむのが良い。
極論すれば、航空写真をVR化してさも自分が自由に飛んでいるソフトを出せば売れるかもしれない。
自分の家にいるので安全、安心であり、事故の心配がない。
いわゆる『フライトシミュレーション』である。
だが実際に空の風の感覚を味わいたい。大空を飛びたいと言う願望は誰しもが持っていると思う。
この物語は1人の少女、大空舞が自由に空を飛ぶ感動を記した物である。
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私は記録映像を観ていた。
それは太古の昔から鳥の様に空を飛びたい人々による実験映像。
車に翼を付けて飛んでいる物。両腕に翼を付けて飛んでいる物。
その時どきの人々の空を飛びたい情熱に感動させられる。
また、毎年夏頃に琵琶湖で開催されている、滑空部門と人力プロペラ部門のコンテスト。
聞けば私の両親、祖父母の子供の頃からの夏の風物詩らしい。
「舞、君は将来名前の通り大空を自由に舞うんだよ。」
これは小さい頃から言われ続けていた事であり、少しうんざりした話でもある。そう、あの時までは。
だが現実になり感動極まりない。
祖父母、とりわけ祖母の意見力が強い。流石は現役女優なのは伊達じゃない。
名前は鏡原三花。芸名は『みかん』として子役時代から活躍している。
なぜか祖母と2人で歩いていると双子の姉妹と勘違いされるくらいそっくりである。
祖父はそんな私を見て、日ごろから常々(つねづね)、
「昔の三花ちゃんを見てるようでとても嬉しいよ。うん、とても可愛い。」
と言って私を撫でてくる。
「そうそう、舞ちゃんは本当に三花ちゃんにそっくりだね。学生時代が懐かしいよ。」
「うん、そうだね。舞ちゃんもアイドルに興味は無いの?」
「なんだか昔の三花ちゃんを見てるようで、お姉さん泣けてくるよ。」
「ありがとうございます。恵お姉さん。香お姉さん。綾子お姉さん。」
「あら、いやだ。お姉さんなんて上手ね。」
「いえ、三花おばあ様、雄蔵おじい様の大事な方でいらっしゃいますから。」
「あら、優しいのね。私達も参加しているこの壮大なプロジェクト、ぜひとも成功させたいわね。」
そうこう話をしている内に、技術者と雄蔵おじい様が来た。
「舞、フライトシミュレーターで練習した通りでいいからね。下にネットを敷いてあるから大丈夫だよ。」
おじい様が緊張する私を励まそうと声を掛けてくる。
私有地の中で私は今から低空だけど空を飛ぶ。期待する気持ちの反面、とても怖いとも思う。
『いざ!尋常に!』
心の中で叫んでいたつもりが、声に出ていたようである。
飛んだ瞬間は思わず目を閉じてしまったが、恐る恐る開くと眼下には雄大な景色が見え、もっと高度からの風景を見たいと言う欲求に駆られた。
「よし!成功だ!よくやったぞ、舞。」
インカムからの声を聴き、ひとまずの成功の喜びを噛みしめた。
「舞。そろそろ着陸したまえ。」
「了解。」
私は無事離陸地点まで戻り無事着陸した。
すぐさま付属の実験機器の記録を解析して今後の研究に生かした。
「舞。お疲れ様。空の旅はどうだった?今から備え付けのカメラで撮影した映像を見てその時の感想を聞かせて欲しいな。」
三花おばあ様がタオルと水を持って私の元に来て労いの言葉をかけてくれた。
そして興奮冷めやらぬ私はプロジェクトメンバーの面々と一緒になり空から映像を見て、この時はああだった。こうだったと感想を述べた。
そして、私をプロジェクトメンバーの一員にしてありがとうございます。と感謝の意を述べた。
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この何気ないとある少女の飛行は無事に成功をおさめ、今後の飛行技術の発展に多いに貢献した。
完