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第5話 盗賊と商業ギルド

その日はワイルドボアのステーキとポテトサラダを作り、茜と一緒に食べた。


「魔物の肉って、意外と美味しいのね。味付けも最高よ。流石、悠太」


「そうかな。手の込んだ料理は作ってないけど、茜が喜んでくれるのなら作った甲斐があるよ」


「そう?ところでさぁ。この水って飲んでも大丈夫なの?これって井戸水でしょう」


「大丈夫だよ。念のためにスキルで俺達の分の飲み水は浄化しておいたから綺麗な水のはずだ」


魔物の肉と物々交換した際に、野菜以外に村の井戸水も分けてもらい、飲み水として使えるように浄化してから、ストレージに収納しておいたのだ。


「なら、安心だね。でもこの村にある野菜を私達が沢山買い取ったけど大丈夫なの?」


「わからん。一応、村長には余った肉を渡しておいたから、暫くは大丈夫だろう。それに村人達も街で売る分の野菜を俺達に売っただけで、自分達が食べる分は別に確保しているみたいだから、問題はないだろう」


「じゃあ、安心だね。それと今日、魔物を斃したから、またレベルが上がったよ。私はレベル5。悠太は?」


「俺はレベル7になった。何故かはわからないが、俺の方が上がるスピードが早いようだな。一度、パワーレベリングの指輪を外してみるか?」


俺のステータスは既に茜を超えている。これ以上、パワーレベリングすれば、茜との差が広がる一方だ。


「駄目よ。悠太には攻撃スキルがないんだから。せめて悠太のレベルが20ぐらいになるまでは指輪は付けておきましょう」


「いいのか?まあ、俺のレベル上がる経験値が少ないだけかっも知れないが」


「その可能性もあるわね。じゃあ、頑張って魔物を斃しましょう」


「そうだな。まずは攻撃スキルをもった魔物を斃さないといくらステータスを上げても戦闘できないのでは話にならないからな」

その日は鍛錬用の二メートルの剣で練習後、別々の部屋で早めに寝た。


次の日の早朝に馬車でモントリーの街へ向かった。

順調に進んでいたのだが、途中で茜が複数の気配を察知し、俺に警告してきた。


「悠太、気配と殺気を察知したわ。恐らく盗賊ね」


「盗賊かぁ。何人いる?相手が多いようなら、俺も準備をした方がいいからな」


「わかった。盗賊は恐らく二十人、距離は百五十メートルほど先にいるわ」


「そうか。多いな」


俺は御者と護衛の冒険者に盗賊が待ち伏せしている可能性を伝えると、全員に緊張が走った。御者にはこのまま急いで馬車を走らせ、盗賊を突っ切る提案をすると全員が賛成し、御者は馬車のスピードを上げた。


「どうするの?私達が出ないと厳しいんじゃない」


「いや、どんな相手がいるのかもわからない以上、ここは戦闘を極力回避した方が良い」


「大丈夫なの?」


「茜も戦いたくないのだろう?」


「そうね。じゃあ、どうするの?このままだと逃げ切れるとは思えないけど」


「俺に考えがある。盗賊の居場所を性格に教えてくれないか」


「あの木の下の繁みよ」

茜に聞いた場所へ俺は煙玉を続けざまに二つ投げた。

煙玉が地面に当たるとモクモクと煙を上げ、周囲が見えなくなった隙に俺達が乗っている馬車が猛スピードで通り過ぎた。


俺達が逃げたことを知った盗賊は慌てて「逃げたぞ」と大声を張り上げ、盗賊達が馬に乗って追いかけてきた。俺は馬車の一番後の席に移動すると、吹き矢を構えて盗賊が乗っている馬目掛けて次々と矢を放った。馬に矢が当たると馬は痛みで暴れだし、騎乗していた盗賊を振り落とした。先頭の馬が暴れだしたことで、後続の盗賊達の進行を邪魔する形になり、盗賊の集団は混乱し、極端にスピードが遅くなった。そこへ駄目押しで煙玉を二つ投げ、盗賊の行方を邪魔した。


その隙に盗賊との距離を稼いで俺達は逃げた。作戦が上手くいって良かった。

しかし、あまり期待はしていなかったが、煙玉と吹き矢は意外と使える。次の街で多めに購入しておこうと密かに決めた。


「フゥ~、何とか逃げ切れたようだな」


盗賊が見えなくなると俺は安堵し、馬車の乗客や御者からもお礼を言われた。


「流石、悠太ね」


「まだ、油断はできない。暫くは気配察知を続けてくれないか」


「わかってるわ。任せて」


盗賊が追いかけて来るのではないかと心配していたが、盗賊が追いかけてくることも魔物が襲ってくることもなく、俺達は無事にベルンの街へ到着した。


ベルンの街にはたった五階層しかないダンジョンがあるそうだ。そのため、初心者の冒険者が多く集まる街でもある。俺はここでできるだけレベルを上げようと考えている。





ベルンの街に到着すると俺達はすぐに商業ギルドへ向かった。


商業ギルドで三つ目の偽名を得るためだ。恐らく、冒険者ギルドで得た偽名もばれている可能性があったので、念のために登録しようと茜と相談していたのだ。


「僕達二人の登録をお願いします」


「はい。お二人とも登録されるのですか?」


受付嬢はぽっちゃり体系の優しそうなお姉さんだ。


「ええ、俺も彼女も別々で商売を始めようと思っています。何か、問題ありますか?」


「いえ、問題はありません。では、お名前と店の名前、どんな商品を扱うのか教えてください」

店の名前と商品か。店の名前かぁ・・・・・・サクラにするか。


「名前はアレックです。店の名前はサクラにしよう思っています。商品は食品関係です」


「私の名前はアクア、店の名前はパール、商品は食品です」


「承知しました。登録料として銀貨五枚を頂きますが、宜しいですか?」


「「はい」」


俺達はそれぞれ銀貨五枚を渡した。商業ギルドでは冒険者ギルドのように一ヵ月に一度、必ず依頼を受けるようにと言う縛りがない代わりに金を取るのだろう。


「では、ギルドバンクはどうされますか?商業を始めるのでしたら、登録をお勧めしますよ」


「では、登録をお願いします。預金は必要ですか?」


「そうですねぇ。最低でも金貨一枚以上でお願いしています」


「「わかりました」」

俺達は金貨一枚を渡すと、暫くお待ちくださいと言われた。


その間に商業ギルドの分厚いマニュアルを読んでみたのだが、書かれていたのは商業ギルドに都合の良い内容ばかりで一年に一度、銀貨五枚を支払い、一ヶ月一度と利益の二割を商業ギルドに収めなければ、ギルド証を抹消するというものだった。


更にギルドバンクも一ヶ月に一度、銅貨五枚が差し引かれるそうだ。あの冒険者の受付嬢にデメリットはあるじゃないかとツッコミたい気分だが、まあ、仮の身分証を得るためだから、仕方がないか。


俺達は商業ギルドから、ギルド証とバンクカードを受け取ると商業ギルドにある何種類かの初級ポーションを購入すると、商業ギルドお勧めの宿へ向かった。






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