第4話 刀の注文と村での魔物狩り
俺達は冒険者ギルドに向かい、ゴブリンの右耳を買い取ってもらうと武器屋に向かった。
実はゴブリンと戦っている時に剣より、短剣やナイフ、ガントレットの方が向いているように思ったのだ。まあ、スキルがないので、武器は何でも使うつもりなのだが。
「ねぇ、悠太。魔物や生き物を殺生することに罪悪感はないの?」
武器屋に向かう途中で茜が急に話しかけてきた。ずっと黙っていると思えば、まだ、魔物を殺したことに罪悪感を覚えているようだ。
「あるに決まっているだろう。だけど、この世界ではそれが常識なのだから割り切るしかないと思っている。逆に殺生できない奴は生き残れない世界でもある。盗賊が俺達を殺しにきたら、茜はどうする?何もせずに殺されるか?俺は自分達を殺そうとするなら、自分達を守るために躊躇せずに殺すよ。それにこの世界では盗賊を殺しても罪には問われないからな。まあ、そう言われても罪悪感は抱くだろうけど」
「私達の常識では生き残れない世界ってことね。厳しいわね」
「そうだな。だけど俺は日本に帰るまでは必ず、生き残ってみせる。だから、魔物だろうが、人だろうが、生きるためなら殺すって俺は覚悟を決めた。この問題は城にいるコウ達クインテットも魔王を斃すと決めたようだから、いずれ、この問題にぶち当たるだろうな。でも、茜はゆっくり答えを出すといいよ。殺せないと言うなら、俺が茜を守ってやる」
「ありがとう。私ね、人は殺せないけど、魔物は殺すって決めたよ。私も悠太と一緒に元の世界に帰りたいから」
「そうか・・・・・・」
元の世界に帰るため、もし、魔王を殺すことになったとしたら、どうするのかと言おうとして止めた。茜が無理なら、俺がやるまでだ。そのためにもレベルを上げないと。それと戦闘スキルを身に付けないと。
茜と話している途中で武器屋に着いたので、店の中に入った。
「いらっしゃい。あんた達は冒険者かい?ランクは?」
武器屋の女将さんが、俺達の服装を見て冒険者だと思ったようだ。まあ、武器屋に来る客と言えば、傭兵や冒険者ぐらいだろうから、当然か。
「Gランクです。できれば、安い短剣とナイフ、ガントレット、煙玉があれば欲しいのですが、あります?」
「勿論あるわよ。この鋼の短剣は一本金貨二枚、このナイフは一本金貨一枚よ。Gランクの冒険者にはちょっと高いけど、ガントレットだけはミスリルのガントレットをお勧めするわ。値段は両手セットで白金貨一枚もするけどね。安い革のガントレットなら、銀貨六枚であるけど、耐久性がないから、お勧めはしないわね。煙玉は一個銅貨五枚ね。そこにあるから、好きなのを選んでちょうだい」
「ん~、じゃあ、短剣二本とナイフ五本、ミスリルのガントレット、煙玉十個をください」
「あんた、意外と金持ちだね。全部で・・・・・・え~と・・・・・・」
「白金貨一枚、金貨九枚、銀貨五枚ですよね」
「・・・・・・合っている!あんた、計算速いわね。私は計算が苦手だから、助かるよ。おまけでこの砥石もサービスしてあげる」
「ありがとうございます。茜も何か買う?」
「私はいい。剣と言うか、刀が欲しいけど、この店にはなさそうだし・・・・・・」
「刀って剣のことかい?どんな剣かは知らないけど、私の亭主は腕の良い鍛冶士だから、頼んであげようか?」
「是非、お願いします」
女将さんの提案に茜が飛びついた。茜はやっぱり、剣より刀の方がしっくりくるようだ。そう言えば、茜は居合も父親さんから習っていたな。
「ちょっとあんた!お客だよ」
暫く待っているとガタイの良い叔父さんが奥の部屋からでてきた。
「そこの二人が客か?で、何を作って欲しい?」
「こう言う刀と言う剣を作って欲しいの。刀は――――」
茜は紙にイラストを書きながら、鍛冶士の叔父さんに柄や鞘と事細かに説明していった。刀はミスリルで依頼し、脇差や予備も入れて二組四本を頼んだ。
刀が出来上がるのに予備日を入れて三日でできるそうだ。因みに鍛冶士は火魔法や練成術で作るため、短期間で仕上がるとのことだ。
刀ができるまで俺達は冒険者ギルドの依頼や剣の稽古をしながら待った。
そして三日後、刀は出来上がった。俺にはよくわからないが茜によると少し違うらしいが、結構気に入っているようだ。刀は特注品なので白金貨四枚もした。
刀を受け取った翌日、俺達は馬車に乗ってモントリーの街へ向かった。
馬車で二日の日程なので、途中の村で一泊することになっている。茜が影の中で退屈だと言うので今回から、一緒に馬車に乗っている。
馬車で移動している最中に魔物が襲ってきたが、馬車を護衛する冒険者がいるので俺達が出るまでもなく斃してくれる。
ベイルの村には予定より早く到着し、今は午後の三時前なので、宿を取ると街を散策するこにした。
「ねえ、悠太。何か、この村の人ってみんな痩せてない?」
「茜もそう思うか。多分、栄養失調か何かだろう。そこの店で聞いてみよう」
俺達は店に向かうと、売っている野菜の中から、イモ類、葉野菜などを購入したが、どれも安く銀貨一枚で沢山の野菜が買えた。買った後で店のお婆ちゃんに話を聞いてみることにした。
「ところで、何でこんなに野菜が安いのですか?」
「あんた達、他の国から来たのかい?」
他の国では違うようだ。ここは口を合わせて話を聞いてみるか。
「はい。僕達は冒険者ですのが、色んな国を見て回るの好きで冒険者として稼ぎなら、旅をしているのです。でも、この国の野菜があんまり安いから、どうしてなのかなと思いまして」
「やっぱり、そうかい。・・・・・・(大きな声で言えないけど、この国の王様が野菜嫌いでねぇ。だから、野菜の値を徐々に下げられ、今ではこんな値段になっちまったのさ。この村の人は肉も食えないもんだから、皆痩せてしまって・・・・・・畑仕事も大変さね)」
お婆ちゃんはヒソヒソ声で理由を教えてくれた。しかし、あのクソ国王は野菜の重要性がわかっていない。大馬鹿者だな。
「じゃあ、僕達が狩って来ましょうか?この辺だと何の肉が美味しいの?」
「でも、買える金がないから・・・・・・」
「お金より、ここの野菜と物々交換ではどうですか?」
「いいのかい?」
「勿論です」
「そうかい。それなら、草原にホーンラビット、森にはワイルドボア、オークがいるそうだよ」
この世界って魔物も食べるんだ。食べても大丈夫なのか?
「わかりました。行くぞ、ルビー」
「わかった」
俺達は草原でホーンラビットを探すより、森で狩りをした方が効率的だと判断し、森へ向かった。
森の中で魔物を探していると茜の察知スキルが反応した。
現れたのはワイルドボアでかなり大きく体長三メートルもあり、大きな角も生えている。
「あんな大きな魔物、どうやって斃すの?」
「俺に考えがある。俺が囮になって――――と言う作戦だ。大丈夫か」
「ん~、自信はないけど私、頑張る」
俺はワイルドボアの前に姿を現すとワイルドボアに煙玉を投げつけた。すると煙玉は白い煙を上げて辺りを白くなり、視界がぼやけた瞬間に茜がワイルドボアの腹を刀で切り裂き、ワイルドボアが「プギッー」と鳴き声を上げた瞬間、俺はボルデック宰相からもらった長い剣をワイルドボアの喉に突き刺して斃した。
「フゥ~、斃せたようだな」
「悠太の作戦通りね。煙玉を戦闘に使うとは流石ね」
「あんな大きな魔物、まともに戦ったらやばいからね」
ワイルドボアをストレージに収納すると次の魔物を探した。
「悠太、また、大きな反応が二つあるわよ。今度はオークじゃないかしら」
「わかった。今度はキンドルの街で買ったロープを使おう。作戦はわかるよな>」
「勿論よ」
ロープの片方を大木に結び、ロープを土で隠した。茜には木の上に登ってもらい、オークを待ち伏せた。
オークが現れると俺はタイミングを合わせ、反対側のロープを引っ張った。オークは足元のロープに気付かずに引っかかり、勢いよく斃れた。その瞬間に俺が飛び出し、茜は気から飛び降り、オーク二匹の喉に剣を刺して始末した。
他にもベイルの村で買った芋を餌にワイルドボアをおびき寄せ、食べ始めた瞬間に木から飛び降り、剣を突き刺した。結果、ワイルドボア三匹、オーク五匹、猪二匹、鹿一匹を仕留めた。他にも森に自生する茸や果物を採っておいた。
村に帰るとお婆ちゃんに大層喜ばれ、ワイルドボア一匹とオーク一匹で野菜を大量に分けてもらった。だが、噂を聞いた村人達が押し寄せ、野菜と物々交換して欲しいと頼まれ、更に沢山の野菜を受け取った。
別にこの村に同情した訳ではないが、自分達では食べきれない量の野菜を受け取ってしまい、何かで消費方法を考えないといけない。