第3話 魔物狩りとレベルアップ
城では茜が急にいなくなったことで、ボルデック宰相達が捜索に躍起になっていた。
そこで勇者達を集め、心当たりはないか問いただすことにした。
「勇者様!斉藤茜様の居場所に心当たりは御座いませんか?」
ボルデック宰相が血相を変えてコウ達のもとにやって来るといりなり、本題を聞いてきた。
「何?茜がいない!茜は逃げたりしない。絶対にこの城の中にいるはずだ」
コウは茜が城を出るはずがないとボルデック宰相に詰め寄った。
「もし、城にいないとなると・・・・・・ところで悠太はどこにいるんですか?」
アオがボルデック宰相に悠太の居場所を聞いた。
「悠太?・・・・・・今は奴のことなど関係ありあせん。それより、斉藤茜様のことです。青野英士様はご存知なのですか?」
「いや、俺はしらない。しかし・・・・・・なるほどなぁ。そう言うことか」
アオはボルデック宰相の言葉で国王が悠太を城から追い出したことや茜が悠太を追いかけて行ったことを察し、この国が自分達に話せない秘密があると考えた。
「どう言う意味ですか?」
「いや、なんでもない」
アオの言葉遣いと仕草でアカ、モモ、ミドリが何が起きているのかを察した。
コウだけは茜がいなくなったことにショックを受け、本気で茜のことを心配していた。
「ところでボルデック宰相、俺達はこの城でなら、自由に行動しても問題ないのですよね?」
「はい。ただ、明日からは訓練がありますのでそれ以外の時間でしたら。但し、事前に我々への許可を得てからにしてください」
「わかった。なら、今から本で調べものをしたいのだが、許可をくれるかな?」
「ええ、もちろんです。ですが、今はそれどころでは」
「有難う御座います。じゃあ、アカ、モモ、ミドリも手伝ってくれるかな?」
「OKだ」
「わかったわ」
「異世界の本かぁ。興味ある♪」
アカ、モモ、ミドリがアオの意図を察し、協力することに同意した。
「お前らなぁ、今はそれどころではないだろう。俺の茜がいなくなったのだぞ」
「あれ、茜ってコウの彼女だっけ?」
「勿論だ。いいから、お前達も探せよ」
ボルデック宰相とコウは本当に茜のことが心配なようで、二人は協力し合い、必死で茜を探した。
その後、ボルデック宰相は国王の命令で国内の検問を徹底させ、茜の行方の捜索と茜が悠太と一緒にいる場合は悠太の暗殺と茜の保護を命じた。
◇
王都の検問ではやはり、若い男女の二人連れを確認され、黒目黒髪の二人連れを見ていないかと質問された。身分証は冒険者ギルドで作ったクロードの偽名を見せ、手荷物検査も無事に終わった。
といっても布袋に着替えがあるだけなのであっさりと検問をパスできた。道中、不足の事態に備えていたのだが、次の街まで三時間の距離のせいか、何も起こらなかった。
無事に目的の街のキンドルに到着すると茜に影から出てもらった。
キンドルの街は王都ほど大きくないが、かなり大きい街だ。
「ねぇ、悠太。これからどうするの?」
「取り敢えずは宿を探そう」
冒険者ギルドに紹介してもらった木馬亭と言う宿に向かった。
木馬亭は三階建てのレンガ造りの宿で、看板に大きな木馬の絵が描かれている宿だ。
「いらっしゃいませ。本日はお泊りですか?」
「はい。二泊で二部屋お願いしたのですが、ありますか?」
「生憎、一室しか空きがなくて。食事付きでお二人一室、金貨一枚ならありますが、どうされます?」
流石に女の子の茜と同じ部屋と言う訳にもいかない。茜を見ると何故か恥ずかしそうにモジモジしている。見なかった事にした。
「一室、二部屋以上はありませんか?」
「それなら、御座いますよ。ただ、一泊金貨四枚と少々お高いですが、宜しいですか?」
「ではそれでお願いします。ルビーもそれでいいよな?」
「うん。クロードに任せる」
俺は二人分の金貨八枚を受付のお姉さんに支払った。
茜から白金貨、大金貨、金貨をそれぞれ百枚もらっているので当面のお金の心配は無用だ。
宿を二日取ったのは一日だけでも冒険者の依頼を受けようと思ったからだ。
その日は茜の目的だった下着を大量に買い込み、俺は調味料の塩や砂糖、胡椒、小麦粉などを買い込み、武器屋では吹き矢と矢二十本を購入した。吹き矢ごときでは魔物は斃せるとは思ってないが、弓矢以外の飛び道具が吹き矢しかなかったのだ。
買い物を終えるとすぐに宿に戻った。
部屋は寝室が三つ、リビングルーム、小さなキッチン、シャワー室も付いている。流石に高いだけのことはある。
◇
次の日、冒険者ギルドで常時依頼を受けることにした。受けると言っても常時依頼の薬草採取や弱い魔物の狩りが対象になるので依頼の申請は不要だ。
俺達はゴブリンの魔物狩りに決め、森へ向かった。
「ねぇ、悠太。この指輪を付けておいて。この指輪はパワーレベリングしてくれる魔道具らしいの」
「ひょっとしてこれも城から盗んだもの?」
「違うわよ!失礼ねぇ。これはボルデック宰相がくれたものなの。ついでに悠太の分ももらっておいたけどね。何で悠太の分はないのってボルデック宰相に詰め寄ったら、何も言わずにくれたわよ」
ボルデック宰相は俺を追い出した手前、茜達に良い言い訳が思いつかず、茜に俺の分のパワーレベリングの指輪を渡したのだろう。
「そうか。でも、いいのか?パワーレベリングすると言うことは茜が斃したとしても半分は俺の経験値になるんだぞ」
「勿論よ。私、悠太に協力するって言ったわよね」
「そうだったな。ありがとう」
本来は男の俺が言うセリフなのだが、俺のステータスを考えると嫌とは言えず、有難く使わせてもうことにした。
「じゃあ、パワーレベリングの設定をするわよ。指輪をはめてから、私と悠太が手を合わせ、同時に指輪へ魔力を注げばOKよ」
俺達は左指にパワーレベリングの指輪をはめ、茜と相手の左手同士を合わせると魔力を注いだ。
すると俺の指輪が青く光りだし、茜の緑の光が俺の指輪に吸収され、同時に茜の指輪には俺の青い光が吸収された。
これって魔力の色なのか?確か、瞳や髪の色も俺は青、茜は緑だったな。お互いの魔力が指輪に吸収されることでパワーレベリングの設定がされると言うことか。
「さあ、設定終了よ。早く森に行きましょう」
「そうだな」
俺達は森に向かって、ただ、歩いているのだけなのに茜について行くのがきつく、俺はびっしょりと汗かいた。ステータスの違いだと思うが、茜は普通に歩いているだけなのに俺は駆け足になっているのだ。やっと森についた頃には俺は疲れ果てクタクタになっていた。自分で自分が情けない。
少し、休ませてもらってから、森に入った。当然、気配や魔力の察知スキルをもつ茜が先頭だ。俺は剣を右手に持ちながら、慎重に進んだ。暫くすると茜が気配に気付いて俺に注意を呼びかけた。
「悠太、何かが二匹いるわよ。戦闘に備えて」
「わ、わかった」
俺は直ぐに吹き矢を取り出し、茜が指す方向に吹き矢に矢を挿入し、口元に近づけた。
ガサガサと草木の擦れ音がしたかと思うと緑色の肌の子鬼のゴブリンが二匹現れたの見てから、俺は直ぐに吹き矢に思いっきり、息を吹き、ゴブリンの喉を狙った。
「ギャー!」
狙いはズレたが、幸運にもゴブリンの目に命中し、ゴブリンは痛みでのたうち回った。その隙に俊足が付与されたブーツに魔力を注ぎ、素早い動きでゴブリンの喉に剣を突き刺して始末した。
茜を見るとゴブリンを瞬殺で斃したようだ。が、初めて生き物を殺した感触に罪悪感を抱き、精神的にきているようで顔が真っ青だ。
「茜、大丈夫か?」
「うん、これもこの世界で生きるためには慣れるしかないんだよね」
「まあ、そうだな。辛いなら、休んでいていろ」
「ごうめん。悠太の後ろで気配の察知だけでもいいかな?」
「ああ、それで十分だ。俺はレベル上がって随分と身体が楽になった」
実は鑑定スキルで確認するとレベル2に上がり、生命力と魔力の全ステータス値がいきなり百も上がった。お陰で、身体が軽くなった気がする。俺はゴブリンの右耳を切り取り、次のターゲットを探した。
因みに魔石はスキルをもった魔物にしかなく。当然、斃したゴブリンにはスキルがない。
ゴブリンの上位種にならあるらしいが、今は斃すのが難しだろう。
それから、ゴブリンを茜に探してもらいながら、吹き矢と剣で十匹斃すとまたレベルが上がった。
俺と茜のステータスはこうなった。
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名 前:真田悠太 職業:鑑定士 レベル:4
生命力:307 魔力:308 攻撃:309
敏捷:310 防御:311 持久力:306
スキル:鑑定、異世界言語
ユニークスキル:ストレージ、アブソーブ、ピュリフィケーション
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名 前:斉藤茜 職業:暗殺者 レベル:3
生命力:480 魔力:480 攻撃:380
敏捷:310 防御:370 持久力:340
スキル:影魔法、暗殺剣、隠密、察知、異世界言語
ユニークスキル:ミラージュ、イミテイト
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パワーレベリングでの得る経験値が半分ずつに振り分けられていないのか、俺のレベルアップが早いのかは不明だが俺がレベル4で茜がレベル3になっていた。
実は鑑定スキルで見るとステータスカードにはない攻撃、敏捷、防御、持久力の四項目が存在する。俺の初期値ステータスは低い反面、上昇値は大きいようで、かなり茜に近付いたと思う。このままレベルが上がれば、いずれ茜を抜くだろう。だが、今の俺には戦闘スキルがないので戦いには向かない。やっぱり、少しで上達するように茜に剣術を習うしかないようだ。