春ですね!
「ハァ...ハァ....ハァハァ」
(急がないと、間に合わなくなってしまいます....
急げ私!もっと....速く!)
この物語の闇堕ちヒロインはまさに今、
雨のように降り注ぐ桜の花びらに視界をさえぎられながら...
遅刻回避のために通学路を全力疾走している。
―横断歩道(赤)―
「昨日、緊張しすぎて眠れなかった...
もー!新学期早々遅刻なんて...って
だめだめだめ!シャレにならないよ!
よしっ青!いっそげぇぇえ!」
(今日から私は、待ちに待った高校三年生なのです!)
ガラガラガラ――
「よしっ!桜まみれになりながら走った甲斐がありました!
ギリギリセーフで教室到着です!」
相変わらず全てを口に出してしまっているこの少女は、
こう見えて成績優秀なのである。
そして、何度も言うがこの物語の闇堕ちヒロインだ。
「おはようございます!ジア君!
今日はジア君もドッキドキですか?」
―桜の散りばった長い髪をふんわりとふくらませながら
後ろの席の俺に振り返った―
「俺は別にドキドキなんかしねぇよ
お前みたいに絶対に特殊クラスに
入りたいわけでもねぇしな...
ってか、お前...めっちゃ桜付いてんぞ、鏡で見てみろよ」
「ええっ!?ほっほんとですか!?
靴箱で払ってきたつもりだっのに...えっ嘘...私っ...
こんな身なりで廊下を通ってきたのですか!?
はっ恥ずかし過ぎますぅぅうううう!!」
今日も相変わらずに騒がしい...
ちなみに、さっきから語り(?)ナレーション(?)
よく分からないがそんな風なものをしていた
俺の名は、風間 ジア(フウマ ジア)。
ハーラの幼なじみだ。
え?ハーラって誰かって?
おっと、失礼。
散々、闇堕ちヒロインを強調しておいて
肝心の名を紹介していなかった。
新学期早々、頭に桜を付けながら
新学期早々、ギリギリで教室に駆け込んできた
彼女の名は、神無 ハーラ (カンナ ハーラ)。
もうそろそろしつこいと思うが、
この物語の闇堕ちヒロインだ――
......。
「ジア君!ジア君!後ろの方、花びら付いてませんか?
あっ...えっなに!?からまった!?ジア君!
ちょっと...後ろ...っ!後ろどうなってます!?」
くっ...
人がせっかくいい感じに物語を始めようとしたのに...
「お前さ俺の筆箱のキーホルダーに
どうやったら髪が絡まるわけ?」
「えっ、キーホルダーに絡まってるんですか?
すいませんジア君...とれないです...」
「あ、ちょ、ハーラ!あんまり無理に引っ張るな
解いてやるからじっとしてろ」
(わちゃわちゃわちゃ......)
これから割とシリアスな展開が待っているはずなんだが
こんな始まり方でいいのだろうか...
「ジア君!取れました!ありがとうございます!」....
(わちゃわちゃわちゃ......)
まぁ、いいか...