恋の相談は徒労に終わる④
当事者の壮太は話しについていけず、コーラのなくなったグラスから取り出した氷を口の中でコロコロと弄んでいた。
二人の会話は纏まったようで豊城月乃も協力してくれるらしいが釈然としない。氷を噛み砕き鏡花と武司を交互に見る。
「全然話しについていけてないんだが……?」
「良かったな! 月乃さんもお前が彼女をつくるのに協力してくれるらしいぞ」
壮太同様飲み終えたグラスからストローを取り出した。
「それは分かる。けど何で? 豊城さんが俺に協力してもメリットなんなないんじゃ……?」
月乃の気持ちを知らない壮太にも、おそらく鏡花との間に交わされた¨約束¨が関係しているというところまでは理解できる。
「ツーちゃんはラァヴの真っ最中なの」
「ちょっ、鏡ちゃん! それ内緒……」
アッサリと秘密を暴露する鏡花。潤滑油でも塗っているのかと思うほど滑らかに唇を動かす。
「ラーヴしてるツーちゃん可愛いんだよー。いっつも目で追ってるくせに恥ずかしいからって声を掛けることもできなくて、ねぇ?」
「お願い! もうやめてぇ」
もう茹でダコ状態だ。目を凝らせば湯気が見えそうなくらい上気した顔で泣きそうなくらい目に涙を浮かべておられる。……確かにかわいい。
「ご覧の通りツーちゃんはウブ子ちゃんなのですよ! ツーちゃんにとってのメリットは壮太と会話することでウブ子ちゃんを卒業すること」
壮太に人差し指を突き付け鏡花は胸を張った。
「月乃さんに協力して貰えば彼女なんて直ぐできるさ!」
武司は¨月乃さんが¨という言葉を飲み込んだ。
「まぁ確かに、豊城さんにならそこの似非ロリより有意義な女性目線のアドバイスが貰えるかも」
「似非ロリ言うな」
「それに月乃さんのモテっぷりはお前も知ってるだろ? モテる秘訣なんかも聞けるかもしれないぜ」
武司の一言が背中を押した。男性にモテる秘訣が役に立つとは思えないが月乃の周りには男女問わず人が集まってる。その人望の厚さからは学べることはありそうだと考えて、「お願いします」と頭を下げてお願いした。
この瞬間始まったのは壮太に彼女を作るための作戦じゃない。鏡花による月乃の気持ちを壮太に伝えるための作戦。壮太の相談の裏で月乃と鏡花の約束が動き出す。