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恋の相談は徒労に終わる②

鏡花が呼び出してから二十分くらいたったころにファミリーレストランの自動ドアが開いた。入ってきた人は壮太たちと同じ三船高校の女子用の制服を身に纏っている。対応する店員に「連れがいます」と言うと迷わず壮太たちのテーブルへ歩きだした。歩くたびに腰まである長い黒髪が揺れ、汗ばんだ首筋が時折顔を覗かせる。その姿は美しいだけじゃなく妙な艶かしさもあり周囲の客の視線を釘付けにしていた。 彼女は周囲の視線を意にも介さず鏡花の横に立つと律儀に頭をさげた。

「鏡ちゃん、お待たせしました」

「んーんー! ってか予想より早いくらいだよ!」

鏡花は軽く挨拶を交わすが壮太は呆気にとられていた。

「待った待った! 何で豊城月乃が来てるんだよ」

確かに鏡花と月乃は仲が良いのかもしれないが壮太とは全くと言っていいくらい接点がない。どうしてそんな彼女を壮太の恋愛相談に呼んだのか壮太は理解できなかった。

「おいおい、壮太よ。席、譲ってやれ」

流石は恋人同士というべきか鏡花の意図を察した武司がアシスタントを出した。鏡花と武司は並んで座っており壮太に席を譲らせるのに何ら不自然さはない。そのことに壮太も疑問を抱かず席を詰めると隣に月乃が座った。

「ありがと天野くん。あと、走ってきたから汗臭かったらごめんね」

月乃の整った顔が恥らいを含み壮太を見上げた。並みの男性なら胸をときめかせてしまう表情。壮太は下唇を噛みうっかりと恋に落ちてしまいそうになるのを堪えた。壮太がしたいのは可愛い彼女とのイチャラブな生活であって、月を見上げるような叶わぬ恋じゃない。

「とりあえず何か頼みなよ」

壮太がメニューを渡せば満月のような笑顔で受け取る。……油断ならない。

「そうそう! ドリンクバーくらいなら壮太が奢ってくれるから」

武司はしれっと何を言っているのだろうと壮太は思ったが同時にドリンクバーくらいなら別にいいかとも思ってしまう。隣の席から漂うバニラのような甘い香りの対価だと思えば安いくらいだ。

店員を呼びドリアとドリンクバーの注文を終えると鏡花が口を開いた。

「ってかこんな暑いのに走って来たんだね……」

自分で呼び出しておいて酷い言い種だ。けど月乃は気にした様子もなく、むしろ白い肌がより赤みを増した。

「だって鏡ちゃんが『天野くんと一緒にご飯食べないか?』って言うから……。おまけにたった四人だなんて……。もっと沢山来ると思ってた」

どうやら鏡花は月乃を¨ご飯食べよう¨って偽って呼び出したらしい。それならもう少し食べるのを待てば良かったかなと空になった皿に視線を落とした。

「ニハハハハ! ごめーん。本当は相談したいことがあったのです」

「相談?」

「実は壮太から¨彼女を作るのに協力してくれ¨って相談を受けていてツーちゃんにアドバイスをして欲しいの!」

月乃が噎せた。お冷やで、盛大に。

「大丈夫か?」

壮太から受け取った紙ナプキンで口を押さえ¨大丈夫¨と何度も頷いた。


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