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夏休み明けの体育祭とか辛い⑦

学生の声が秋の空に響く。燦々と照りつける太陽に照らされ、生徒が100メートルトラックを駆ける。赤いハチマキと白いハチマキを額に結んだ生徒が順位を争い、一位になった赤組に点数が加算された。

「赤組、圧倒的だな……」

運営テントの横にあるスコア表にはダブルスコアが表記され、武司が呟く。隣に座る壮太もスコア表を見た。午前の部は今、行っているリレーでお仕舞いだ。午後には騎馬戦やクラス対抗リレーと高得点の種目がプログラムされているが白組の逆転は望めないだろう。

「赤組は運動部レギュラーがたくさんいるみたいだし、しょうがないだろ」

壮太は白いハチマキを額に結び直した。同じ色のハチマキを付けている武司も壮太の意見に同意するとリレーの方に目をやる。

「そういういや、益川久美のこと好きになったか?」

「好きになったとか意味わからん。アレか? 例の言い伝えか?」

「そう。それだ。ダンスの相手にお前を選んだ。それが益川さんの気持ち。壮太は益川さんにどう答えるんだ?」

壮太は空を見た。青空をのんびり流れる白い雲を見ながら考えを纏める。

「恋愛の意味で言うなら好きじゃない。」

「なら付き合わないのか?」

月乃を応援する側の武司としては壮太が他の女と付き合うのは絶対に避けなければならない。とはいえ武司たちは勝手な都合であって、益川の気持ちを蔑ろにしていい理由にはならないので、壮太が断ってくれるのを願うしかないのだが……。

「どうだろうな。正式な告白をもらったわけじゃないし……その時にならないと分からないなぁ」

¨ダンスに誘う=あなたが好き¨だが¨一緒に踊る=付き合う¨ではない。けど、益川の気持ちを知った壮太が今まで通りの目で益川を見ているとは到底思えなかった。


トラックでは男子の部が終わり、女子の部も終わりが近づいている。バトンの受け渡しが何度も行われ最後の一人に渡された。

アンカーとして走る月乃を壮太と武司が眺める。運動するとき月乃は長い髪をポニーテールに結う。今日もそのスタイルは変わらず、ポニーテールを靡かせ他のアンカーを颯爽と追い抜いていく。整った容姿で運動神経にも定評のある月乃が最下位からぐんぐんと順位をあげる姿に会場が沸き立つ。熱気に包まれながら三着でゴールした。

「さすが豊城さんだよな。運動部相手に三着とは」

壮太が三着の旗を持った月乃に賞賛を贈った。この言葉を月乃が直接聞いたらどれほど喜ぶのかと武司は想像するも、直ぐにため息にして体の外へ追い出した。壮太は¨身の丈にあった恋をしたい¨と言っている。月乃は壮太に好かれたいと望んでいるのに、活躍すればするほど壮太の好みから遠ざかってしまうとは……。なんと皮肉なことか。

午前の部が終わり昼食を摂るべく教室に移動を開始する。壮太たちも教室へ足を向けた。そこへ益川がやって壮太の行く手を遮る。

「あ、の……壮太くん。昼ご飯食べたらもう一度踊ってくれないかな? 」

二人に気を使い少しだけ武司が離れる。

「それは良いけど、練習では完璧に踊れてたと思うよ?」

「でも、本番前はやっぱり不安で」

「まあ、そういうことなら良いよ」

壮太と約束を取り付けた益川が嬉しそうに去っていく。

「さっすがはモテモテ壮太くん」

壮太の横に戻った武司が笑う。けど、この展開で武司が笑えるはずもない。月乃がうかうかしていた間に益川が強気に押しているのだ。

「ふざけてるのか?」

「まあな」

このままではマズイと武司はスマホを取り出した。呼び出した相手は鏡花。この非常事態を文字に変えて送った。



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