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夏休み明けの体育祭とか辛い④

体育祭の出場種目が決定した翌日、教室内の浮かれ気分はまだ残っていた。月乃が誰を誘うのか或いはもう誘ったのかと言う話題で男子が賑わう。その輪に加わっていないごく少数の中に壮太がいた。

「壮太はああいう話題に興味ないのか?」

壮太の前の席に座った武司が後ろを指差した。

「豊城さんの好きな人? 興味ない訳じゃないけど、俺にとっては芸能ニュースと変わらないからな。『美少女アイドル、イケメン俳優と熱愛発覚!』みたいなもんだし。速報で知れば十分」

「別にアイドルだからってイケメンとばかり熱愛しているって訳じゃないだろ? スポーツ選手や芸人と付き合ってる人だっているんだし」

「まあ、そうだが………。どっちにしろ俺みたいたな一般人には関係ないしな」

月乃は¨超¨がつくほどのヘタレで、壮太はこんなんだ。二人のラブコメを楽しむにはまだまだ苦労かかりそうだと思っていると壮太がおもむろに立ち上がった。

「どうした?」

「飲み物、買ってくる」

「俺、コーラ」

「金だせ」

「ツケで」

「きかねーよ」

財布を持って壮太が教室を出ていく。その背中を見送っていたのは武司だけじゃなかった。廊下側の席で同じように壮太の動向を探っていた二人組の女子のうち一人が立ち上がると長い黒髪を揺蕩わせ、そそくさと教室を出ていった。


月乃が壮太を追いかけていき、残された鏡花の隣に武司は座った。

「意外だな! 昨日の今日で」

「それだけツーちゃんも本気なんだよ。まっ、声かけられるかどうかは微妙だけどね」

鏡花が手をヒラヒラと動かすと、月乃の通った出入り口をみて柔らかな笑みを浮かべた。

「ホント、手のかかる子だから」

月乃の恋を応援しているのは『約束』があるからだけど、それよりも彼女の恋が叶うとこをみてみたいと鏡花が頬笑む。


自販機が設置されているのは一階の購買の向かい側だ。昼休みにはバーゲンのときのように人で埋め尽くされるこの場所も、昼時じゃない今は寂れた村のようになっている。

壮太は財布から五百円効果を取り出して挿入するとコーラとコーヒーを続けて購入した。

その姿を見ていた月乃。彼女の胸元には財布が抱きしめられる。

「自然に、自然に……自然に振る舞えば大丈夫。『ジュースを買いにきた振りをして話しかける』……うん、簡単なこと。……よし!」

自分に言い聞かせると月乃は前に踏み出した。財布についた鯨のキーホルダーがチャラチャラと音を鳴らし、月乃の存在をアピールさせている。その音に気がついた壮太が振り返り、二人の目が合った。

「豊城さんも飲み物買いにきたの?」

「う、うん。鏡ちゃんにパシられている最中でして」

「豊城さんも……。お互いあのバカップルには苦労させられるね」

壮太が武司に頼まれていたコーラを掲げて見せた。

「まあ、ね。でも鏡ちゃんは鏡ちゃんで良いところもありますから」

少しだけ鏡花のフォローを入れながら自販機に硬貨を投入する。周りに人がいない今が絶好のチャンスなのだが、絶好のチャンスでも声をかけられないのがヘタレだ。

「じゃあ先に戻っているね」

「えっ……あっ、うん……」

このまま壮太を行かせていいのかと月乃が頭を抱えるも壮太が気づくはずもなく階段を昇っていく。キンキンに冷えたコーラとコーヒーを両手に昇っていた壮太を女子学生が追いかけた。

「待って!」

呼び掛けられた壮太が足を止めて顔をあげる。

「天野くん、ちょっといい」

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