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夏休み明けの体育祭とか辛い③

ホームルームが終わり、通常の授業を終えて昼休みになった。仲の良い友人同士がグループを作り昼食を食べる風景はいつもと同じなのに妙に空気がざわついている。

この空気の原因である月乃が弁当を持ち席を立つと、¨ダンスに誘って貰えるかも¨っと期待した男子たちが一斉に身構える。監視カメラのように光る男子の視線のなか鏡花のところに行くと弁当箱を軽く持ち上げて見せた。

「外で……食べない?」

「……そうだね。中庭にでも行こっか?」

暦の上では秋になったとはいえ暑い日はまだまだ続いており、外で食べようという輩はほとんどいない。それは鏡花も同じで暑い外より涼しい教室の方で食べたい……が、それ以上にこの視線を浴びながら食べるのはもっと御免だ。

《あの豊城月乃に好きな人がいて、ダンスに誘うつもりだ》

その噂はとっくに別のクラス、或いは別の学年にも伝わっており廊下を歩くだけでも衆目を集める。

「さっすがは学校一のモテモテ美少女さん!」

「からかわないでよ……」

「からかってないよ。友達として客観的に意見を言ったまでです」

今まで好意を向けられてきた。面と向かって率直に告げられたことも何度だって……。もちろんその想い一つ一つが尊ぶものであり、好意を持ってくれたのは凄く有難いことだ。月乃自身も誠意を持って向き合うべきだと思っているのだが、兄のように歪んだ好意があるかもと思うとこの無数の視線も素直に受け入れられない。

中庭に出ると人影はなく貸切状態だ。すっぽりと校舎の影に入っているベンチに座ると弁当を広げた。

「何時も通りのヘタレっぷりを発揮したね」

「ヘタレって言わないで下さい……。全校生徒の前で好きな人と踊るんですよ? 羞恥心のイカれた人しか無理です」

「私も手を挙げた一人なんだが……? まぁ、それはいいとして、この後は私がフォロー入れる訳にはいかないよ。分かってる?」

月乃の箸が止まった。咀嚼していた米を喉の奥に追いやると頬をトマトと同じ色に染める。

「…………想像したでしょ? 」

「な、何で分かったんですか?」

「ツーちゃん分かりやすいから。どう? 脳内シミュレーション通りに出来そう?」

「……脳内では完璧! スマートに天野くんを誘えてますし、返事ももちろん『一緒に踊ろ!』って返してくれてます」

月乃にとって本当の試練はここからだ。壮太に『一緒に踊って』と頼まなくてはならない。

「で、現実では出来そうなの?」

「うっ……。だ、大丈夫! 来週の火曜日が期日だからそれまでにお願いすればいい訳ですし……。休みを抜いても五日間もありますから」

「それ絶対最終日に泣きつくパターンでしょ?」

「大丈夫だもん! 今日はもうすぐ終わるから明日中……もちょっと厳しいから今週中には誘ってみせます!」

そう意気込んで弁当の残りを一気に掻き込んだ。月乃の黒い瞳はやる気に満ちているけど、彼女のヘタレっぷりを知っている鏡花はただただ疑いの目を向けるしかなかった。

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