夏休み明けの体育祭とか辛い②
体育祭の出場種目を決めるホームルームが始まった。クラス対抗リレーだの、100メートル走だの、綱引きだの。種目は定番のものばかりが揃っている。『一人一種目は絶対出場するように』と冒頭で告げた教師は生徒の自主性を重んじ静かに成り行きを見届けている――と言えば聞こえはいいだろうが実際はサボりたいだけで、欠伸を何度も何度も噛み殺している。
「じゃあ次、¨100メートル走¨。出たいやついるか?」
進行役を任された委員長・長谷川が場を淡々と仕切っていく。とりあえず立候補を募り集まらなかった種目はくじ引きでっと言うことらしい。
「男子はオッケーっと。女子、他に出たい人は?」
「じゃあ……」
長谷川の呼び掛けに月乃が手を挙げた。陸上部と比べても遜色なく走れる月乃は適任だ。異議を唱える声は当然上がらない。
他の種目についてもくじ引きを行い全員の出場種目を決め終わると長谷川がチョークを持った。
《社交ダンス出場者》
黒板に文字が刻まれると教室の雰囲気が一気に変わった。
「とりあえず、出たい人は? 」
最初に手を挙げたのは益川久美という女子。不細工という訳ではないのだが月乃と比べるとどうしても見劣りしまう少女なのだが、クラス内での男子の人気は月乃に次いで高い。その理由が育ちに育ったメロン。通称。部活でテニスをするその姿に何人もの男が悩殺された。
次いで挙げたのが鏡花だ。益川より可愛いのだが男子の反応がイマイチなのは鏡花が彼氏持ちだからだ。
「武司ー! 一緒に踊ろーねー!」
「おう! 」
クラス全員が見ているというのに堂々と指名する光景に舌打ちの嵐が巻き起こった。
クラス中から囃し立てられる鏡花が芸能人のように手を上げて応えている。クラス中の目が鏡花に向く中、月乃のは机の下でスマホを強く握っていた。
【明日、絶対社交ダンスに立候補しなさい!】
昨晩、鏡花から送られてきたメッセージ。月乃も壮太と踊りたいのはヤマヤマなのだが、いかんせん勇気がでない。ここで手を挙げ、当日壮太と公然の前で踊れば自分の好意が誰に向いているか全校生徒の前で白状するようなもの。奥手でヘタレな月乃にはハードルが高い。
「他に出たい人いないかー? いないなら推薦かくじ引きにするぞ?」
タイムリミットが迫る。ここで手を挙げなければ誰かが推薦してくれるのを祈るしかない。むしろ、その方が幾分か気が楽かもしれないと思い始めた。けれど、月乃の考えを読んでいた鏡花が¨そんな事は許さない¨とばかりに逃げ道を塞いだ。
「待つんだ! いいんちょおーー! もう一人立候補したい恥ずかしがり屋さんがいるのだぁ! ね?」
鏡花につられたクラスメイトの視線に月乃が俯く。人の視線には慣れている方だけど今回は違う。恋愛が絡むうえ、その相手からの視線も注がれている。
「さあ! さあ! さあ!さあ! 手を挙げるんだ!」
鏡花に限らずクラスメイト全員が期待の目で見てくる。もう逃げられないと追い詰められた月乃が小さく手を挙げて声を振るわせた。
「私……も、出たいです」
男子が一斉に沸いた。他薦なら¨相手がいなかったから選んだ¨という可能性もあるが、自薦なら¨この人と踊りたいから¨とダンスの相手を選んだことになる。月乃を狙う男子が一緒に踊る姿を相談して胸を高鳴らせた。




