連絡先を手に入れよう⑤
追試を終えた武司が図書室にくると揃って学校を出た。追試の結果はその場で採点されるため合否も直ぐに分かり見事一発合格した武司はホッとした顔で映画館へ向かった。
この映画館は学校から電車一本で来られるうえ、ボーリングやゲームセンター、カラオケ等も併設されているので平日といえど同じ制服を着た人をチラホラと見かける。
一階がゲームセンターとカラオケ、二階がボーリング場と映画館になっている。ゲームセンター脇のエスカレーターに乗った壮太だが、どうにも居心地が悪く足元へ視線を落とした。
「どうした? 気分悪いか?」
壮太の異変に気がついた武司が声をかけた。
「そうじゃないけど……。何か見られているような気がしないか? 周りから」
壮太が異変を感じたのは駅を降りたあたりくらいからだ。針で刺されているような視線がついてまわっていて、特にこの建物に入ってからは強くなっている気がする。
「そりゃあアレだよ」
武司につられ振り返ると少し後ろで鏡花と月乃が一つのスマホを覗きおしゃべりしている。
「今まで浮わついた噂もなかった月乃さんが男と遊んでいるんだから気にもなるだろ?」
男と女の計四人が遊びに来ている。しかもそのうち二人は恋人だ。客観的に見てダブルデート。実情は違うかもしれないがそう勘ぐる奴は少なくないだろう。
「聞こえる! 聞こえるぞ! 密かに月乃さんを狙っていた男共の怨みの声が!」
「とんだ濡れ衣だわ!」
「実際に付き合えば濡れ衣じゃなくなるぞ?」
武司が意地の悪そうな笑いを浮かべながら言うが、壮太にはただの悪ノリにしか聞こえなかった。
「俺も豊城さんも互いに恋愛対象じゃないからな」
何事においても平凡な壮太から見た豊城月乃は遥か高みの存在。とても自分なんかじゃあ釣り合いが取れないと思っている。
「豊城さんは俺のこと¨友人の恋人の友達¨にしか思ってないだろうし。付き合うとかナイナイ!」
二人の話が聞こえていた月乃が顔面蒼白になっているなど露知らず壮太は断言した。




