連絡先を手に入れよう③
鏡花から壮太の連絡先をゲットするよう命令されてから、はや三日が過ぎた。その間、壮太に話しかけれていないのでスマホの中に壮太の名前はない。
昼休みに教室の隅で鏡花と机を向かい合わせ月乃はいつになく不機嫌だ。弁当を啄む箸をとめ鏡花に不満たらたらの眼差しを送っていた。
「ねぇ、鏡ちゃん?」
「なに?」
「あなたの彼氏、節操なさすぎじゃないですか?」
鏡花は不満を告げられた彼氏へ目をやれば壮太と昼食を摂りながら数学の勉強をしている。
「いつもいつも私の天野くんとベタベタして」
「¨まだ¨ツーちゃんのじゃないからね。あと武司がいても別にいいじゃない? 連絡先聞くだけだし……」
「そうだけども……」
紙パックから伸びたストローを咥えた鏡花が目の前の容姿端麗な少女へゲンナリした目を向ける。口の中に広がるストロベリー味の液体と共に「ヘタレ」という言葉を飲み込んだ。
「武司のことは諦めなさい。ツーちゃんの恋は応援する約束したけど、それ以前にあの二人は友達なんだから」
友情とは別だと言われてしまえば、それ以上月乃が口を開くことはできなかった。
「なんにせよ、急がないと夏休み始まっちゃうわよ?」
机の下の細い足を蹴って発破をかけた。このどうしようもなく奥手で情けないほどのヘタレの友人の恋を応援するのは骨が折れる。だけど……いや、¨それでも¨応援したくなってしまう。このヘタレ極まった恋を……。
「一個だけアドバイス。今日の放課後、武司は数学の追試。壮太は武司の追試が終わるの待つらしいわよ?」
「鏡ちゃーん、教えてくれとありがとー! 」
お礼にとばかりに鏡花の弁当箱へ卵焼きを移していく。黄色染まった弁当箱から一個だけ取り、口へ運べば自然と「あまーい」と言葉が漏れる。それを聞いた月乃の表情がより柔らかくなった。




