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兄は変態です

玄関を開けると兄が立っていた。今年から新社会人として働き始めた兄・陽太郎。顔立が整い背が高い陽太郎がスーツを着ている姿は様になっている。その陽太郎が笑えば実の妹の月乃でさえ¨格好いい¨と思う……はずがない。眼鏡の奥で渦巻く劣情を見れば服の中に虫が入ったような嫌悪感が蠢く。月乃は無理矢理笑みを作りそれに気づかない振りをした。

「遅かったね月乃」

「ごめんなさい。友達と会っていたもので」

「さっきの男が?」

月乃がそれを肯定すれば陽太郎は呆れたようにため息をつく。

「あのな月乃。男と仲良くするなと何度も言っているだろ?」

「……ごめんなさい」

このやり取りに意味がないのは経験から学んでいる。

「反省はしているようだけどお仕置きだな」

理由なんて何でもいいのだ。ただ欲望の捌け口として月乃を使うために尤もらしい口実さえあれば。

陽太郎に手を引かれ来たのは風呂場だ。脱衣場には荒縄とカメラが準備されている。荒縄を取った陽太郎が月乃の腕に跡が残らないようにタオルを巻くと後ろ手に縛りあげてカメラのレンズを向けた。壮太には「鏡花に相談する」と言ったがこんな事誰にも言えるはずがない。

「いいかい、子供の月乃には分からないかもしれないけど月乃を守ってあげられるのは僕だけなんだ」

写真を撮り終えた陽太郎は月乃を浴室へ入れた。床は乾いておらず靴下が濡れるが、次の瞬間には全身が濡れた。陽太郎の持つシャワーノズルから勢いよくでる温水が全身をくまなく濡らす。濡れた制服は月乃の肉体に張り付き女性らしい体つきを強調している。

「今までもそうだったようにこれからも僕の言うことを聞くのが月乃にとっても幸せなことなんだよ」

力なく投げ出された脚を開かせ扇情的で恥ずかしい格好にすると浴室にシャッター音が何度も響いた。

月乃はまるで幽体離脱でもしたかのように今の状況を俯瞰していた。自分のことなのだけど画面の中の出来事のように他人事に捉えるのが一番良いことを知っている。逆らったり抵抗すれば暴力を振るわれる。兄の気が済むまでの一時を心を殺して耐えるだけ。

――大丈夫。今日は天野くんと帰るって幸せなことがあったからその分嫌なことがあるだけだから。大丈夫、天野くんのことを考えれば時間はあっという間に過ぎるから。大丈夫、明日にはまた天野くんにあえるから……大丈夫――。

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