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少女の日常と出会いの日

 水瓶が空になっていたのに気が付いたのは、眠気を飛ばすのに顔を洗おうとした時だった。


「あ、あぁ?」


 何時もなら、金髪の女がそこに居るはずなのに、今日はどこに行ったのかしら?


 しばらく目をしばしばさせ、水瓶の中を覗き込んでいた。そんな朝。




 *********




「どっ、こいしょー!」


 どでかいホースが必要だ。2mのそれなりに重いホースを軽トラに載せ、荷物をチェックする。


 ポンプ、良し。そもそも軽トラに元から載せっぱなし。充電も完了。

 タンク、良し。中も綺麗だった。

 ホース、良し。今載せた。

 軽トラは、……。


「ガソリン……」


 メーターは残り最後の1メモリよりも少ない。ぎりぎり足りるかもしれないが、足りないかもしれない。


 車も電気で動けば良いのに。世の中にはそういうものもあるらしいけど、うちのオンボロは高価な油しか受け付けない。


「ザリ爺に貰ってこよ。あ、でもお使いも頼まれそうだなあ」


 それは面倒。


「じゃ、ユウさんとこかな。ちょうどガソリンが切れたことに気づいた体で、うん」


 そうと決まれば早速行こうすぐ行こう。エンジンを回し車を進める。


 ユウさん家は村の端、一番川に近い家だ。この村の結界は比較的広い。村の守護天使様がスゴクエライからだとザリ爺が言っていたが……。


 と、そんなことを考えているうちにユウさん宅に到着。


「ユウさーん、おはよーございまーす」

「……おはよ、ライラ。なんかした?」


 今の今まで眠っていたのだろう。ぼさぼさの長髪をそのままに、ユウさんが扉を開けた。


「ガソリンちょーだい?」

「えぇ……」


 ユウさんは肩甲骨を掻きながら呆れていた。

 豊かな胸元を惜しげもなく晒しているというのに、色気がない。不思議だ。


「良いけどさ、ちょっくら充電していってよ。もう充電なくなりそうなんだよね」

「まあ、それくらいなら。でも一昨日やったばかりだし、バッテリー交換したほうがいいかもですね」

「あ、そう? じゃあ変えといてよ」

「了解でーす。昼頃持ってきますね」

「昼ぅ? もう少し早くできない?」

「うーん、じゃあ今のバッテリーに充電しときます。それなら昼までは持つかと」

「そ、じゃあそれで。バッテリーはいつものとこね」

「はーい。ガソリンもお願いしますねー」


 思わぬ所で仕事が出来てしまった。ユウさんのとこが古いとなると、ガルさんとこもまずいかもしれない。


(あの人はちっとも気にしないからなぁ)


 何故疑問に思わないかが不思議である。


「んーと、こっちがプラスだから……」


 2つの電極を握り、電気の流れをイメージする。魔力をイメージに乗せ、呪文を唱えた。


「スパーク」


 充電されているかは、正直よく分からない。取り付けたメーターだけが頼りだ。優れた術師ならば可能だと言うが……。


 しばらくイメージがパチパチと弾けて消える。


「ん、こんなものかな」


 掛かった時間は20分程か。ほぼ空だったことを考慮すると、かなり劣化しているように思える。


「お疲れ」

「ひゃあ!」


 首筋に鋭い冷気が刺さる。思わず上げた声と共に振りかえる。

 ユウさんがジュースを持って立っていた。


「これはおごり」

「うぐ、ありがとうございます」


 文句の1つも言いたかったが、それを口にしてしまえばジュースは消えてしまうだろう。

 受け取ったジュースを口に運ぶ。やはりというべきか、村特産のミカンジュースである。


「冷えてるでしょう?」


 ユウが言った。

 それはもう肌で感じましたと言いたかったが、彼女の朗らかな笑みを見て飲み込んだ。


「あなたが電気をくれるから、冷えたジュースが飲めるのよ」


 別に、タダであげているわけではない。私は電気を生み出し、そして売る。それが私の、爺ちゃんから引き継いだ商売なのだ。


「……いえ、まあ」


 でもとっても照れくさい!

 どうして今更まっすぐに感謝の言葉を述べたのだろう。


「照れてるのかなあ?」

「う、うるさいな! 私もう行きますからね!」


 車に転がり込むように乗り込み、エンジンを掛けた。

 ガソリンは満タンだった。これは、流石に貰い過ぎだ。バッテリーを割引しなくてはならない。


 結界に沿って車を進める。今日は小石もなく、絶好のドライブ日和です。


 川に可能な限り近づけ車を止める。

 川は一部結界内に収まっているので、お陰で水汲みも安全だ。

 デモ面倒くさい。愚痴がぼそりと口をついて出た。


「……井戸でも掘れば良いのに」


 水脈の問題で、村の近くには井戸が掘れないらしい。たまたま結界内に川があるために、『必要ないのでは?』と時の村長が言ってしまったとか。

 お陰で濾過が必要なので、一村人にとってはいい迷惑である。


 ホースを取り出そうとして、手を止めた。


「顔、洗ってなかった」


 一応タオルで拭いたが、どうせなら冷たい水が良い。

 水を掬った。しばらく山の方が雨だったから、泥で濁っている。


「……なんか、嫌」


 顔を洗うのは諦めよう。ホースを川に浸け、ポンプの電源を入れた。水がタンクに溜まっていく。


 ぐわんぐわん水を吸っていたのだが、突然ズゴ、と。ホースが音を立てて詰まらせた。岩でも吸おうとしたのだろうか。


「よいしょ」


 引っ張ってみる。岩ならこれで――――




「――――――――え?」


 ホースにくっ付いてきたのは、布――服。そして


「ど、どざえも~ん!?」


 人が水底に沈んでいた。

 思わずホースを落とし、"それ"も再び水底に沈む。心臓はバクバクと脈打って、手も足も中々動かなかった。


「え、えと、えと」


 引き上げなければならないのだろうか。

 水死体、どういうものなのだろうか。一瞬だけ見えた腕は、まるで生きているかのようだったが。


「う、うう……」


 1人で来たことを猛烈に後悔した。


「うううう……!」


 でも、やらなきゃいけないんだろうな。大きく息を吸って、ホースに手を伸ばした。


「…………あれ?」


 ホース、さっきよりも持ち上がっているような。


 気のせい――いや今も持ち上がっていって




 ――――水しぶきをあげ、水死体が立ち上がった。


「え――――?」


 水死体の口から水があふれ出す。せき込んでいるようだった。これは


「生きてんじゃん! ビックリしたあ!」

「ゲホ、ゴホ! ――――え、何?」


 男の人が、私と同じように驚いていた。

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