表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
CosMOS  作者: 螢音 芳
Chapter.6
PR
76/144

C-2.箱舟の奪い合い~タイタス奪還戦~ (前編)

「結局、カエデたちと交わした密約は、貴族院側に利益があるものになってしまったな」

 シュウが当時のことを振り返って話す。

 サザン側として、サリの安否や動向を把握することができたことは大きかった。特に精神面でどれだけ救われたかはわからない。

「ただ、そのスパイ行為も早々にばれることになってしまったんだよな」

 ハヤトが苦い表情を浮かべつつ、グラスを握る手に力を込める。

 あの時、ノトス側でサザン側と内通していることを知っていたのはカエデ、ハヤト、リクの3人とそしてノトスのアルファ小隊の他のメンバーだけだ。

 外部の人間によって密告されたものと確信している。

 そして、密告の結末は……。

 ハヤトが今でも脳裏にまとわりつく嫌な光景を思い出した。


 ケートスでノトスのプローム乗りとサザンのプローム乗りで会話していた頃、時を同じくして、ヴァンレスト大学の人文学部の研究室に複数の人間が侵入していた。

 夜間潜入用に黒づくめの服装をした集団であり、それぞれ銃などの武装を装備している。その集団の最後尾に明らかに戦闘慣れしていない人物が混ざっていた。

 その人物へ武装集団のリーダーらしき人物が話しかける。

「ミトベ教授。持ちだす文献について教えてくれ。あまり大量には持ち運べないから最小限で頼む」

「わかった。そこの金庫と、机に近いそばの棚だ。今開けよう」

 そう言うと、率先して武装集団に対して声をかけていく。

 彼らは、ミトベ教授の国外逃亡とそれに伴う私物の回収のために研究室に潜入したのだ。

 ミトベ教授の指摘した本棚にはさまざま専門書のほかに手作りの童話があった。

 題名はバベルの塔や、楽園追放、モーゼの十戒、ノアの箱舟。旧約聖書から引用した話ばかり。つまり、地球の知識に関する本であった。

(地球の知識、か……)

 武装集団のリーダー、イヴァンは数か月前の出来事を思い返した。

 地球の知識を正確に持っている唯一の家族と邂逅した時のことを。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ノトス領、共和院官邸の霊廟にて。

 フェアリスによって精神体を回収された後、ここでノトス所属の住民はロストから復活する。

 エイジス海域の諸島にて敗北を喫したツインハックの乗り手、カレンは目を覚ますと叫んだ。

「うあああああああああああああっ!!」

 復活したばかりだというのに、喉も裂けよと言わんばかりに叫ぶ。

 彼女が叫ぶのはプローム戦に負けた悔しさだけではない。

 圧倒的なプロームの性能の差、理不尽ともいえる差に対する怒りからだ。

「あんな、スーパーロボット持ち出されて、工業用の重機で立ち向かえって無理にもほどがあるだろう!」

 そう言ってカレンは怒り狂う。自分が話した単語がこの惑星由来の物ではないと気づかないままに。

「なるほど、やはり見立ては正しかったわけか」

 ふいに霊廟に響いた声にカレンが半眼になる。

「誰?女性の寝起きを眺めてるなんて相当に趣味が悪いと思うんだけど」

 不機嫌な声でカレンが問いかけると、声の主はくつくつと笑った。

「それは申し訳ない。ただ、新たに目覚めたものがいると聞いてうれしくなってしまって。それも強力なプローム乗りであれば、尚更」

「何その、目覚めたって?」

 問いかけると、暗がりから長いコートまとった人物が近づいてきた。表情はフードを被っているためによく見えない。

「君が言ったスーパーロボットって何のことかな?」

 長いローブの人物が返答ではなく、反対に問い返すと、カレンは、無視かよ、と不機嫌に呟きながらも答える。

「スーパーロボットって、現実ではありえないほど機能が高いロボットのこと。自由にスラスターコントロールできるとか、動作が人間の動きに限りなく近いとか」

「ちなみに、その情報はどうやって知ったのかな?」

 問いかけられて、カレンは、それは……と言葉を濁した後で眉をしかめた。

「知らないよ、わかるのはそれだけ」

「そうか。まあ、無理もない。再び記憶にロックがかかってしまった状態と言えるからね。君が得た知識はロストする際に地球の自身にアクセスしてしまったか、それとも精神体に強く焼き付いた記憶から引き出したものと思われる。そして、その知識は地球のもの、いわばフェアリスからすれば禁忌と言える知識なんだ」

 悦に入るように長いコートをまとった人物が語っていく。

「地球での知識を一部でも得ることができた者、それを目覚めた者、と僕たちは呼んでいる」

「目覚めた者? 怪しい宗教ならお断り願いたいんだけど」

「そう? 得た地球の知識は断片に過ぎないけど、他の者と寄せ集めていけば、技術などありとあらゆる面でこの世界の他の人間とは一線を画すことになり、有利に立てる。次に彼と再戦したときに役に立てるかもしれないけど?」

 長いコートを着た人物が提案すると、カレンがからかうような顔から真顔になった。

「本当…か?」

「ああ、本当だとも、どうだい、僕らとともに来ないか?」

 そう言い、長いコートの人物が手を差し出した。

 カレンは一瞬躊躇した後、悩んだ末にその手を取る。

 目深に被ったフードから覗く口が歪んだ微笑を浮かべた。

「ようこそ、アダムの林檎へ」



 ノトス共和院官邸のある首都付近の喫茶室にて、エリートサラリーマンの風貌をした青年が優雅にコーヒーを飲んでいた。

 机の上にはパソコン、耳にはコード式のイヤホンをつけて傍目から見ると音楽を聴きながらパソコンにて仕事をしているように見える。

 だが、よく見るとその青年の口元が動いているのがわかるだろう。

 この世界ではオーバーテクノロジーであるマイク付きイヤホン、衛星を経由した通信で彼は会話をしていた。

「目覚めたと思われる人物と新規契約をとることができたよ。しかも、今回は大物。プローム乗りのツインハックだ」

 表情は変わらないが、嬉しそうな口調で青年が話す。

『ノトスのフェアリスから急に精神体の容量が増えた人がいるって情報をくれたからね。もしかしたらと思ってたんだ。当たってよかった』

 パソコンのウィンドウに映っているのは豹の耳を持つグラマラスな女性、半人型の形態をとっているフェアリスだ。

『便利だね、この衛星通信って。わざわざ出向かなくてもこうしてお話ができるんだもの。地球の技術も持って来ようって言ったのに、怒りんぼのガイナスが削っちゃったのが本当に腹立つ』

 ぶーぶーとフェアリスが文句を言う。

『ねえ、イサミもそう思うでしょ?』

「便利だとは思うけど、無いならないでどうにかできるからね。あんまり」

 対して男性は苦笑しながら答えた。

「それより、君に会えない寂しさの方が問題だな。リジュ」

 熱っぽくイサミ言うと、リジュがとろんとした表情になる。

『私も、イサミ。切なくて胸が張り裂けそう』

 2人がやり取りしているところへ、後ろから声がかかる。

『2人とも、申し訳ないが、その辺のところは帰ってからにしてくれないか』

 話しかけたのはノトスのブラボー小隊の隊長を務める男性だ。

『早めに情報を流しておいてよかった。もともとカレンには時折、本人が無自覚ながらもプロームに関する専門用語を深いところまで話していたから素養はあると踏んでいた。無事に接触できたようでよかった』

「あんた自身は目覚めているわけじゃないのに物好きだねえ」

 イサミが呆れたようにつぶやく。ブラボー小隊の隊長は、地球に関する知識を自力で得たわけではないものの、彼らのリーダーであるイヴァンに声をかけられてアダムの林檎に参加した変わり種だった。

『最初聞いたときは眉唾な話だったがな。フェアリスによって地球からこの惑星に転移されたこととか、戦争を続けるようにフェアリスに操作されていることとか。だが、そう思って世界を見ると客観的に物事を見ることができて立ち回りやすい』

 隊長が言うと、イサミは表情を変えないながらも内心でほくそ笑む。

「確かに、そう思うと各勢力の動きとか見てておもしろいね。本当に戦争ゲームだ。ユエルビアのガイナスはとにかく人間に対して復讐したいだけの馬鹿。シーナのイスルギは保身だけに走ってて、シーナの王族は哀れな犠牲者。サザンは真実を知らないながらもよく奮闘している。そして、ノトスのヤムナハは我々の一員だから戦争ゲームにあえて興じるメリットをよくわかってる。その方が世界の経済が回るからね」

 イサミが世界のそれぞれの勢力のことを分析しながら話す。

『それを聞くたびに不思議なのだけど、イサミは私達に対して怒らないの?』

「ひどいなあ、リジュ、僕はそこまで薄情な性格じゃないよ。リーダー曰く、その約束を反故にしたのは僕ら人間の方じゃないか。政府が勝手に決めた約束の上で、だけど。でも、こんな面白い世界に移してくれたのだから、僕としては感謝しかないよ」

 聞けば、向こうの世界では残り少ない資源をめぐって貧富の差が生まれ、戦争に明け暮れて多数の死者も持続的に生じていたというではないか。

 だが、この世界では資源の心配はないし、死ぬ心配もない。民衆のヘイトや支持のコントロールをするため、そして自身の弑逆心を満たすために戦争を用いることができるのだ。

「本当に殺しても死なないシステムは素晴らしいと思うよ。おかげで、どれだけ殺しても問題はないのだから。まさにゲームを体現した世界だ」

 恍惚としながら、イサミが言う。

 もし、問題があるとすれば歳をとらない点、つまり子どもが子どものままということだが、そんなのは運であり、あきらめてもらうしかないとイサミは思っている。向こうでも障害や才能など、人は能力的に平等ではないのだから。

「だから、この世界から地球に戻る? 考えたくもないね。フェアリスを責める? こちらもだましておいてどの面を下げて言うんだか」

 イサミがはっきりと言いきった。

 その様子を傍から見ててブラボー小隊の隊長は危険を感じていた。安易に戦争が繰り返される世界がどれだけ恐ろしいことなのか、青年もフェアリスも理解していない。

 だが、そこは今話すべきことではないため、あえて黙っておくことにした。

「そう言えば、我らがリーダーはどうしたんだ?いないみたいだけど」

 イサミが問いかけると、ブラボー小隊の隊長がうなずいた。

『ノトスのアルファ小隊とサザンの貴族院が接触を持ったとタレコミがあって、そのタレコミをした人物に会って確かめに行っている』

「ありゃりゃ、スパイ行為ってことかな。重大な軍規違反じゃないの?」

『そうは言うものの、相手が相手だからな。アルファ小隊は強く、ノトスにとって重要な戦力。兵士たちの信頼も厚い。迂闊に証拠もないまま軍法会議にかけようものなら兵士たちから反発をもらう』

 話を聞きつつ面倒くさいな、とイサミは思う。

 人望のある腕利きほど厄介なものはない。周りから協力を得て隠蔽工作をしているなら、下手に証拠もないまま突き上げれば、逆に政府は信頼を失いかねない。プローム乗りとしての実力も高いなら、他の国に移られた時に脅威になりかねないので、おいそれと手放すこともできない。

『そこで、アルファ小隊をケイオスが多いと言われるエイジスの激戦区に送り込もうという話になってな。リーダーはタレコミを確認するついでにヤムナハの方に一つ知恵を吹き込みに行っている』

「へえ、面白そうだ。筋書きを教えてよ」

 そう言うと、イサミは表情を変えないまま、無邪気に問いかけた。



 イサミ達がカフェで会話してから3週間後。

 アルファ小隊は軍の上層部からとある指令が下された。

 シーナを牽制するための橋頭保として、エイジス諸島海域にある大陸を制圧せよ、というものであった。

 指令をくだされたアルファ小隊は戦慄した。

 指定された大陸は本来小隊で制圧作戦をするには広大すぎる上、エイジス海域はケイオスの巣窟と化している。いわば行って死んでこいともいえる理不尽な命令であった。

「どうすんだよ、これ……」

「もしかして、例の件がばれたのか……」

「この中の誰かがばらしたんじゃねえよな」

 全員が疑心暗鬼になる。サザンから極秘裏に物資や情報の支援を受けていた。そのことを小隊全員知っている。この中の誰かが情報を政府に内通した可能性は十分にありうることであった。

「カエデ、どうする?」

 ハヤトに問いかけられ、カエデは悩む。

 明らかにこれは罠だ。

 スパイ容疑があっても大っぴらに軍法会議にかけるわけにはいかない。

 ならば、絶望的な戦況下に送り込み、ロストをさせて起き上がったところを捕縛し傀儡にする。

 命令に従わなければ軍規違反であり、捕縛される理由を政府に与えることになる。

 受けても拒否しても地獄という、八方塞がりであった。

 カエデが小隊の他のメンバーを見る。このメンバーはそれぞれケイオスがらみで困窮した事情を抱えている。それゆえに政府に対する反抗心は強い。だれかが裏切ったなどと、考えたくはなかった。

 だからでこそ、ロストさせて戦闘奴隷にするようなこともさせたくない。

「カエデ君……」

 心配そうにリクがカエデのことを見つめる。

 カエデは逡巡した後、うなずいた。

「まずは、僕、ハヤト、リクさんの3人で大陸の偵察に向かう。その上でケイオスの被害状況を確認した上で軍の上層部に報告する。彼我の差が大きいことを喧伝して小隊で突撃することがどれだけ無謀か、どれだけ装備が必要なのか訴える」

 カエデの提案に小隊のメンバーが驚愕する。

 それはかなり危険だ。しかも、運よく戻ることができたとしても訴えが棄却される可能性もある。

「とにかく時間を稼いでみる。もし、その間にサザン側がノトス政府に牽制してくれるなら、この作戦そのものが中止になるかもしれない」

「わかった。なら、俺の方からサザン側に連絡をとっておく。念のため、こちらが以前のようなやり取りができなくなる可能性も伝えておく」

「ありがとう、ハヤト」

 心配そうな表情で小隊のメンバーがカエデのことを見る。

「なるべく、頑張ってみる。けど、万が一のこともあるかもしれない。留守は任せたよ」

 カエデがお願いするように言うと、小隊のメンバーがうなずいた。

 準備をして1週間後、カエデたちはエイジスへと向けて出発した。


 そして、三人の後を追うように別の飛空艇がエイジスへと向かったのだった。



 エイジス諸島海域。

 ちょうどケートスの真南に位置する巨大な大陸。地球でいえばオーストラリア大陸にあたる箇所。その箇所は一部のフェアリスの間では、タイタスと呼ばれていた。

 アルファ小隊のあとに続くように一人用の飛空艇に乗った男性が目標地の大陸を視界に入れると驚く。

 そこでは、すでに火砲が応酬しあう、激しい戦闘が繰り広げられていたからだ。

「一体どことどこが戦闘をしているんだ?」

 この海域では、ノトス以外の勢力はまだ立ち入ろうとしてないはずだ。

 考え込んでいたところで、ふと男性は気付いた。

 先日ノトスのツインハック、そしてアルファ小隊が未知の勢力と交戦したと言っていた。どこの勢力と接敵したのかはツインハックがロストしたために不明となってしまったが。

「ならば、黎明の旅団か?」

 つぶやいたところで、いや違う、と男性が首を振る。

 黎明の旅団にここまで大規模な砲撃戦が出来る武力はなかったはずだ。

 目的の海域に近づいて、男性はさらに驚愕した。

 火砲の応酬をしているのは大陸と島々だったからだ。

 巨大な大陸の一辺を囲むようにいくつかの島が並び、島々の背後には大陸かと見間違うような巨大な島がさらについていた。

 思わず男性は地図を取り出し、地理を把握しようとする。

 地図と照合させてもこのような奇異な地形をしているところはなかった。

「これは一体…」

 男性が驚愕していたところへいきなり飛空艇が揺れた。

 かなり距離が離れていたはずなのに流れ弾に当たったようだった。

「いかん!」

 なんとかバランスをとろうとするが翼の推進器をやられたようでうまく体勢を戻すことができない。そのまま、男性は目的の大陸とは離れた小島のほうへと不時着した。



 大陸に向かって砲撃を撃ち込んでいる小島、テラプロームのオルカの内の一つ、その海岸沿いにて、フェアリスのプローム部隊を連れた白い機体が縦横無尽に暴れまわっていた。

「なんで攻め込んだはずなのに、攻め込まれるかな!」

 白い機体、ファーヴェルのコクピットにてハルカがいらいらしたように叫ぶ。

 他の機体も黒い機体と戦闘している。黒い機体はどれもまるで量産機のようなそっくりさだ。

 ただ、動きは武器をむちゃくちゃに振り回していたり、拳で殴りつけようとしたり野性的。極め付けは、掴んだプロームに対して、頭部の一部が口のようにぱかあ、と開きかみつこうとした。

 ファーヴェルが接敵して、フェアリスが操るプロームに食らいつこうとした黒い機体を背後から斬り、動きを停止させる。

「若、ありがとうございます!」

「だいじょうぶ?なるべく武器のリーチぎりぎりで戦って!」

 感謝するフェアリスに対してハルカが指示を飛ばす。

 これら黒い機体はプロームに見えているようで、実はケイオスであった。

「まさかタイタスがケイオスに乗っ取られていて、生産施設を奪われているなんて思わなかったのです」

 ノインが悔しそうに言うと、ハルカも冷や汗をかきながらうなずく。

「おまけに、プローム内部にコアを作って集積回路のようにして操ってるなんて」

 地球の地図でいえばフィリピンにあたるところに眠っていたテラプローム、オルカを回収したはいいものの、その後タイタスの奪還のために南下したら、いきなりタイタスから砲撃を受けたのだ。

何があったのかフェアリスが調べたところ、タイタスそのものがケイオスに乗っ取られ、攻撃してきているということが判明した。

『ケートスの時には、私が思考をそぎ落とされながらも、コントロールは奪われないようブロックしておりましたからね。タイタスには私のようなコントロールするフェアリスはいませんから』

 ツバキがケートス奪還の時との差異について通信機から補足を入れる。

「ということは、内部のコントロールを取り戻さない限り無限に攻め込まれるってことだよね?」

『その通りですね」』

 ハルカの問いかけにツバキがうなずくように言う。

「具体的に言えば、こちらも集積回路を作って、タイタスの中枢に侵入し、それを埋め込まないといけないということですか…」

 イツキが具体的にやらなければいけないことを話し、それを聞いてハルカがげんなりする。今応戦しているだけで精一杯なのに潜入しろ、というのだ。

「それなんて無理ゲー……」

「まったくなのです。勢いのままなんとかなる話ではないのです」

 ハルカとノインが戦況から訴えかけるように言う。

『とりあえず、応戦しつつ一旦退避しましょう。上陸したプロームは重力波で落とせるので。仕切り直します』

「「了解」」

 各プロームもイツキからの通信を聞いて、上陸したプローム機の応戦をやめ、一旦退避しようとした。

 そこへ。

『ハル、すぐ近くで所属不明のプロームが戦闘している模様。確認をお願いするのです。でないと、ケートスの重力操作ができないのです』

 ノウェムからの要請が入った。

 所属不明機?

 訝しく思いつつ、ハルカはプローム部隊に退避命令を出した後で、現場に向かった。

 すると、そこではグレーの迷彩柄のプロームが黒いケイオス侵食された3機のプロームに包囲されていた。グレーのプロームの武装はアサルトライフルで、応戦するのがやっとのようだ。

「ノイン、蹴散らすよ」

「了解なのです」

 人が襲われていることを察知したハルカはファーヴェルを加速させ、あっという間に一機の背後をとると、剣を一閃させコクピット部分をたたき切る。

 こちらに気づいたケイオスのプロームに対して、行動させる前に正面から接敵し、同様にコクピット狙いで薙ぎ払う。

 二機を相手どっているところへ、ファーヴェルを攻撃しようと3機目の黒いプロームが迫る。それを、振り向きざまに回し蹴りをたたきこみ、転倒させ倒れこんだところへ剣を突き立てた。

 この間、わずか10秒程度。

 まもなく3機目も動かなくなったところでようやくハルカはため息をついた。

「そちらのプローム機、だいじょうぶですか?」

 緊急用の近距離通信でハルカが呼びかける。

「あ、ああ。おかげさまで無事だ。君は?」

 緊張した中年男性の問いかけにハルカがなんと答えたものか一瞬悩む。

「この近辺に住んでるプローム乗りでハルカって言います。機体コードはファーヴェル。あなたは?」

「その声の感じは少年か、驚いたな……。失礼、そうではないな」

 驚いた声は、一度断ったあとで自己紹介をした。

「俺の名前はイヴァン、機体コードはエクリプス。無所属のプローム乗りだ」


 

次の投稿は5/8を予定しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ