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1、現世さん、さようなら

これは一体全体どういうことだろうか……

目の前で繰り広げられる摩訶不思議な出来事に、先程から私の頭はショート寸前。


考えろ、考えろ、私!


いくらそう叱咤したところで私が求める答えは見つからない。否、それを受け入れられずにいるといったほうが良いだろうか。


こんな摩訶不思議なことがあってはならない!


そう心では思うのだが、それが今まさに目の前で起きている。いくら現状から目を背けようとしても背けられない現実。


あー……どうしてこんなことになったんだろう……私はただ占いをしていただけなのに……


そう。私こと佐々(ささら) 真咲(まさき)は、そんじょそこらにいるなんの変哲もない保育士歴6年目の女だ。彼氏いない歴=年齢なんて決して、断じてない…と言いたいとこだが、悲しきかな現実は彼氏いない=年齢だ。


26にもなり、社会人として保育士としても6年のキャリアを培った。もう仕事にも十分慣れてきた今、仕事を理由に恋が出来ないという言い訳は通用しない。と後輩ちゃんから叱咤されたのがつい最近。そんな2つ年下の後輩ちゃんも今年で寿退社。それに便乗するがの如く私の周りでは現在結婚ラッシュが続いている。


このままでは不味い!と思って何度か街コン、婚カツ、紹介、出会いバーとやらにも足しげく通ったこともあった。そんな中で気になった人が居なかったわけもなく、何人かとは連絡を取り合ったり、食事をしたり映画を観に行ったりとデート紛いのこともしてみせた。でも最終的にいつも最後までは進まずに終わる。その繰り返しに嫌気と現実逃避した私は占いに手を出すようになった。と言っても占いに盲目するわけでもなく、遊び感覚といったほうが良いだろうか。最近はスマホやPCがあれば簡単に占うことが出来る。


それも[一部無料]と言う文字をクリックするだけで本当に無料で一部だけ見ることが出来るのだ。一部無料と言う言葉通り本当に一部だけ、一番気になるところは有料でしか見ることが出来ず当たり前ながら策士だなってしみじみと思っていた矢先、事件は起きた。


いつものように[結婚相手占い]や[結婚時期占い]と言ったワードで無料占いを楽しんでいた。専ら私はスマホで調べてる為いつも寝る前の現実逃避タイムと称して楽しんでいたのだが……


今日はタロット占いをしよう。

そう思い、タロット占いのサイトをクリックした。一瞬で画面は切り替わりタロットカードがシャッフルされる。好きなタイミングでクリックして止め、シャッフルを終了する。次にタロットカードをこれまた好きなタイミングでクリックして3つの山に分ける。3つの山を好きな順番にクリックしていき下から順に重ねて1つの山にする。無料なのに無駄に凝っているな…そう思いつつ指示されるがままにクリックしていく。


最後に1枚のタロットカードが表示された。


「吊るし人って。」


人が縄で逆さに吊るされているカードだった。


画面にはカードの説明と同時に、カードだけでは到底知ることが出来ない情報が書かれていた。否、これがタロット占いなのだろう。素人では到底理解出来ない情報を知り得ることが出来る、そう言う物なのだろう、多分。


175センチ、3人兄弟次男、右頬に黒子、つり目、お金持ち


いやいやいや、最初の4つまでの情報はまだ許そう。でも最後のお金持ちって何よ。なんでそれだけ抽象的な表現なのよ…


苦笑いしながら画面をスライドしていく。×××××××表記が大部分を占めている。云わずもがな××××××で表示されているところは有料版で読めない箇所だ。当然ながら一部無料で見れる情報は極僅か。


結局知り得た情報は吊るし人のカードの説明と5つの情報。


まあ無料だから仕方ないなと思い、次なる占いをするべく戻るをクリックしようとしたその瞬間、突然画面いっぱいに読めない言語が表示され始めた。


ちょちょちょ!?ウイルス!?ウイルスなの!?


と焦っている間にも無情に表示され続ける読めない言語……


必死にスマホの電源を落とそうとボタンを長押ししたが読めない言語は尚も表示され続ける。26にもなって泣きそうになりながらスマホ弄っていると、突然画面がより一層光りだし…否、読めない言語が光を伴いながら浮かび上がり、次の瞬間には読めない光り輝く言語が私の身体に巻き付き始めた。


此処に来て突然のファンタジー要素に26にもなって何中二病みたいなことと、遂には涙が流れたその瞬間、私は現世から姿を消したのだった。


「先輩!ちゃんと恋してくださいよ!」

「いやあさあ?もう現世は諦めたのよ、私。来世に期待なの。」


現世から消えるその瞬間に思い出したのは、後輩とした下らないそんな会話だった……

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