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現在特異点のライトハンド  作者: 皆沢 実那希
一章 二つの可能性の分岐点
2/2

02

「ただいまー。」

「お帰りなさ……ってあれあれ?友達~?」

「いや、ちょっと色々あってね。」

「あらそっかー。取り敢えず上がって行ってよ。お茶位出すからさ。」

「「お邪魔します。」」

 そのまま三人は、玄関から二階の拓斗の部屋へ向かう。

「さっきのおじさんは、拓斗さんのお父さん?」

「ううん、違うよ。元は親戚の叔父さん。」

「両親は外出中なのか?」

「それも違う。幼い頃、両親は事故で亡くなったから……。」

「あっ……。ごめんなさい。辛い事思い出させてしまって。」

 白服の女は黒服の男の脇腹に重い一撃を喰らわせた。

「グフっ!!?」

「ん?どうかした?」

「いえ何でもありませんアハハ。」

 そうこう話している内に、部屋に辿り着いた。取り敢えず部屋に入ると、女は空いてるスペースに姿勢良く、正座をし、男はベットに座った。

「君、意外と初対面なのに、自分の部屋みたいに使うね。」

「君じゃない。俺の名前は、獅子野恭司。」

「あ、ごめん。えーと……恭司って呼んでいい?」

「好きに呼べ。」

「それから君は……」

「私の名前は、花谷結菜です。」

「じゃあ、花谷で……」

「何で私は名前じゃないんですか?」

「いや、いきなり初対面の女性に対して、呼び捨ては……」

「大丈夫です。別に私、気にしないので。」

「でも……」

「名前で呼んで下さい。」

「……はい。」

 結菜から見える謎の「名前で呼んでください。」オーラに、気が弱くなってしまい、名前で呼ぶ事になった。

「取り敢えず、まずは俺達、二人の知る信崎拓斗について話す。まずは結菜、お前からだ。」

「何か言い方引っかかるけどまぁいいや、えーとですね。私の知る拓斗さんは、この時代から数か月後に、ある敵と出会います。そして数年に渡って決着が着きます。ですが、まだ残党も残っていて、拓斗さんは私の居た時代でもなお、活躍し続けています。」

「じゃあ、その敵の残党狩りを、僕は君の時代で行っていたんだね。」

「はい。ですが、時間を遡って来て、こんな言い方は適切では無いかもしれませんが……」

「何かあったの?」

「実は最近、未来の貴方が、敵と闘った時に得た力を、制御出来なくなってるみたいなんです。」

「そう。でもそれは、まだ確信になってる訳じゃないみたいだし、置いておこう。」

「じゃあ次は俺だな。」

 恭司は、腕を組みながら腰を落とした。

「うん。お願い。」

「俺の知っているアンタは、さっきその女が話した通り、この時代から数か月後に生じる敵を倒す。だが、何時からか。いきなり街を壊滅させた。次第にそれは広がり世界規模になった。世界中の軍隊はアンタを本気で殺しに掛かったが、核でさえ、アンタを倒せなかった。」

「それは何ていうか、怖いな。」

「怖いのはこっちの方だ!この時代に比べて、人間の人口の六七割りが減少したんだ……。殆どがアンタに殺された。勿論、俺の仲間も!」

 恭司は怒りを顔に出し、興奮のあまりか、その場に立ち上がった。

「待ちなさい!まだ話は終わっていません!貴方の時代の今現在の拓斗さんは、何をしているのか、説明して下さい。怒るならその後でもいいでしょう。」

「分かった。此奴は、俺の時代で現在日本の何処かに住みついてる。そして生き残っている人を……殺し続けている。」

 悔しそうに強く拳を握り、喋る恭司の様子を見た拓斗は、彼の気持ちを察した。自分が彼に対して、謝り切れない程の辛い事をしてしまった。

「そっか。二人共、有難う。特に恭司、君には本当に辛い思いをさせたみたいだね。」

 復讐の相手からの同情に恭司は怒りが抑えきれなくなり、拓斗の胸倉を強く掴んだ。

「止めなさい!恭司。」

「うるさい!!此奴は、此奴にだけは同情されたくない!俺は元々お前を殺す為にこの時代に来たんだ。お前の事は、俺にとって復讐対象でしかない!そんな奴に、何故同情されなくちゃいけないんだ!?」

 彼の目を拓斗は、じっと見つめた。そして理解した。彼は憎しみ囚われ、動いている事に……。

 彼を如何したら少しでも、憎しみから解放できるだろうか?

 そして自分なりに答えを見出した。

 拓斗は、胸倉を掴んでいる彼の手に、自分の手を重ね、口を開いた。

「恭司。そんなに僕が憎い?」

「ああ。今すぐ殺したくて溜まらなく憎い!!」

「じゃあ、殺していいよ。」

「は?」

「拓斗さん!?」

「ただ、ほんの少し……ほんの少しでも、憎しみ以外の感情があるなら。もう少しだけ待ってくれないか?」

「何故だ?殺してもいいなら今すぐ……」

「見極めてほしいんだ。僕が本当にその最悪の魔王に成るのかどうか……この時代からまだ数か月は残っているのだろ?だったらその闘う時、見て、決めてほしい。もし、殺すという結論に至ったのならば、その時は、抵抗せず、君に殺されると誓おう。」

 真っ直ぐに彼の目を見つめる拓斗に対し、恭司は我に返り、手を放そうとする。

 だがその手を拓斗は、決して離さない。そしてただ只管見つめてくる。

 その瞳をしばらく見つめると、恭司は理解した。この人は、本当に死ぬ覚悟を持ってると……。

「分かった……。今、この時代のアンタを殺すのは止めた。」

「恭司。」

「勘違いするな。俺はこれからアンタが力を手に入れる時代、此処から三か月後の時代に行く。そして結果が変わったか見てくる。変わってなければ殺す。」

 拓斗が手を離すと、そのまま直ぐに部屋から出て行った。

「拓斗さん。私も未来がどうなっているのか見に行かなくちゃ……。」

「うん。じゃあね。」

「はい。また未来で。」

 別れを告げると結菜も続いて部屋に出て行く。

 さっきまで少しだけ煩かった部屋が、静かになった。

 拓斗はベットに飛び込む様に横になる。

 自分の未来の結末。敵を倒して英雄に成っている自分。

 もう一つは世界を滅ぼす魔王。

 正直、全然ピンと来ない。

 だが全ての始まりは、三か月後。そこで道を間違わなければいいだけだ。そうだ。

 そう自分に言い聞かせ、睡眠に入った。



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