表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

第一話 アンドロイドの少女

 21xx年、四月二十日。

 抱えていた仕事が一段落して部署に戻る前に、僕はある喫茶店でコーヒーを飲んでいた。

 喫茶店の名は、カフェ・ド・メリーという。最近できた喫茶店だ。

 よくこの喫茶店の前を通ることがあり、一度入ってみたいと僕は思っていた。

 今日、その願いが叶ったわけだ。

 店内はレトロで、ヨーロッパ風の洒落たところだった。

 60代くらいの外見をした白髪のマスターは優しそうで、また店内に響くピアノの演奏曲が落ち着きと安らぎを醸し出していた。

 ここのコーヒーはブレンドされた豆を使用していて、苦くてコクがあり、セットで頼んだチーズケーキもしっとりとして甘く、これがまたコーヒーとマッチして嗜好だ。

 ここの常連になろうかな、と僕はコーヒーをすすった。


 「あとどれくらいかな?」


 と僕は左手の腕時計を見て時間を確認した。まだ30分ほど時間がある。

 本でも読んで満喫するか、と思い僕はカバンから本を出して、読み始めることにした。

 しばらく本を頁をめくり、切りのいいところで少し冷めたコーヒーすすったり、食べかけのチーズケーキを食べた。

 また続きを読もうとして本に手をかけたそのとき、斜め向かいの席からこちらを睨むかのように見ている人物がいることに僕は気がついた。

 こちらを見ていたのは僕には見覚えのない黒髪の少女だった。

 黒いミニスカートを履いていて、腰まで伸ばしているであろう長い後ろ髪、前髪はぱっつんに切られ、瞳はくりっとしていて大きく、目の下には大きな涙袋があった。

 いや、クマかもしれない。まだ幼い顔立ちをしているが、どこか大人っぽい雰囲気をもっている小柄な少女だった。


 「あのー、、、なにかようですか?」


 と僕はこちらを睨みつけてくる彼女に尋ねた。

 すると、彼女は急に慌てふためて、テーブルに置いてあったメニュー表で顔を隠した。

 なんだこの子?、と怪訝そうな顔を浮かべながら、残りのコーヒーを僕は飲みほした。

 もうすぐ時間かな、と腕時計で時間を確認する。

 

 「やば!戻らないと」


 喫茶店に入ってから、もう50分も過ぎていた。

 本に夢中になっているうちにどうやら時間が過ぎていたらしい。僕はすぐに席を立ち、レジで会計を済ませて、喫茶店を出た。

 すぐに部署に戻るために、商店街を通り、部署の近くの公園を僕は歩いていた。


 (なんか、さっきから誰かにつけられているな、、、)


 喫茶店を出て少ししてから、誰かに後ろをつけられていることに僕は気づいていた。

 でも気づかぬふりをして、僕はいままで歩いていた。


 (いつまで、ついてくるのかなー)

 (なんで尾行なんかしてるのか問い詰めてみるか、、、)


 僕は公園の曲がり角で待ち伏せをして、その人物に理由を問いただすことにした。

 そしてその人物が曲がり角まで小走りできたその時に、僕はその前に立ち塞がり道を遮った。


 「あの、なんで僕をつけているんですか?」


 僕は普段より低い声でいった。

 どうやら尾行してきていたのは喫茶店で睨んできた少女だった。

 一瞬驚いたが、顔には出さなかった。

 喫茶店の時にはしていなかった黒縁メガネを彼女はかけていた。

 さっきは目が悪かったため睨んでいるように見えたのかな?、と僕は思った。

 近くで見ると顔は綺麗に整っていることがわかった。


 「その、えーと、、、」

 「わたし、、あなたのパートナーです!」


 人差し指と人差し指の先をこすり合わせて、もじもじとしながらそう彼女はいった。


 「え?」

 「パートナー?」


 この子は何言ってるんだ?、と僕は怪訝そうな顔を浮かべた。

 どうやら今日は疲れているみたいだと、僕は自分に言い聞かせた。


 「そう、あなたのパートナー」と上目づかいで彼女はいい

 「ねえ、きいてる?」


 首をかしげながら彼女は僕の顔を覗き込んでいる。

 ハシバミ色をしたその瞳に吸い込まれそうになった。


 「ああ、、きいてるよ」


 当惑しながらも、僕は平静を装った。


 「パートナーってどういう、、、」といいかけた時、上司の牧野からの映話が鳴った。


 僕はため息をつき、人差し指にはめた携帯型映話リングで画面を表示させて、映話に出ることにした。


 「はい。海野です。」


 映話越しに牧野が顔が現れた。


 「疲れてるところすまないな」


 上司の牧野は長い髪を後ろで束ねた女性で、社内では美人で有名だ。

 元マヒィアの幹部だった経歴持ちで、目つきと口が悪い。

 もうすぐ三十路となる今でもまだ独身だ。

 早く結婚したいと嘆いていて、よく合コンに通い詰めていることを僕は知っている。


 「そうそう、おまえに合わせたいやつがいたんだけど、行方不明になっちまってなー」

 「あ、そうだ。彼女そっちにいってないか?」


 牧野はめんどくさそうにいった。


 「彼女って、もしかして、、、」


 僕は少女を一瞥する。


 「えーと、黒髪で長い髪で、、、」

 「そうだ」とぶっきらぼうに牧野がいう。


 少女を見ながら僕はつづけた。


 「目がクリっとしていて、、、」

 「そうだ」

 「黒いミニスカートを履いていて、、、」

 「ああ、そうだ」

 「かわいらしい女の子ですか?」

 「へー、かわいいと思うのか」


 映話越しに、にやにやしながら牧野がいった。

 自分の発した言葉を思い出して恥ずかしくなった僕はどうしたらいいのかわからず、少女を一瞥すると彼女の顔が赤くなっていることに気付き、さらに恥ずかしくなってしまった。


 「あと、特徴としては目の下にクマみたいなのがあるか?」と牧野。

 「あります」

 「じゃあ、そいつがお前に合わせたい行方不明のやつだよ。まったく、、、」


 安心したといわんばかりに牧野はため息をついた。


 「まあ、おまえと一緒なら安心したよ」

 「ああ、そうだ。そいつがおまえの相棒になるやつだから、よろしく」


 と今思い出したかのように牧野がいった。


 「え?相棒?」

 「この子がですか!?」


 僕は驚いてすぐに訊き返した。


 「そうだ。相棒のアンドロイドだよ」

 「本当はおまえが署に戻ってから合わせようと思っていたんだが、、」

 「まあ、もう会ったなら仕方がない。あとは任せた」と牧野は言い切り、


 「まってください!どういうこと、、、」


 と僕が訊こうとする前に、映話を切られてしまった。

 どうするか、と僕は空を見上げながら考える。

 空は晴れていて、雲一つない快晴だった。


 「あのー?」


 申し訳なさそうに彼女は僕の顔を上目づかいで覗き込む。


 「君が僕の相棒なの?」


 僕は彼女の顔を見て彼女に訊いた。


 「うん。パートナー」


 と小さく彼女はうなずく。


 「君、名前は?」と小柄な少女に僕は訊いた。


 「わたしの名前は汀です」と恥ずかしそうに地面を見ながら、

 「よろしくお願いします。拓斗」


 と上目づかいで彼女はいった。

 どうやら僕の名前は知っているらしい。


 「ああ、よろしく、、、」

 「とりあえず、署に戻ろうか、、、」と僕はいい


 二人で部署に戻ることにした、、、

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ