女神は私に微笑まない。
我慢してきた女がついに前世も含めてぶちギレただけの話。
連載になればざまぁになるかもしれない。
親愛なる同級生諸君、君達は多分私の名前なんて興味もなく一生懸命に生きているだろう。
社会って厳しいって思いながら生きているだろう。
だが安心してくれ、君達多分めっちゃ楽だ、私より遥かに楽だと思う、あれだな、日々リア充爆発しろとか思ってた私に女神は微笑まなかったんだろうな。
左を見ればでかい蜘蛛、右を見ればでかいトロール。
RPGは好きだが誰がリアルに投げ込めなんざ言ったよ、というよりなんでこんな場所に捨てやがったあの両親。
いや、理由は分からんでもない。
馬鹿でかい屋敷、数多の使用人、アホみたいに顔の良い両親、アホみたいに顔の良い兄と姉、それと似ても似つかない私。
外面貼り付けて良い家族のふりをしてくれはしたが、私がいない所では一族の恥やらなんやら話の種にしてやがったのは知っている。
検査で私があのアホみたいに顔の良い両親からの子供だとは判明していたから尚更だ、一族の出来損ない、なり損ない、そう思って冷めた目をしていたこと、気付かない方がどうかしている。
両親が定めた婚約者は姉に恋をしていて、私を見る度に姉と比較して二人の時は暴言三昧である。
私はそれを笑顔で受け入れていた。
そうしていたら不気味がられて忌み子扱い、厄介払いとばかりに気絶させられてお前は一族に厄を運ぶから仕方なく始末することになったと告げられてモンスターが蔓延る渓谷に投げ捨てられた。
何が仕方なくだ、前夜に祝杯あげたくせに。
この如何にもなRPG世界には、貴族の家系で魔法などのスキルを取得できない子供は一族の繁栄を阻む忌み子というものがある。
現に私はスキルのひとつも扱えない、なるほど、ならば切り捨てるなら私だろうと納得出来た。
私はさぞアホみたいに見えたことだろう、何故気付かないふりをしていたかなんて理由は考えもしないだろう。
理由は簡単だ、馴れていた。
可愛く頭もいい姉と比較され続けた23年、将来を誓いあった恋人に「お前じゃなくてお姉さんが好きなんだ」とカミングアウトされ、しかもそのまま別れたらゴールインしやがってから2年。
ひねくれにひねくれて、笑顔が癖になってしまった私は馬鹿なことにたった一度でいい、正義の味方になりたいと思ってしまったのだ。
そんな自分勝手で動いた体、車を前に立ち竦んでいた子供は無事だっただろうか、そうでなければ報われやしない。
そうして死んだら同じ境遇アゲインである。
はっきり言って二番煎じお疲れ様でーすである。
現在、この体は14歳、はっきり言ってこんなモンスターだらけの森で生きていけるはずもない。
渓谷に投げ捨てられた時、木が僅かばかりのクッションになり、鬱蒼とした草むらに落ちたからダメージは軽減されはしたが、身体中が痛い、今こうして冷静に思い出せるのは走馬灯なのかもしれない。
そこまで考えて、前世から身につけてしまった怒りをおさえる枷が外れる音がした。
「…………ふっっざけんなあああぁあああァあああァ!!!!」
私が一体何をした。
いつでも姉をたててきた、認められない努力を一生懸命にしてきた、平凡なりに頑張ってきた、なのになんで家族にまで疎まれなければならない、したい習い事も姉が金がかかる習い事だからお前はだめだと言われて我慢した、恋人の為に平凡なりに身なりにはいつも気を付けてきた、なのに、いつも選ばれたのは容姿がよくて頭もいい、周りにいつも面倒を見てくれる誰かがいた姉だった、恋人は言った、姉は自分がいなきゃ駄目なんだと。
私だって寄りかかれる人がほしかった、年上で、目つきは悪いけれど優しく笑う人、愛していたのに、この人となら幸せになれる、そう思ったのに。
全て全て全て全て全て全て全て無駄だった。
流行りのメイクも頑張った、服も勉強した、きっと姉と二人でそんな無駄な努力を笑っていたに違いない。
悪く言いたくなどないのに、けれど出てきたのは醜い感情だけ。
結婚式には行かなかった、バージンロードを歩く二人を見て、将来を誓う二人を見て、罵倒しない自信がなかったから。
悲劇のヒロインぶって泣いてみても、今更どうしようもない。
だって私はヒロインじゃなかった。
舞台にすら上がれなかった、裏方だ。
もしくはヒロインとヒーローが結ばれる為の壁か。
そこまで考えて、やっと泣けた。
フラれた時にさえ怒りが先にきたのに、なんで今更泣けたのか。
そうか、ここには無様に捨てられた私の他にはモンスターしかいないからか、そこまで考えて、やっと気づく。
「……………あ………れ…………?」
手に持っていたトロールから奪った棍棒が血塗れだった。
いや、いつの間に奪った?思い返したら何度も吹き飛ばされながらもトロールと蜘蛛を殴り続けたことを思い出した。
周りは死体の山だ。
「あ、あ、そうか、私、こんなに我慢してたのか。」
言いたいことを飲みこみ続けた、やりたいことを出来ないまま、色んなことを我慢し続けた結果か。
我慢し続けた結果がこの惨状、なんとまぁ最悪なことか。
もはやどこが痛いか分からないほどには体が重いが、それよりも愉快で、爽快で、楽しかった。
何も気にせず、死にたくない、それだけの為に動いた。
誰の為でもなく自分の為に、それがとてつもなく楽しくて嬉しくて激痛も気にせず、本当に腹の底から、笑った。
こんなにも惨めで、こんなにも楽になりたいのに、私は何が何でも生きたいと思ったのか。
なんて矛盾だろう、最後に人助けをしたくて死んだ馬鹿な女は、どうやらどんなに惨めであろうが、生きたかったらしい。
そりゃそうだよな、死にたくなんてないよな。
そんなことも分からなくなるくらい、私は我慢してきたのか。
誰かの評価も、もう気にしない。
私は、私として生きるのだ。
そうだ、私は既に死んでるじゃないか。
前世も、今も、家族により精神を磨り潰されて死んでるじゃないか。
では、まずは挨拶から始めよう。
おやすみ、哀れで惨めな皐月 要、マリアーリャ・ベル。
おはよう、他の誰でもない、私。
そうだな、まずは貴様らが要らないと思った武術から、極めてみるとしようか。
忍耐力には自信がある。
次はそうだな、馬鹿と言われようがやってみせよう。
「女神とやらを蹴落としてやる。」
その日、後に冒険者組合に危険度SSSをつけられる「ネームレス」という女が、新たに生まれ落ちた。
力尽きたのと、投稿練習みたいな感じでここまで、お付き合いいただきありがとうございました!




