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トーライ家の優雅でない日常  作者: BB
プロローグ
3/5

とある執事の感涙

私は執事でございます

代々トーライの方々に仕える一族でございます

神に連なる方々に仕える事は私共の誉れでございました


しかし、ええい憎らしいバインデングの者達は父が仕えていた一族の皆様を呪いにて殲滅しようとしたのです

神に創造されし方々をまるでそこらの下級貴族のように呪い殺すなど下賎の所業

残ったのはお可哀相に、小さな双子の兄妹だけであったそうです。


お二人を救う為に王陛下は異世界への転送を決意なされました。その呪いは世界にかけられた物で、それしか呪いからお二人を逃す事が出来なかったからです。


父は私に当時の悔しさや何も出来なかった己の無力さを嘆いて涙を流していました


私達は長い長い間待ちました

80年間誰にも仕えず、雇われ執事として糊口をしのいできました。

長い間陰口を叩かれましたが私達は気にもなりませんでした。


仕えるべき主と離れ、お顔を拝見出来ない苦しみにくらべたら、そのような陰口や嫌がらせは風が吹くよりも私達の心を揺らがせません。


そして!とうとうトーライ一族の皆様が御帰還なされる時が来たのです!


ああ始めて拝見させて頂いた時、地に足を付き私達は感涙にむせび泣きました。再び見舞えることなく天に旅立った父の代わりに涙を流しました。


その美しさ、神々しい色彩は父から聞いた通りでした。しかも、嬉しい事にかつて父が御仕えしたお二人は結婚なされ、それぞれのお子様を御増やしになられていたのです!


何とめでたい事でしょう!

家系の存続すら危ぶまれていたのに、お二人は見事にトーライの血筋を守り伝統を受け継いでいたのです!


私は家長である兄達と感激し、直ぐさま画家を呼び寄せて御家族全員の肖像画を描かせました。


そして、私は幸運にもトーライ家長様の三番目のお子様であるユタカ様家族に御仕えすることになったのです。


まだ御仕えして三ヶ月ですが、やはり私の主は素晴らしい方々です。


高貴な身分であるのに私達なぞに礼を欠かした事もありません。


しかもお子様方も勤勉で礼儀正しく、我々に傲慢な態度をされた事なんて一度もございません。その控えめで他人に気を使う尊い態度、そこらの馬鹿貴族の愚物な愚息達に爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいです。


いや駄目です。愚息達には爪の垢ですら勿体ない、私が直々に説法してやりましょう。


先程から朝食を皆様食べていられますが、高貴な身分に関わらず食べているのは僅かな穀物と野菜のみです。生臭いものは塩だけで焼いた魚だけです。そのあまりの少なさに私は心配になりましたが皆様はそれで満足されているようです。


そうか!分かりました!妖精は夜露と花の蜜のみで生きると言います、恐らくトーライ一族の皆様はそれと同じ様に僅かな食物だけで過ごされるのですね!なんとした神秘。


その幸福に満ち溢れた食事風景はあまりにも神々しく、私の一族出身であるメイドは一人倒れてしまいました。


主の前で倒れるなど普段であれば手酷い説教をするのですが、あのような神々しい姿を見ていれば仕方ないでしょう。メイド長に休ませておくように言付けました。


あぁ…、しかしなんと素晴らしい。私は片眼鏡ごしに主であるユタカ様の神々しい御姿を見つめます。ユタカ様は私が分からない異世界の言語で奥方様と談笑されています。その様のなんと可愛いらしい!


お二人は私のフェアリーですぞ!

お子様方はエンジェルです!


一家を見守るように立つ一人の執事。白髪混じりの艶やかな髪を一つに纏め上品な口髭を蓄え、シワですら麗しい彼は、その形の良い鼻から垂れた鼻血を何気ない動作で拭い給仕を何食わぬ顔で続けていた。

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