完全番外・クリスマスだってのに
注:時系列に全く関係ありません
クリスマスと言えば、どんなイメージがあるだろうか。
雪の降る中、恋人とデート?
友達と夜遅くまで遊び歩く?
それとも家族と共にちょっと豪華な夕食を楽しむ?
どれもいい。
どれもとても魅力的だ。正に理想的なクリスマスの過ごし方だろう。
しかし、僕の場合はちょっと違う。
「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………クリスマスイブだってのに、なんだって僕学校にいるんでしょう」
「いーじゃないかどうせ予定なんて入ってないんだろう?」
「いやまぁそうですけど…」
僕らは今、箒を手に学校のグラウンドを罰掃除している。
何故こんな事になったのか。
「そもそも今回僕何も悪い事してないのに」
「はっはっは後輩クン君は連帯責任という言葉を知らないのかね!?」
「あんたの所為じゃねーか」
先輩の日頃の行いのおかげである。
「僕もう帰って良いですか…?」
「脱走兵は鬼の風紀委員に粛清されるよ」
「おかしいですね。捕虜って虐待しちゃいけないはずなのに。………誰かさんの所為で」
「わ、私はそんなに悪くないんだよ!全部あの風紀委員が悪いんだ!」
「あっ、せ、せんぱ……」
「ほう…?俺らが全部悪いのか」
……大変間の悪い事に、『風紀委員』の腕章を着けた二人の生徒達がやって来た様だ。
年上らしい男子生徒と、僕と同じ学年の女の子だ。
確か名前は…常磐美衣とかいったかな?
「あ、え?」
どうやら先輩は風紀委員の二人に気づかなかった様だ。顔にダラダラと大量の汗を流している。
「成程成程。お前らは自分達が悪い事を何もしてないと、そう言いたい訳だな?」
「僕は言いたい」
後ろで僕はそう主張したのだが、無かったことにされた。
「……わ、私は」
「なんだ?」
「暴力には、屈しない………っ!」
「よーしわかった。校内掃除も追加な」
「ごめんなさい私が悪かったですーーー!」
ズザザーッ!と土のグラウンドにも関わらずスライディング土下座をする先輩。
…いや、グラウンドだからか?
「はっはっはわかればいいんだよわかれば。ん?」
「平に、平にー!」
「たいちょ…大茂先輩が年上の女の子に土下座させて悦に入ってるっす…」
「撃ち抜くぞこの野郎」
常磐さんが(どうやら先輩らしい)大茂という人から遠ざかる様に身を引く。
「………ううっ、そんな態度だから君は……」
「あ?そんな態度でいいのか?」
「何も言ってません!」
「おら働けえええ!」
「いえす、さー!」
わいのわいのと騒ぐ先輩方を尻目に、僕は常磐さんに話し掛ける。
「お互い、アレがアレでアレな先輩を持つと大変だね」
「全くっすね」
と、常磐さんが先輩達の方へ顔を向ける。
「…でも、嫌じゃないっすけどね」
「……そうかなぁ?」
僕は手にした箒を見ながら賛同出来ない意を表す。
僕、先輩の所為で今絶賛罰掃除中なんだけど。
暫く常磐さんと二人でぎゃあぎゃあやり合ってる先輩達を眺めていると、ふと鼻先に冷たい感覚が。
「……………?」
「あー、とうとう降ってきたっすね、雪」
ああ、雪か。
「そっか、もうクリスマスだもんね」
「……クリスマスだってのに、何してんすかね、うちら」
「嫌じゃなかったんじゃないの?」
「場合によりけりっす」
ぶすっと不満顔で遠目に大茂先輩を睨みつける常磐さんが、何かに気付いた様にそちらへ焦点を合わせる。
どうやら先輩同士のじゃれ合いが発展して追いかけっこになったらしく、うちの先輩がダッシュでこっちに向かってくる。
「後輩クン!ボサッと突っ立ってないでとっとと終わらせるよ!鬼に加えて雪まで降ってきたんじゃ、そろそろ本格的に死んじゃう!!」
「誰が鬼だあああああ!!」
「いやあああああああ!!」
僕と常磐さんはお互い顔を見合わせると、変わらない先輩達に肩をすくめる。
僕は改めて、鬼の風紀委員から逃げながらも器用に掃除を続ける先輩をみて、
「メリークリスマス、先輩」
一人そう呟いたのだった。
「…………………恥ずかしくないっすかね、そんな台詞吐いて」
あっ、一人じゃなかった。
メリークリスマス




