第99話
「ポイント制は確定として、後は色の選別だな。7色くらいあれば問題ないか? ん? どうかしたのか? ゲンナディー」
「もう、考え事は終了っすか? そろそろステンカ様の話を聞いてあげて欲しいっす」
何度か頷きながら納得した表情を浮かべていた健太に、呆れた表情のゲンナディーが話しかける。健太が周りを見ると、ステンカはコーヒーを用意しており、ミナヅキはチョコレートを口いっぱいに頬張って満足げな表情を浮かべていた。
そして、気が付けば自分の周りには人が集まっており、何かを期待しているのか目をキラキラとさせていた。戸惑った健太が助けを求めるようにゲンナディーに視線を向ける。健太の戸惑いを理解したゲンナディーは集まっている一同に向けて話し始めた。
「はーい! ケンタ様にお土産を期待している人達ー。ケンタ様はステンカ様や、エルミ様にミナヅキちゃんくらいに仲良くなった人にしか渡さないっすよー」
「えー。そうなの?」
「なんだー。集まったらケンタ様からチョコレートがもらえると思ったのに」
「俺はパンが欲しかった」
「それは、発売されたら買おうぜ。俺はミナヅキちゃんからバッチをもらえると聞いたんだが?」
「それ、どこ情報だよ? 俺も欲しいぞ」
ゲンナディーの説明に一同が残念そうに話し始める。人が集まっている理由が分かった健太は、苦笑しながら小声で確認してきた。
「特に、なにも渡さなくていいんだよな?」
「むしろ、渡しちゃダメっす。次に、こっちに来た時に収拾がつかなくなるっす。おーい、ここに居てもなにももらえないっすよー。ミナヅキちゃんのバッチは、近日中に発表予定っす」
ゲンナディーが苦笑しながら健太の質問に答え、集まっている者達に解散を伝える。なにももらえないと分かった一同は、特に残念そうな顔を見せずに去っていった。
「『何かもらえたら幸運だ』くらいの感じで集まったようですな」
「良かったよ。次回にこっちに来た時に手土産がいるかと思ったからな。それでコーヒーの在庫についてだが」
「ええ。思った以上に好評ですな。在庫がかなり減っており、このままでは、しばらくすると販売が出来なくなるかと」
ステンカの報告に、好評な事を理解した健太が嬉しそうにアイテムボックスからペットボトルコーヒーをケース単位で取り出す。次々と積み上げられていく箱を唖然として眺めていた一同だったが、我に返ると倉庫に運び出した。
「これくらいあれば大丈夫だと思うが?」
「ええ。これだけあれば2か月は持つかと。それにしてもケンタ様のアイテムボックスは凄いですな。一体どれくらいの量が入るのでしょう?」
アイテムボックスを使いこなしている健太に、古文書に書かれていた伝説の勇者を重ね合わせたステンカが呆然としながら呟くと、健太も困ったような表情になる。
「アイテムボックスは俺も検証したいんだがな、こっちと向こうで出し入れできる場所が分かれているんだ。でも一部はどちらからでも出し入れできるようになっていて、俺も良く分からないのが正直なところだ。それと、アイテムボックスのレベルが上がると色々と仕様も変わるから、なおさら分からなくなってくる」
「そ、そうなのですね。ミナヅキちゃんはアイテムボックスの事をなにか知ってるのかな?」
『分からないー。いっぱい入るのだったら、チョコレートをいっぱい欲しいー』
ステンカの問い掛けに首を小さく傾げながらミナヅキが答える。一同が苦笑していると、なにかを思い出したのかミナヅキが手を打った。
『そうだー。ミズキ様なら知っているかもー』
「お。そうなのか? 今度、お邪魔する時に話しでも聞こうか。今のところは、そこまで困っていないからな。ところで貴族向けのコーヒーはどのような感じで?」
健太は軽い感じでアイテムボックスの話しを終わらせると、ステンカに確認する。ステンカはニヤリと笑うと、健太に貰ったノートを手渡す。
「こんな感じですよ」
「すいません。まだ、読めなくて……」
「ああ。そうでしたな」
申し訳なさそうにしている健太に、ステンカが慌ててノートを返して貰うと読み上げる。
「ギレンセン子爵、オークレール男爵、ゴットシャル騎士爵、セベッセン子爵が近場で予約が入っております。その他にはメラー伯爵、ヴェッカー伯爵など大物貴族からも連絡が来ておりますね。非公式ですが、王家からも要望が出ております」
「凄いので?」
名前を言われても誰かが分からず、ましてや力関係も知らない健太からすると首を傾げるしかなかったが、一緒に聞いていたゲンナディーが驚きの顔をする。
「えー!? ヴェッカー伯爵っすか! 超大物じゃないっすか! さすがはケンタ様っす!」
「ゲンナディーが驚くくらいだから凄いんだろうが、やっぱり分からん」
「物凄いっすよ! もう、こうなんかドーンって感じで!」
「いや、さっぱり分からん。ステンカ殿、説明をお願いします」
ゲンナディーが興奮しながら説明をする。健太はなんとか理解しようと試みるが、最後は諦めたかのように苦笑すると、ステンカから説明を受けるのだった。




